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偏音篇-ヘンオンヘン-
安物買いの銭失い

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安物買いの銭失い



 金がない。
 人類の八割くらいは一度は頭を抱えるであろう問題である。音楽に関わるものはなおさらである。音楽は時間と金を奪っていく悪魔である。
 金無しをどう解決するか。いくつかある解決法の中の一つの解に、充てる金額を小さくする、つまり出来るだけ安いものを買おうという選択がある。しかし、果たしてそれが正解なのか。


 良い物は当然高い。が、安い物が悪いという事は絶対ではない。家にあるアンプは5000円もしなかったが割かし良い音をするし、ギターも安物をピックアップだけ付け変えて使っているが実用に耐えうる。凝る所は凝る、他はトコトン手を抜くのが自分のスタンスだ。この間買った1200円のマイクも(想像より)悪くなかった。

 勿論失敗したことも多々ある。シールドは超安物を使っていた。自分はチープな見た目が大好物なので、色合いもかなりケバケバしい物を使っていた。エフェクターにも繋ぐのでトータルすると五本も使っている。これが完全なる失敗だった。
 何もエフェクターを入れていないクリーンな状態で、既に音が割れる。ノイズは乗るし接触不良は起こる。散々である。安いから仕方が無い、というレベルを優に超えていた。もちろん直ぐに買い替えた。
 五本で5000円程度しかかけていなかったシールドに、改めて諭吉様を出動させる事態になってしまったのだ。まさに、安物買いの銭失い、というやつである。様々な問題は買い替える事で殆ど解決した


 確かに安物買いは銭失いではあるが、それが果たして本当に損かどうか、ということが問題である。
 実際音が割れてみるまでシールドは音にさほど関係がないと信じていた。中身の線の材質が多少変わったからと言って音に違いが出るものか、と高を括っていたのだ。それが分かっただけでもとても大きなことである。これから先質問された時にも自信を持って、安すぎるものはやめた方がいい、と言える様になっただけでも、失敗しただけの価値はある。
 他にも安物を買って失敗した事はいくつもあるが、それぞれ何かしらの教訓になっている。高く良い物を買っても、結局、宝の持ち腐れとなるとなる事もあるし、思いがけず良い物を得る事もある。それを知るための無駄遣いなのだ。
 最短ルートを通りたい気持ちも分かるが、迷走する事こそが一番成長する道であると私は信じている。



 安物買いは結局遠回りになる。が、遠回りも無駄ではない。
 はたして銭失いは損だろうか?
 

       

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