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人は、迷ったときほど「迷った」って自覚しないんだな。
今頃迷ったってわかった。
俺は私立都或大学の二年生。サークルの活動で小さな林へやってきた。
何でも、林の生物を観察するとか何とか・・・
まぁ、俺って奴は誰もが森とかに遊びに言ったときに思うこと、
「迷ったらどうしよう」
なんて思いながら迷わないように林の中を歩いていたわけだ。
・・・案の定、迷ってしまった俺がここにいます。
「はぁ、出られなかったらどうしようかなぁ・・・」
なんて、こういうときに絶対言ってはいけない言葉ベスト3に入る言葉を発してしまったわけだ。
こういうときばかりに言葉は現実となるわけで。
「・・・ここ、さっきも通ったよなぁ?」
「・・・やっぱり、迷ってるのかな俺」
「・・・・・・はぁ、学業でも将来でも迷ってる俺が、森でも迷って三冠しちゃったよ・・・」
「もう俺なんて生きる価値ないのかな俺なんて氏ねばいいのにあぁでもやっぱ生きtくぁwせdrf」
そんな事呟きながら、殆ど真っ暗な林トボトボを歩いている俺の目の前に・・・
いきなり目映い光が射し込んだ。
「うぉっっっ!!?」
・・・それは暗闇から急に明るい場所に変わったために起こる現象だった。
実際見てみると、それはそれほど明るくはないという場合が多い。
俺の場合もそうだった。
数秒経って気付いたが、そこは寂れた洋館のようだった。
ところどころ明かりはついているものの、外壁は蔦が絡みつき、窓には大量の蜘蛛の巣が張っていた。
無論、人のいる気配など全くなかった。
「・・・ここに泊めさせてもらうしかないのかなあ」
「てか・・・こんな所に住む物好きなんているのかなあ」
「いたとしても、俺を迎えてくれるだろうか」
「食べられたりしたら・・・どうしよう」
「・・・・・・・」
「まさかな、そんな怪物みたいなのがいるわけないよな」
俺は静かにノックをした。
「すみませーん、誰かいませんか?」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
「返事がないな・・・」
「・・・やっぱり誰もいないのか?」
そして俺は、若干ためらいながらも、その扉を押してみた。
・・・・・・・・・・・・
開いている。
扉の向こうにある静けさが、冷えた扉を通して伝わってきた気がした。
「・・・開いてるって事は、誰かいるのかな」
「・・・・・・・・・・・」
「ええい、入ってみればわかるだろ、多分」
「そうだ俺落ち着け俺落ち着けottk俺・・・きっと大丈夫大丈b」
「・・・・・・・・・・・・」
俺は静かに入っていった。
そこは明かりはあるものの、何処となくくらい雰囲気だった。
目の前には、二階に続くであろう階段があった。
ちょっと臭うが、悪くない場所でもあった。
「・・・ここなら、大丈夫かな・・・」
「ふぅ・・・」
散々歩き回った俺は、ちょっと一息つくことにした。
「しかし、なんなんだろうなこの洋館は・・・」
「誰かいるわけでもないし・・・」
「何のためにあるんだろうか」
『ンフゥーーッ、ンフウゥーーーッ』
「まぁ気休めにはちょうどいいけどな」
「・・・それにしても、さっきから」
『ンフゥーーッ、ンフウゥーーーッ』
「何か」
『ンフゥーーッ、ンフウゥーーーッ』
「物凄い鼻息のようなものを感じる気がするんだが」
「・・・・・・ハハッ、気のせいだよn」
『ンフゥーーッ、ンフウゥーーーッ』
振り向いた先には
誰もが想像できるような
汗ばんで、ニンニク臭のする
変 態 が い た 。
「いやあああああああああああ!!!!!」
俺は女と聞き間違えるほどの金切り声を上げて、目の前にある階段を駆け上がった。
それはもう、大麻に依存した廃人のように。
勿論、謎の変態も鼻息を荒げて迫ってくる。
『ンッフゥーーッ!!!ンッフッフウゥーーーッ!!!!』
「なんなんだこいつわああああ!!!」
俺は急いで目の前にあった部屋に飛び込んだ。
そして入るやいなやすぐに扉を閉めた。
すると、急に鼻息は聞こえなくなった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「もう、こないよな?」
「・・・・・・・・・・・・ふぅ、一体何なんだったんだよ・・・・・・」
俺はあまりに全力疾走したため、力が抜けてしまった。
いい加減休もう、そう思った、その時だった。
「ねぇ」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「ねぇったら」
「・・・・・・・・・ぇ・・・・・・・・へぇっっ!!?」
俺の目の前には、一人の少女が立っていた。