「チンチラってかわいいよね~」
クラスの女子がそんなことを言っているのを耳にしてしまった。
(なんだ…そんな過激なことをこんな教室でみんなに聞こえる声で言うなんて…ち、痴女なのか!?)
オレは思わず、股間に血液が集まってきてしまう。
だって…その、あれだろ?スケベな男子がよく「このマンガのパンチラ最高だよな!」とか言ってるのは、あれはまだいいじゃん。だってパンツはまだ服だからさ、モロじゃないし。
でもチンチラはさすがにマズイだろ…。
そんな発言して、男のこと誘ってるのか?
あぁダメだ。頭の中が真っ白になってきた。
――チャイムが鳴り、先生が教室に入ってきて授業がはじまってからも、オレはさっきの女子が放ったひとことが気になって勉強に集中できなかった。
夜…自室でベッドの上にころがり、目を閉じるオレ。
(女子からすると、チンチラってうれしいもんなのかな?)
ふとタンスを開け、一番クタクタになっている履き古しのトランクスを取り出した。
今着ているボクサーパンツを脱ぎ、トランクスに履き替える。
「この上に短パンとか履いちゃうか…」
さらにカジュアルな夏服…薄めの生地の短パンを履いて、姿見の前で脚をくんだ。
「ふむ…。んーー?どんな角度だと見える…??」
大きく脚を開いたり、あえて短パンの裾をめくってみたり、いろいろなポージングをためす。
「まぁ、でもたしかに…これでチラっと一瞬でもみえたら、それはそれでエロい…のか??」
自分でもよくわからなくなってきたが、もしオレのこういった仕草に興奮する女がいることをイメージすると、なかなかクるものがあった。
(やばいムラムラしてきた…。一回抜くか)
その日はお気に入りの動画で2回射精し、ぐったりと横になっているうちに気付いたら寝てしまい朝になった。
登校後…また教室内で女子たちが会話をしているのが聞こえた。
「チンチラってさ~なんか、もう守ってあげてい~~♥ってなるよね!むぎゅ~~!♥って」
ーーーブハッ!!
オレは鼻血を噴出した。
いや、たしかにガードが緩い天然な女の子キャラがパンチラしてるシーンとか「見えてるぞ!」って咄嗟に教えて守ってあげたくなる庇護欲みたいなのは感じるけどさ。
むぎゅ~~…って、それもうその先に触っちゃってるよね?
それはヤバイだろ…。
「あれ?河本くんどうしたの?」
女子のひとりが、オレの異変に気付き声をかけてきた。
「あーいや、ちょっとビックリして……女子ってそんなに好きなの?チンチラ」
思い切って聞いてみる。
「うん!私はめっちゃ好きー!」
女子はにっこりと満面の笑みで答えた。
はぁ…はぁ…そうなのか…はぁ…はぁ。
「どうしたの河本くん?暑いの…?」
「うんまぁ……えっとじゃあ、たとえばだけどオレがチンチラ見せてあげるって言ったら?どう?見たかったりする…??」
「えー!チンチラの画像持ってるのー!?みたいなぁ!」
(やっぱり見たいのか!!)
「あーえっと今は無いんだけど、そっか…。わかったそしたら明日撮ってくる」
「ありがとう~!うれしい」
オレは女子とそんな会話のやりとりをしてしまったものだから、授業が終わって放課後が車でずっと頭の中はピンク一色だった。
帰宅してすぐさまオレはクタクタのトランクスと短パンに着替え、スマホのカメラを巧みに使い、下から撮ったり斜めから撮ったり、満足のいくチンチラの写真を何カットも撮影した。
(よし…けっこうよく撮れた…よな?これで明日見せたら喜んでもらえる…のか、ヤバイけっこう恥ずいかも…。)
その翌日、オレの人生が終わったことは説明するまでもない。
みんなも自分が知らない単語に出会ったときは、まずしっかりインターネットで調べような。
あ、オレはその日から不登校になりました。
高卒認定だけ受けに行ってずっと家でネットゲームしてましたよ。