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2-「跳躍」

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2 同日 午前7時50分
 聖治は黒髪を無造作な感じにセットし、よく見る太っても痩せてもいない、
 所謂普通の青年だ。こんな男が天才科学者である。人は見た目では決して判断してはいけない。
 
「どうせ終わるなら……いや、終わらせて、たまるか! 」
地下へ続く階段を下り、三重ロックの扉を開けると、
そこには、タイムマシンがある。
 なんというかわかりやすい。一目見ただけで十中八九タイムマシンだと理解できそうだ。
 メインパワーを入れ、起動を確認する。
 動物実験も済んでいないというのに、彼は暴挙に出ようとしていた。
 研究室に備え付けの電話メモリから、小川の名前を探し出す。ダイヤルする。2コールで出た。
「もしもし、徳山か。もう落ち着いたか? 」
「ああ。すまなかったな。じゃあ、ちょっとこれから未来に行ってくる。」
「は? お前、大丈夫か?」
「至って正常だ。黙ってて悪かったが俺はタイムマシンの開発をしていた。……未完成だが」
「マジかよ! ってそんなモノ、現在の技術で開発できるはずが……! 」
「理論さえ完成させれば簡単な話だ。一か八か賭けてみるさ。
成功すれば俺は未来で隕石を回避する方法を探ってくる。隕石落下後の地球の様子も知りたい」
「仮に、その話を信じたとしても、危険だと思うぞ」
「承知の上だ。どうせ死ぬなら足掻いてみるのも悪くない」
「本気……みたいだな」
「当然だろ? 自分の発明品を試す願ってもないチャンスだ」
「はあ……頑張れよ。死ぬな! 徳山! 」 
「おう! じゃあまた」
 切った。ちゃんと飛べる保証はない。無事に帰れる保証もない。
 何せ、理論上の完成だ。理論と現実は違う。
「それでも俺は……行くんだ! 」
 士気を高揚させるため、わざと声に出す。
「メインコンピュータの設定を確認。時間設定、2607年8月17日。…………始動」
 ハッチが閉まり、マンション全部を震えさせるよな轟音とともに、マシンは消滅した。
 同じ頃、一人の科学者が、歓喜に震えながら地下シェルターに潜っていったことを、聖治は知らない。
 
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