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第二話 奇妙

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「き・・・君は一体?」
俺はまだちょっと強張った声で尋ねた。

「あなたは外からやってきたの?」

「(話聞く気ゼロかよ・・・・・・・・・まぁいいか)」
「あぁ、たった今入ってきた」
「いや、大学のサークル活動で林に入っていったら迷っt」

「そんなことはどうでもいいの」
「(???なんなんだ、この娘は・・・・・・・・・・
 専ら、話聞く気ゼロだし・・・・・)」
俺はようやく立ち上がった。

「ねぇ」
「え?」

「その扉、開けてみて」
「ぇ・・・・・・・・・・」
「いいから早く」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

俺は開ける気は毛頭なかった。
まだ、あの変態がいると思ったからだ。
俺が開けるのを渋っていると、彼女が俺の手を掴んで無理矢理開けさせた。

「うわわっっっ!!!ちょっ、おま・・・・・・・・・・!!!」
俺は再びあの変態と出くわすのかと思うと叫びそうになった。

「・・・・・・・・・・えっ??」

しかし、そこには、先程とは違った空間が流れていた。
先程の洋館は、二階造りで、赤の絨毯が敷かれていた。
だがどうだろう。今、目の前にある洋館、いや、一軒家は二階建てではなく、絨毯の色も、部屋の作りも、壁の装飾も違った。

「(・・・・・・・どういうこった????)」

「閉めて」
彼女は、いつの間にか俺の手を離していた。
俺の声だけがこだましていた空間に静かな声が響き渡った。

「あ、あぁ・・・・・・・・・・」
俺は彼女の言うとおり、扉を閉めた。

「・・・・・・・・・・なぁ、一体どういうこt」
「もう一度、開けてみて」
「(・・・・・・・やっぱ聞く気ないんですか。そうですか。)」

俺は心の中でそう呟くと、ゆっくりとドアノブを捻った。
・・・・・・・・・・心なしか、重たくなっている気がした。

「(・・・あれ、さっきまで引き戸だったのに・・・・
 わけ分かんないな、全く・・・・・・・・・・)」

俺がその戸を引くと、それまでの考えが全て吹き飛んだ。


・・・・・・・・・・というより、俺も吹き飛んだ。

「うわああぁぁぁぁ!!!!!」

扉の先は、物凄い吹雪が吹き荒れていた。
勿論、さっきまでの洋館や一軒家とは似ても似つかなかった。

「・・・・なんなんだよ・・・・・・」
「さっきの変態といい、この吹雪といい、」
「・・・一体俺に何が起こっているんだ???」

俺が若干パニクっていると、彼女はその扉をゆっくり閉めた。
俺が吹き飛ばされるほどの風が吹きつける扉を、彼女は閉めた。
彼女は俺のほうに歩み寄ってきた。

「・・・・・これで分かった?今、あなたが何処にいるのか」
「・・・・・・・・・・」

俺は、返答を考える前に、口が動いた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・君は一体?」

「答えになってない」

彼女は顔色一つ変えずに言った。

「あなたが迷い込んだのは、世俗で言われているミステリーハウスの類のもの」
「だけど、ここはただのミステリーハウスじゃない」

彼女は、一呼吸おくと再び続けた。

「通常のミステリーハウスと呼ばれるものは、中に入ると幽霊、妖怪に遭遇したり、
未知の冒険に出なければならないといった、『空想上』のもの」
「でも、ここは『現実上』のミステリーハウス」
「小説や漫画とは違う、現実のもの」


・・・・・俺はふと考えた。そもそもおかしかったのだ。
俺が迷うと言っていた林、勿論サークル活動のため頻繁に行っていた林だ。それほど深くもない。
・・・そう、俺みたいなやつでも迷うことがないほど、小さな林だ。

・・・・・何回も調査をしていたが、『洋館があった』と言った報告は一度もなかった。
サークル内のリーダーが『この林はそろそろ終わりかな』というほど、調べつくしていたにもかかわらず。


「・・・・・これで分かった?今、あなたが何処にいるのか」
彼女は、俺と反対の方向を向いて、再び尋ねてきた。
俺は、考えをまとめて言ってみた。

「・・・俺が迷い込んだのは、君が言ったミステリーハウス」
「しかも、空想上じゃない、現実の・・・・・」
「・・・・・こんなところか?」

「ただのミステリーハウスじゃない」

彼女は付け足すように言った。


「・・・入れば、二度と出ることは出来ない」


「・・・・・・・・へっ?」

俺は、あまりの驚きに言葉が出なかった。
出られないって言うのは、どういうことなんだろう?
・・・ここまでいろいろ知っている彼女が、今更嘘をつくとも考えにくい。
だとしたら、本当なのか・・・?

「・・・・どういうことなのか、説明して欲しい」
俺は静かに尋ねた。
彼女は振り返って、口を開いた。

「・・・このミステリーハウスは、姿形を変えて世界中に星の数ほどある」
「扉を開ければ、それらの何処かの扉に繋がる」
「しかも、その行き先は扉を開けるたびに変わってくる」
「・・・つまり、このミステリーハウスから出られる確率は?」

彼女は問うてきた。
俺はない頭脳で考えた。

「・・・世界中の、ミステリーハウスの数か?」

「ちょっと違う」
「その数に、それぞれの場所の扉の数も含める」

「あ、そうか・・・・・・ってことは・・・・・」

「そう、その数故に」


『入れば、二度と出ることは出来ない』


二人同時に言ってしまったので、ちょっと笑いそうになったが、今はそんな場合ではなかった。

「でも、出れないって事はないんだよな?」

「えぇ、だけど、それは確立にしても世界中で一人ぐらい」
「でも、今のところ出たと言う話は聞いていない」

「なるほど・・・」
俺はようやく現状が理解できた。


「私が知っているのは、これくらい」
彼女はその髪をいじりながら言った。



「じゃあ今度はこっちが聞かせてもらおうかな」
少しの沈黙の後、俺は再び尋ねた。



「・・・君は一体、誰なんだ?」

今度は彼女は聞き入れる様子があった。


まだ互いに名前も知らない二人が、座って話し始めた。
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