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目指せ!バッグズの村

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「アルグス」
「うーん」
「アルグスってば!!」
 ドッガァ!!
 俺は誰かに突き落とされて、ベッドから転がり落ちた。
 うーん。
 何があったんだろう。
 寝ぼけ眼であたりを探る。
「きゃっ! どこさわってんのよ!」
 べっし~~~~~~ん・・・・
 俺は殴られてしまった。
「あれ、ミーナ。なにしてんだよ」
「あんたが起きないから起こしにきてあげたんでしょーが!」
「え? ここは? 俺たちは森にいたんじゃ・・・」
「昨日、宿まで辿り着いたでしょ。忘れたの?」
「そうだったかな・・・」
 俺はとりあえず起きて、テーブルに座った。そこにはもう、サンドイッチとか、コーヒーとか、置いてある。
 ひとまず、俺たちはそれをもぐもぐと食べた。
 明るい日差しとあいまって、とってもいい天気だ。
「うーん、今日は絶好のお昼寝日和だなあ」
「冒険日和でしょ!」
 俺はミーナに怒られた。
「あたしたちは魔王エルドランドを倒さなくっちゃいけないんだから!」
「え~~~~・・・」
「なによ。なんか文句あんの?」
「だって、そんな、ねえ? すぐにやらなきゃいけないことでもないし・・・」
「すぐやんないと駄目なのよ!!」
 俺はミーナにべっちんべっちん叩かれた。
「いてーなー」
「あんたがフヌケてっからだめなのよ」
「だってさあ」
「あんたも勇者みたいなもんなんだから、しっかりしなきゃ駄目よ」
「そんなこと言われてもなー」
 俺はウトウトしてきてしまった。
「うう、いけね。眠りそう」
「また? あんたどんだけ寝るのよ」
「ふっふっふ、俺は眠りのアルグス。ぐー」
「こらーっ! 寝るなー!」
「あうあう」
 ひと悶着あった後、ようやく俺たちは落ち着いた。
 ミーナは腕を組んでため息。
「まったくもう。これはお仕置きが必要のようね」
「お仕置き?」
「そ。モンスター退治にいくわよ!!!!」
「えー」
「そこで強くなって、魔王を倒すの。それがあたしたちの使命なんだから」
「めんどくさい・・・」
「いいからいくの!」
 俺はミーナに腕を引っ張られて、宿を出た。
 外はぽかぽか陽気で、とても魔物がどうとか、そんな雰囲気じゃない。
 やだなあ・・・・・
「ここから北にバッグズの村があるわ。そこで魔物が大量出現してるみたい」
「そんなの国境警備隊に任せておけばいいじゃん」
「駄目よ。奴らに手柄を横取りさせていいの?」
「横取りとかそういう話じゃないっしょ・・・・」
「いいから行くの! あんたは私のものなんだから」
「そんなわけねーし・・・」
 言ってもどーせミーナは聞きゃしないんだ。
 俺たちはバッグズの村へ旅立った・・・・



 バッグズの村は平凡な村だった。山羊とかいる。
「わ~~~~~~かわい~~~~~~」
 ミーナが駆け寄って行って山羊を撫でている。
「こら、怒られるぞ」
「なんでよ」
「勝手にさわっちゃいけないんだ」
「そんな固くないでしょ」
「うーん・・・」
「それよりあんた、まだ指が痛むの?」
「ああ、剣を振りすぎたらしい」
「駄目ねえ」
 ミーナは俺の指を撫でてくれた。
「商売道具なんだから、大事にしないと」
「うん・・・・」
「どうしたの?」
「なんでもない」
 俺は芝生に腰をおろして、あくびをした。
「平和だなあ。本当にここに魔物なんているのか?」
「いるはずなんだけど・・・」
「やや!あなたがたは!」
 俺たちは村長っぽい人に声をかけられた。
「へい村長。お金くれ」
「なんてこと言ってんの!!!!」
 ミーナに怒られてしまった。
「ごめんなさい、村長。この人、少し疲れてるんです」
「疲れてマース」
「そうなのか……かわいそうに」
 同情されてしまった。
「ですが、村の魔物は倒していただかないと」
「そうなんですよねえ」
「アルグス、やるわよ。あたしたちは強くなるの。強くなって魔王を倒すのよ!」
「そんなことしても意味あるのかなあ・・・・」
 俺は村長から詳しい話を聞いた。
 その間にも、指は痛み続けた。
「うう」
「あんたそれほんとに大丈夫?」
「駄目かも・・・・」
「ふむ。それなら、この村の医者に診てもらったほうがいいでしょう」
「いいんですか?」
「いいですとも。丘の上のデイルという女です」
「わかりました、いってみます」
 俺たちはデイルを訪ねることにした。
 トントン
 ドアノック。
「あのー、すいません」
「ん? どうしたの?」
 中から白衣を着た金髪の女性が現れる。
「指を怪我しちゃったんです」
 ミーナが代わりに言ってくれる。俺はウンウンと頷いた。
「なんとかしてあげてくれませんか?」
「見せて」
 デイルは俺の指をしげしげ見た。
 さわられてる・・・・
「骨に異常はないみたいね」
「そうですか」
「麻痺毒にやられたのかしら」
「そうかも」
「解毒薬を処方しておくわ。ところであなたたち、恋人?」
「な、なにいってんですか!!!!」
 ミーナは真っ赤になって否定した。
 そんなに否定しなくてもいいのに。
「こいつはただの幼馴染で、パートナーでっ・・・・」
「ふうん。ま、いいけど」
 デイルは薬箱をパタンと閉じた。
「でも、遠慮しないで、幸せになれるうちに幸せになったほうがいいわよ。幸せになれなくなってからじゃ遅いから・・・」
「デイルさん・・・・」
「ごめんね。私の兄も、あなたみたいに冒険者だったんだけど、もう帰ってこないの。だからね、覚えておいて。どんなに嫌な気分になっても、幸せになれなくなるよりましだって」
「はい・・・」
「指の怪我、よくなるといいね」
「ありがとう」
 俺たちはデイルさんのところを後にした。
「いい人だったね」
「そうだな・・・・」
「ねえ、アルグス……」
「ん?」
「……んーん! なんでもない!」
 ミーナは明るく笑った。


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