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「Enter Sandman(Live in Moscow 1991)」METALLICA

動画はこちら
https://youtu.be/_W7wqQwa-TU

※今回の内容は娘の小学校の授業参観を元ネタにしていますが、しばらく前の事なので記憶が曖昧な部分もあり、百パーセント事実ではない箇所もあります。ご了承下さい。また、物語の構成上やむにやまれぬ事情により、小学校の実名が出ておりますが、個人特定などなされぬよう、お願い致します。
 

 娘の通うマッドカプセルマーケッツ小学校の授業参観に行ってきた。今回は音楽の授業という事もあり、教室の壁には、それぞれの子供達が思う「三大ギタリスト」の名前を書いた紙が貼られていた。確かに誰と誰と誰が「三大ギタリスト」であるかは、人によって違うのだ。ジミー・ペイジ、エリック・クラプトン、ジェフ・ベックなんて言っても今の小学生には通用しない。その親の世代にだってそうだ。
 ある生徒はこう書いていた。
「ランディ・ローズ」
「ジェイク・E・リー」
「ザック・ワイルド」
 オジー・オズボーンのファンであろう。
 別の子はこうだ。
「ディープ・パープル時代のリッチー・ブラックモア」
「レインボー時代のリッチー・ブラックモア」
「リッチー・ブラックモアズ・レインボー時代のリッチー・ブラックモア」
 彼にとってギタリストはリッチー・ブラックモア以外いないのだろう。ちなみにうちの娘のココにとっての三大ギタリストは
「パパ」
「ママ」
「健ちゃん(弟)」
であった。

「それでは皆さん教科書を開いて下さい」BUCK-TICKの今井寿似の先生(女性)の一声で授業が始まった。
「前回の授業で何を習ったか言える人はいますか?」モヒカン姿の男子生徒が手を挙げる。
「スラッシュ・メタル四天王の話です! メタリカ! メガデス! アンスラックス! スレイヤー!」
「よく出来ました。今日は保護者の方も一緒に、今名前の出たメタリカのライブ映像を見ていただき、感想を言い合っていこうと思います」
 教室のカーテンが引かれ、電気が消える。モニタに写し出されたのは、1991年当時まだソビエト連邦共和国と呼ばれていた国(現ロシア)で行われた狂熱の記録だった。

https://youtu.be/_W7wqQwa-TU

 曲が終わり、カーテンが開かれる。ソビエト連邦の鉄のカーテンが開かれたのはこのライブの3か月後の事である。
「では、それぞれ思った事を発表して下さい」
 はい、はい、と勢いよく皆の手が上がる。いきなり娘のココに当てられた。
「見てる人のすぐ上をヘリコプターが飛んでいて、危ないと思いました」
「そうですね。ステージのすぐ上を舐めるようにヘリが飛んでましたね。非常に危ないと思います。当時はよくありました、なんて事はなく、今でも昔でも異様な事です。では他に」
「同じ服を来ていっぱいいた人は何ですか?」   
 KORNのTシャツを来た子が聞く。
「ソ連の軍隊です。モンスターオブロックというのがこのイベントの名称ですが、規模が大きくなりすぎた為に通常の警備態勢ではなく、軍隊を動員する非常事態となりました。入場無料だったので正確な観客数は不明ですが、200万人以上というのが定説になっています」
「でも先生、軍隊の人で暴れてる人もいました」
「そういう人もいます。では他に」
「ジェイムズ・ヘットフィールドの髪が長くて、今と全然違うと思いました」全身タトゥー(シール)を入れた生徒の発言である。
「当時、メタルは長髪でないと演奏出来ませんでした。癖毛のひどい人でもいやいや髪を伸ばしていました。長髪が出来ない人は逆にスキンヘッドしか許されませんでした。今ではそんな事はありません。それでは次、保護者の方でも何かございましたらどうぞ」
 うちの息子の健三郎(2歳)が手を挙げる。先生に当てられるより先に歌い出す。
「ドンドンタン! ドンドンタン! ウィー、ウィー、ウィー、ウィー、ヤッコ! シギン!」
「それはクイーンの曲ですよ、健三郎君。あと、ヤッコ! ではなく、『ロックユー!』」です。
「家に帰ってから練習させておきます」私は弁解する。
「では次に合奏をしますので皆さん準備をして下さい」
 それぞれが担当楽器を手に取り持ち場に散らばる。一年生終盤となれば、段取りも良くなってくるようだ。曲目は当然今見た「Enter Sandman」である。ドラムは一人ではなく、複数人で分担する。娘のココは小太鼓隊の一人であった。
「歌いながら演奏出来る人は歌って下さいね」
 そうして演奏が始まった。まだまだ拙い演奏で、リズムの走る子、途中で暴れてベースアンプからシールドが引っこ抜けた子、エレキギターの弦を切ってしまう子、歌詞が全て適当な子などいたが、そこには一瞬、1991年のモスクワが出現したかに思えた。
「ではまだ時間があるのでもう一曲」
 先生はそういうと、指揮棒をエレキギターに持ち代えて、メタリカ「Creeping Death」のイントロを弾き始めた。

(了)
 
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