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奴隷

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そのものは今日も誰に言うでもなくお決まりの
言葉をつぶやいた。
「全く連中ときたら、生きていられるのは俺の
おかげだと言うのに全く感謝をしない。いや正確に
言えば感謝をしているのだが、それは俺に対しての
ものではないのだ。全く生まれてきてからずっとこうだ。
いっそのこと死んでやるかな」
そうは言うもののそのものは真剣に死ぬ
つもりはないのだ。使命感に突き
動かされているのかもしれなかったし、
あるいは諦めているのかもしれなかった。
そしてそのものは今日の仕事を始めた。
そのものとは神だった。神の仕事は大変である。
最初の頃はまだ良かった。宇宙を作っていく
仕事である。中々やりがいがあったし、
面白かったからだ。疲れるが充実した仕事だった。
生命を作り出す仕事をし始めた頃もよかった。
しかし動物に呼びかけても何も反応しないところを
見てがっかりした。動物が文明を作り出すともっと
腹が立ってきた。何しろ連中はわけの分からんものを
神と言い出し始めたのだ。本当にあの時は腹が立った。
それに詐欺師どもが自分は神の声を聴いたなどと
言い出し始めやがった。また神など存在しない
などと言い出す奴も。神に感謝する連中も、
神として思い描いているイメージは私の姿とは
違うのだ。それに最近は戦争をとめるのも大変に
なってきた。また動物がいる惑星の数も増えていく。
神は様々な仕事をやり、一日の仕事を終える時間になった。
この後しばらく休憩を取りまた仕事を始めるのだ。
そして神は仕事終わりにお決まりの言葉をつぶやいた。
「やれやれ。連中はわたしのことを神と崇めるが、
わたしはまるで連中の奴隷だ」
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