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2.骨への愛情

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2.骨への愛情

 足下には濁流があった。

焼き場へ両親を送り、しばらく焼きあがるまで待たなければならなかった。
私のことを無視して、笑いながらタバコをすう何人かの父と母の友人たちが鬱陶しかった。
焼き場の近くの公衆便所の屋根の上に寝転がり、煙突から立ち上る煙を見つめた。
最近はガス式でが出ないものもあるらしいが、この焼き場では普通に煙が出ていた。父と、母の煙だ。

煙をぼうっと見つめていたら涙が出てきた。
トラックの運転手も死んでいて、気持ちをぶつけるところがなかった。
公衆便所の屋根をおもむろに殴った。痛かった。

父の会社の社長が、こんなところにいたのか、と近づいてきた。

「女の子がそんなところにいるなんてはしたない」

笑いながら言う社長の顔を見て、顔が綻んでしまった。不細工だ。



社長がメタボリックの巨体を必死に動かして屋根まで上ってきて、私の隣に腰掛けた。

「大変だったね」

「大変でした 」

「まあ、それはそうか」

社長の顔は、不細工なりに愛嬌があった。

「これからどうするの?」

 そういった社長に返す言葉を私は持っていなかった。

「高校とかさ、家とか、重要でしょう?」

高校には愛着がある。離れたくはない。
そんなことを思いながらも、なにも言わない私に社長は、養子にならないか、と言った。

「養子、ですか」

「そう、養子。苗字は変わるけど、どうだろう。君にもよい話だと思うんだけれど」

私は少し考えた。私はまだ17だ。施設に入居しなければならないかもしれない。
だが、両親が死んだことで手に入る保険は、億を超えていたし、一人でも問題ない気がした。

「もう少しだけ考えさせてください」

そう返した。社長は、そうかわかった、とだけ言った。



両親が焼け上がった。焼き場に呼ばれて愕然とした。
骨しかなかった。私はもう少しきれいに残るものだと思っていたから意外だった。
職員が手を合わせて、その後に橋渡しをした。つぼに一人づつ入れていく。
棺に入った両親を見ているうちは実感がわかなかったが、骨になってしまって、本当に死んでしまったのだな、と思った。
自然に嗚咽が出た。生きていたくなかった。親戚もいない、両親も死んだ。孤独の牢獄の檻がはじめてはっきりと見えた。


両親の入ったつぼを家に持ち帰って、しばらくの間見つめていた。
中には骨だけだった。あれだけ一緒にいた家族は、つぼになった。
孤独の牢獄の中で、私は感じた。死にたいと思うのを。
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