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第一話

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広平はとあるビルの入り口に立っていた。ビルには「寺田スポーツ用具」という名の会社が入っている。
清掃員である広平はここの会社から左遷され、寺田記念競技場に勤めることとなった。
今ではこのビルの清掃員の人手が足りなくなった場合にのみ広平は呼ばれるのだ。


このビルは思い出の場所である。


昔、広平はアルバイトの清掃員であったが、金を貯め上京した。当初抱いていたミュージシャンになるという夢はいつしか消え去り、気付けば正式な清掃員になっていた。清掃用具と自らのペニスを携え、張り切ってビル内の清掃に当たっていたものである。そう、あの光景を見るまでは。
あの一件で広平は競技場の清掃員に指名された。いや、飛ばされたという方が適当だろうか。
本人としてはいきなりの左遷通告だ。会社側が自分がした覚えのないことをしたと言うのだ。
反論はしたが当然聞き入れてはもらえなかった。


しかし、競技場で男の射精を見て、欠けていた記憶の全てがフラッシュバックし、甦った。
エスカレーターの手すりに雑巾を押し付けていたこと、気付けば階上に全裸の男がいたこと。そして手すりの真ん中を精子が流れてきたこと。
ちんこをまろみ出しながら出勤していた社員がいたこと。

「寺田国際記念競技場」からこのビルまでは15kmほど離れているが、それを広平は30分足らずで笑いながら走ってきた。世界記録に迫らんとするとする勢いだ。

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広平はビルに到着した。
激しく勃起した。
そのビルはまさに広平が求めていたビルだった。色といい、形といい、広平の考えを実行する上では理想のビルだ。
まず広平は清掃員用の準備室に向かった。
そこには昔の同僚、橋本がいた。
橋本は広平をまるで、何か汚いものでも見るかのような目付きでじろじろと見たあと、ようやく口を開いた。

「おい、広平じゃないか。どうしたんだ?今日はバイトないだろ?フン」

この男、橋本は広平の行いを会社の上層部に報告した張本人だ。この男のせいで自分が職を追われたのだと考えると、腹の底からふつふつと怒りが湧き上がってきた。
広平はその怒りを抑えられなかった。
ズボンからおもむろに龍(ドラゴン)を取り出すと、橋本の顔に向けた。
先ほどまで広平を軽蔑するような目つきをしていた橋本の顔が、みるみるうちに恐怖に染められていく。
驚きのあまり橋本の口がだらしなく半開きになっていた。広平はそこに目を付けた。

ドブビゴン!!!!!ブピー!!!!!

一瞬の出来事だった。
広平は橋本の口の中に、見事、彼の兵隊たちを射出した。
あまりの香りに橋本の思考回路が破壊され、橋本はその場に倒れこんだ。「わふわふ・・・ちんこちん」などと、わけのわからないことを呟いている。
広平は橋本の醜態を一瞥した後、早速準備に取り掛かった。

広平はそそくさと、ビルの外壁を塗装する際に使う作業員用外部エレベーターへと向かった。
エレベーターに乗り込むと、口元に不敵ないやらしい笑みを浮かべながら、最上階を指定するボタンをみずからのちんぽこを使って押した。
エレベーターが重々しい音とともに上昇を始めた。勃起を抑えられない。すでに広平のちんぽはコントロール不能に陥っていた。暴走寸前であった。

ビルの大きな窓が下へ下、ゆっくりと流れていく。

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寺田スポーツ用具店の社長、馬田はその一進一退を繰り返すばかりで、ちっとも結論の出ない会議に嫌気が差していた。
いつになったらこの憂鬱な会議が終わるのか。
まるで出口のないトンネルに迷い込んだかのような気分であった。
ふと、窓の外に目をやる。
青く透き通った、美しい空が見えた。一瞬ではあるが、心が洗われたような気がした。

しかし、次の瞬間、彼は信じられないものを目の当たりにした。

なんと窓の外を、下半身を露出させ、しかもドデカイちんぽを抱えた男が上昇していったのだ。
幾度となく自分の目を疑ったが、それはまさしく男性器以外の何物でもなかった。
わずかだが、馬田も勃起した。

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広平は上昇の途中、この会社の社長が、会議室でむつかしそうな顔をして、真剣に会議に臨んでいる光景を目にした。
怒りと悲しみが同時に沸き起こり、広平のちんぽこをさらに巨大化させた。
すでに、どんな金属よりも、いや、ダイヤモンドよりもかっちんこっちんである。モース硬度でいえば10である。

ガコンッ

という軽快な音とともに、エレベーターは最上階で停止した。
足元に目を落とせば、そこには途方もない数の窓が見える。

そしてついに広平は考えを実行した。

馬の性器のように巨大化したドラゴンを激しく摩擦したのだ。何度も精子が飛び出しそうになったが、必死にせき止めた。
これは広平の特技の一つ、「精子チャージ」である。
なんども射精しそうになっては、その強靭な精神力で精子を押さえつけ、尿道に多量の精子を溜めることで、まるで噴水のように精子を発射することが出来るのだ。
30分近く精子チャージを続けた。さすがに限界が近づいてきた。

今だ!!!!!

広平は尿道の封印を解いた。
待ってましたとばかりに、多量の精子が流れ出る。
それと同時に、広平はエレベーターの止め具をはずした。
エレベーターはものすごいスピードで降下を始めた。


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馬田は先ほどの光景が忘れられず、ただひたすらにぼんやりと窓の外を見つめていた。
さっきの男はなんだったのか。なぜ、あの途方もなくでかいイチモツを露出させて上昇していったのか。
さまざまな考えが脳裏を巡った。だがしかし、その答えを出すことは彼には到底出来そうもなかった。

半ばあきらめかけていたとき、彼の眼前にその答えが示された。

なんと先ほどの男が精子を噴出させながら、ものすごい勢いで降下していったのだ。

それを見て馬田にはわかった。彼は、このビルを精子でコーティングしたのだ・・・と。
一瞬の光景だったが、彼の心にはその光景が永遠に感じられた。
ふと馬田はわれに返った。

自分は何をしているのだ。今は大切な会議中なのだ。この由緒正しき寺田スポーツ用具㈱の命運がかかっている。
わずかな焦燥とともにあたりを見回すと、会議に出席していた全員が窓の外を呆然と見つめていることに気が付いた。

そう。皆見ていたのだ。その光景を。

全員が何も言わず、静かに席を立ち、感涙の涙を流し、会議は終了した。

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広平は激しく地面に叩き付けられた。もちろん精子はとめどなく流れている。
さすがに最上階からの落下はこたえたが、広平はかすかに、しかし確かに感じていた。
何事もなかったかのように立ち上がると、ビルを見上げた。
ビルは見事に真っ白な精子でコーティングされていた。
この世のものとは思えないほど美しかった。

広平は満足そうに微笑むと、清掃員用準備室へ帰っていった。


つづく
2

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