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『末代』
 呼び掛けによってどっぷりと深い泥から引き上げられた。それでもまだ、目が開けられない。全身にはびこっていた痛みはなく、気怠さもない。肉体を取り巻く全てから解放されている現状は、まるで死んでいるかのよう――
『そんなわけがあるまいよ。お前は、わたしの代理なのだから、そう簡単に死ねるもんかえ』
 乾いた砂の冷たい声に、鱗道はようやく目を開けた。闇夜を押し固めたような黒。そこに金色の皿がぽっかりと浮かんでいた。皿の中央には漆黒が垂らされていて、鱗道が目を開けたことに満足しているように弓形に歪む。ああ、これは、
『簡単に死ねないのだから、少しは自慈心を持てと度々言うているのに。だからお前は苦労ばかりするのだよ、末代』
 蛇神の目だ。暗闇の中で狭まった巣穴から、蛇神が目だけを覗かせている。街に向かって巣穴が開いたことで、鱗道と通じている巣穴は蛇神の眼球が覗ける程度になってしまったらしい。事は、順調に進んでいるのだ。
 蛇神の目が見ているということは、鱗道自身は眠っている筈だ。山中で、荒神と成り果てた鹿と対峙し――こごめに助けられた。シロを診ると言うこごめの言葉は聞いた覚えがあるが、どうもはっきりとしない。それから――どうなったのか。クロの羽音が聞こえた気がして、それから。
『末代。目を覚ませば状況など、望まぬとも知れること』
 だが、と鱗道は緩慢に思い出そうと考える。体を取り巻く苦痛は取り払われているというのに、思考が酷く鈍い。今まで蛇神の夢の中で、このように感じたことは殆どなかったはずだ。例外として真っ先に思い当たるのは――最初に〝鯨〟と対面して眠れなくなった時くらいである。体は言うことを聞かなくとも思考は現実よりもマシな程度には回りやすいのが蛇神の夢であるとというのに。
『精神的な疲弊が関係しているのだろうさ。〝鯨〟の時も、お前はあてられていたようだからね。此度も随分とまぁ、色々な物事が積み重なっている。まさか、荒神がこんな折に近付いて来ようとは。悪運が重なるのは日頃の行いなどというが、当てにならないものよな。お前は、代理として仕事を全うしてくれているのだから』
 鱗道の目の前で、蛇神の瞳孔が目まぐるしく形を変える。鱗道の思考を自らに注視させるためだろう。眼前で見る金色の眼差しは細かに動く瞳孔の所為か眼球の奥で炎がくすぶっているような、一時として同じ輝きにならない暖かく柔らかいものである。暖炉や薪の炎を見ている時のような心地よさがあった。
『依り代を上から撒かせたのは良い判断だったよ。わたしとの巣穴がこんなに狭くなってしまったが、お前が依り代を吸い込んだが故に、お前の口に降りられた。あの奇妙な鴉は実によい働きをしたものよ。わたしが直接、あの鴉に褒美をくれてやりたいくらいさ』
 最初に依り代を吸い込んだのは偶然だった。ただ、鹿に文句を言ってやりたかっただけである。だが、確かにそれで、蛇神が発言権を欲していると感じ取った。そこからは意識的に呼吸を深めて、譲れるものを譲ったのである。あの時は、口。
 ――明日、夜、海辺。思考を用いて、降ろした口から蛇神が発した言葉を鱗道は繰り返す。
『そう。明日の夜、〝鯨〟が来る。ああ、明日の夜というのはね、これからお前が目覚めたその日の夜中のことさ』
 そうか、と鱗道は頷いた。ようやく思考が回り始める。〝鯨〟の接近に合わせて鹿と約束したことの意味を、鱗道もまた理解した。蛇神は〝鯨〟も鹿も一遍に片付けようというのだろう。ただ、あの約束通りに鹿が海まで下りてくることが前提であるが。
『来るとも』
 鱗道の懸念を読み取った蛇神は、笑みを交えて言い切った。弓形にしなる瞳孔が、金色の皿の上でぐるりと回り、
『あの坊やはきっちり穢れに染まっている。ものの見事な成れの果てさ。憐れだよ。実に憐れだ。力を振るう心地よさは理解してやれるが、あれはもう完全に歪んでしまっている』
 一本の糸ほどに細まってしまえば、瞳孔の揺らめきもなく蛇神の目は冷え冷えとした満月のようである。鹿を語る蛇神の声は荒神の存在全てを拒絶しているほど冷淡であるが、同時に深い同情を寄せているかのようでもある。荒神に成って果てるという言葉を用いるだけあって破壊と死滅の衝動である穢れや、衝動を現実のものにする力である瘴気に本来の意思を腐らされ浸食されていることに対しては同情の余地があるのだろう。
 ――こごめを呼んだのはアンタなのか。
 鱗道の問いに、蛇神の瞳孔が真円を描いた。それから金色の目が大きく揺れ動く。巣穴の向こうで蛇神が体をくねらせて笑っているらしい。
『呼んだというのは正確じゃないね。なぁに、犬っころの一件から、やれ恩を返させてくれ、何かさせてくれ、人の子の命は短いのだから早く早くと口やかましく責っ付かれていたのだよ。故に此度の〝鯨〟について話してみたのさ。そうしたら、なかなか強力な分身を寄越したようだ。私がヘビに取り憑いた時とは違う、こごめの一部分だと言っても申し分ないような分身よ。お陰で助かったが、随分と奮発してくれたものだねぇ』
 ああ、そうか、そういうことか――と鱗道は深く息を吐いた。実際に呼吸しているわけではない。だが、そう言った動作を意識する。荒神が発する攻撃的で排他的な、悪意と敵意に満ちた熱気とは違う、蛇神の夢の空気を腹の中に収めていくように。無関心にすら感じるほど怜悧な、しかし遙か高みにあろうと深い巣にあろうと己が領地を見守っている一柱の、清く気高い冷静さを体の中に染み込ませたかった。
 ――なら、遠慮なく、こごめの助力は受けてもいいんだな。
『構わぬとも。お前の好きにおし。お前が命を捨てない限り、無謀に走らぬ限りは一向に構わぬよ。万が一、こごめが対価を要求したなら、それがお前に支払えぬものならわたしが肩代わりをしてやろう。お前は、わたしの代理なのだからね』
 からり、ころり、と蛇神の声は愉快げに笑う。ひとしきり笑い終えた蛇神は、
『……ただ、そうさねぇ――』
 狭い巣穴の向こうで体をくねらせ始めたようだ。金色の目が消え、絹のような鱗がぞろぞろと流れ行き、
『あの坊やに身の程を思い知らせる役は、わたしが直接やりたかったよ。だが、それも譲ろう。なぁ、末代。お前という男は、末代というだけあって――本当に、酷く、〝わたし〟という存在に近しいものになってしまったものよな』
 二股に分かれた赤い舌と細く長く鋭い牙が巣穴の向こうに覗く。そして、蛇神が口を閉ざすに合わせ、夢は闇夜一色から瞼裏の黒へと変じた。


 晩冬の、あるいは初春のにおいにつられて目を開ける。見慣れた居間の天井に、見慣れない枝が一本割り込んでいた。ガラスのコップに挿された枝には、黄色く鮮やかな花が幾つか綻び付いている。甘いにおいの源はこの花のようだ。花のにおいに覚えはあるが、色や形は見た記憶がないな――と、考えながら体を起こした。畳で寝ていたせいで背中や肩、腰までもが軋んで痛みを訴える。いや、それだけではない。腕も足も怠さと痛みの雁字搦めで、まるで己のものではないかのようだ。
『鱗道』
 目覚めには最適な硬質で静かな声色を聞きながらも、鱗道の意識はまだ霧がかっている。そんな中でも、手は何かを探そうとしていた。何か、を。いや、今、探さなければならないのは一つだけである。
「……シロは」
 少し、クロの溜め息を聞いた気がした。クロの羽音よりも先に、
「もうちょい左だ。寝言でも呼びつけるんで、並べといてやっといたぜ」
 快活な声が苦笑いを交えて聞こえてくる。鱗道は声の主を探すよりも言葉に従って左側をまさぐった。言葉から少し遅れて飛んできたクロが、鱗道のコートの袖を足で掴んで誘導する。室内灯は点いていないが、見慣れない青白い光が部屋を照らしていた。
 クロに誘導された先には、シロが横たわっている。白い被毛は揺らめいても薄ぼんやりと輝いてもいない。霊犬であり呼吸を必要としていないはずのシロだが生前の思い込みでしている呼吸の動作で、胸部はゆっくりと上下していた。触れる場所によって体温が違って普段通り冷たいところもあれば、急に湯の中に突っ込んだかのように熱いところもある。熱のある場所をまさぐれば黒いシミが――高濃度の瘴気が湧いている場所であった。ねっとりと湧き続ける瘴気はシロの体から垂れ落ちる前に消えている。ただ絶えず湧き続けているようで、シロの体はそこかしこに黒いシミが出来ていた。
 シロの目は閉ざされているが、口は半開きのままだ。神社の境内で見た時のように、口から高濃度の瘴気が流れ出しているようなことはなさそうだが、口吻には苦しげに痛々しげに強く皺が寄る。撫でてみたところでシロの頭は不自然なほど生暖かく、シロに和らぐような気配はない。ただ、鼻先は何かを探し求めているようだった。頭から少し離れたところに鱗道の頭上に挿してあったものと同じ、黄色い花を付けた枝がある。シロが頭を動かした拍子に離れてしまったのかも知れない。鱗道が枝をシロの鼻先に寄せてやると、深くにおいを吸い込むような仕草を見せて、口吻の皺が少しだけ和らいだ。
 ――生きている。霊犬であるシロにその言葉は正しくないとクロは言うだろうが、鱗道の基準ならばそれ以上の言葉はない。腹に溜まっていた息を吐くと、途端に体が重くなった気がした。クロが鱗道の袖から離れたにも関わらずである。
「クロ、お前も、無事か」
 鱗道はのっそりと顔を上げて、ちゃぶ台に着地したクロを見た。クロは返事をせず、じっと鱗道を見ていた。その嘴が上がり、鱗道も誘導されるように見た先では、
「よっしゃ。グレイも起きたんだ。俺ぁ帰るぞ」
 猪狩が欠伸がてらにパソコンデスクから立ち上がるところだった。それを見て、この青白い光がパソコンディスプレイのものであることに気が付く。猪狩の姿は逆光で、表情ははっきりと見えない。背もたれにかけていた自身のブルゾンを羽織った猪狩を引き留めようとしたのは、意外なことにクロであった。ちゃぶ台から飛び立つと猪狩の顔の側で滞空し、
『待ってください、晃』
 声が聞こえないことを忘れていたかのように言葉を発した後、嘴を二度鳴らす。
「なんだよ、顔の前を飛ぶんじゃねぇよ。危なっかしいだろうが」
 そんなクロをまるで虫でも払うような手付きであしらいながら、猪狩はのしのしと勝手口へ歩んでいく。『もう』だの『ああ』だのと上がる声は、不自由なコミュニケーションに対する嘆きと苛立ちから零れているものらしい。クロは猪狩のブルゾンを足で引っ掻いたり、耳元で嘴を鳴らしたりとしつこく引き下がり続けている。
「あのなァ、さっきも話しただろうが。お前等は運んでやったし、お前の話は聞いてやった」
 それでも、猪狩はクロにまったく構わない。勝手口に座り込んで、頑丈そうな靴の紐を編み上げながら、
「グレイは俺に助けを求めちゃいねぇ。なら、俺は手を貸さねぇ。逆もしかりだ。そういうもんなんだよ」
 猪狩の横に足を着けたクロは、嘴を三度鳴らした。一度は「イエス」、二度は「ノー」、三度はそれ以外の返答で使われる合図だ。一度や二度と違って決まった返答がない合図だが、今回は恐らく「理解出来ない」か「納得出来ない」のどちらかだろう。
「クロ、いいんだ。済まなかったな、猪狩」
 クロを呼びつけながら自然と出た言葉に、鱗道は首を傾いだ。すんなりと礼を言ったが、何か礼を言うようなことがあっただろうか。そもそも、何故ここに猪狩がいるのかも分からない。疲労と起き抜けで思考は未だに霧の中である。クロは一度鱗道を振り返ったが、猪狩の側を離れなかった。が、もうブルゾンの端を足で掴んだり嘴で突いたりなどもせず、引き留めるのを断念したようだ。
「どうってことねぇよ、と言っただろ。まぁ、そのツラだとあんまり覚えてねぇか。詳しくはクロに聞けよ。ああ、それから、酷ぇ格好のままだから風呂に入れよな。あと、いい加減にキーボードは買い換えてやれ。分かんねぇなら連絡しろ。持ってきてやるから」
 つらつらと止めどなく淀みなく、語り終えると猪狩は肩越しに振り返った。勝手口に灯りはなく、猪狩の表情は殆ど真っ暗だ。だが、声色からして笑っているのだろう。正面を向いた後に立ち上がった大柄な影はもう振り返ることはなく、
「麗子に深夜外出の説明して、説教食らった後はたぶん寝てるぜ。今日は休みだからよ」
 と、言うだけである。扉に手をかけているが、開ける気配はない。鱗道の返事を待っているのだろう。
「俺のせいだろ……必要なら、俺も謝りに行く。後日だが……ああ、それと、今夜は家から出るな」
 鱗道の言葉を受けて、猪狩がひらりと手を振った。振られた手はそのまま室内灯のスイッチに伸びて、古い電灯が点ききる前に勝手口を開けている。思いの外眩しいと感じる光に鱗道の目が慣れる前に、猪狩は家を出ていた。しばらくしてからエンジン音が聞こえだし、離れていく。ぼうっとしていた鱗道に、
『まったく理解出来ません』
 クロの、いつも以上に硬質な声が届けられた。大きな羽音はわざと立てられたものだろう。クロはちゃぶ台の上に着地すると、じっと鱗道を見つめてきた。
「……何がだ?」
『何もかもが、です。貴方を放って帰るアキ……猪狩晃も、彼を引き留めない貴方も。猪狩晃の手も借りるべきではありませんか』
 ああ、と鱗道は呻くように言った。痛む体をおしてなんとか座り直すと、左手をシロの体に添えながら、
「アイツの手は借りられんだろ。お前よりも〝彼方の世界〟のことが分からんし……本当に、アイツに出来ることは何もないんだ。ただ、アイツが危ない目に遭うだけになる」
 クロからの返事はすぐにされなかった。鱗道の言葉に息を飲むかのような間があってからようやく、
『貴方が助けを求めない理由だと理解はしました。しかし』
「アイツは俺のことをよく知ってる。俺は、自分が出来ることなんてたかが知れてるって分かってるからな。手段は選ばんし、借りれる手は借りる。その俺が真っ先に手を借りるのは……今だとシロとクロだが、次はアイツだ。そんな俺が声かけないってことは、アイツには出来ないことだからだってのも承知だ」
 それでも――急な変化があるかもしれないと、猪狩は鱗道の返事を待ってから扉を開けたのだ。それに対して、鱗道はやはり助けを求めなかった。それで、二人の間では完全に物事は成立し、完結している。
「変に世話を焼かないのは……俺がきっちりやり遂げると、信じてくれてるんだろう」
 若干、希望混ざりの憶測だ。ただ、大きく外れてはいないだろう。少なくとも、鱗道が似たような状況の猪狩を見掛けたなら、同じようにする筈だ。猪狩は自身で片を付けるのだろうと思って、その場では手を出さずに後方に控えている。器用な男であるから、殆どの場合で呼ばれることはないだろうが――
『以前の蔵の件では、貴方の言いつけを守らずに階段を上がってきていましたがね』
 時間がかかった反論は、クロらしくない拗ねたような言い方でされた。鱗道の言葉を咀嚼し、吟味し、理解はしたのだろうが腑に落とせなかったのだろう。それで、なんとか反発しようと反論要素を引っ張ってきたのだろうが、
「それは……まぁ……あれは俺が半端に巻き込んだせいだろ……それにしてはもう少し待ってられるもんだと思ってたが」
 鱗道は曖昧に返事をするだけだ。クロは反発先を失ってしまったのか、すっかり黙ってしまった。鱗道は顎を掻いてから、
「色々と聞きたいことがあるが……まずは、あれだ……心配してくれて有り難うな、クロ」
 そのまま右手をクロに向かって伸ばす。よくやるように、クロの頭を指先で撫でようとしただけだが、クロはすっと鱗道の手を避けた。拗ねてしまったか、機嫌を損ねたかと勘ぐる鱗道に、
『鱗道、貴方はまず身を清めてください。猪狩晃の言う通り、貴方は随分と汚れています』
 クロの声はそのどちらでもないと、普段通りの冷静な声で発言した。
『また、貴方の聞きたいことの大半は私に説明可能でしょう。ですが、こごめ様に直接聞かれた方が円滑かと思われます。こごめ様は所用で外出されていますが、程なく戻られるとのこと』
 クロの言葉を受けて、鱗道は自分の右手を見た。確かに、そこだけでも泥や砂がついたままである。着っぱなしのコートにも、落ち葉や泥がひっついていることだろう。それもその筈、先程まで山にいたのだ。ぬかるみを転がり、山を引き摺られ、駆け下りて――気が付けば家にいた。猪狩いわく、まるで死体でも埋めてきたかのような有様で――
『鱗道。貴方は、貴方の体感以上に疲労しているはずです。風呂の準備はしてありますから、まずは湯船に浸かってください。ただし、風呂場で眠らぬように。大抵の場合、それは気絶だそうですから』
 ぼんやりと纏まらない考えに走りかけていた鱗道を、嘴の音が引き戻した。クロの言葉は全て、鱗道を思っての進言である。感情の起伏が少ない声では、すっぱりと断じるような物言いになりがちだが、ここまではっきり言わないと、鱗道の腰は何時までも重いままだ。
『シロは私が看ています。ある程度の対処はこごめ様から聞いていますし、私に不可能となれば貴方をちゃんと呼びますから』
 鱗道は今一度、視線をシロに向けた。ゆっくりとした胸の動き。湧いては消える瘴気。開かない目。揺らめかない被毛。輝かない体。そして視線をクロに戻した。語っていると主張するためだけに開かれる嘴。普段と変わらず微動だにしない鴉の器。僅かな揺らぎもない姿勢。室内灯を反射する赤い目。
「……分かった。お前の言う通りにする。シロは、任せたぞ」
 鱗道は言いながらちゃぶ台に手を突いて立ち上がった。クロからは嘴一度の返事がある。鱗道はシロとクロを見ずに風呂場へと足取り危うくも直行した。短い羽音が聞こえてくる。クロがちゃぶ台から、シロの側に下りたのだろう。そして、
『きっと、こういったやり取りが不要になると、あのような態度が取られるのですね』
 クロの独り言、であろう。故に、鱗道は返事をしなかった。鱗道にとってはクロもシロも、猪狩とほぼ同列の存在だ。だからこそ、やはり、返事は不要である。

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