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第九話

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○第九話「松下聡の夢」

 伝説にはこうある。かつて魔王を倒したとされる勇者の剣があり、魔王はその剣によってしか傷を負わせる事ができないのだと。しかしながら、強すぎる力を持つその剣こそが新たな争いを生むかもしれないと考えた勇者は、自らその剣を封印した。いつの日か再び魔王が現れて、その剣が本当に必要とされるその時まで……

 そして数百年経った現在、勇者の剣は王家によって保管され続けている。その剣は伝説の通り、封印の鞘に納められており、今現在まで抜く事が出来た者はいない。それは即ち魔王が目覚める兆候がないという事であり、平和の象徴でもあった。
 王家は毎年14歳になった少年少女を集めて、この剣を使った成人の祭りを行っている。一人ずつこの剣を抜けるかどうか試すのだ。昔はかなり厳かな雰囲気の中で行われる儀式だったようだが、今となってはただの余興となってしまっている。どうせ抜けるわけがないと皆思っているからだ。
 なぜ14歳でそれを行うのかと言えば、この国での成人が14歳からであり、かつての勇者が最初に文献に現れた当時14歳だったから、らしい。で、今年もその祭りの季節がやってきて、国中浮かれた雰囲気になりつつある。勇者が現れるかどうかよりも、祭りの出し物の方が重要なのだ。

 僕も今年で14歳だ。本当は祭りになんか出たくないけど、学校行事にされてしまっているので、出ないわけにもいかない。余興と化してはいるけど、一応はこの祭りのメインイベント。儀式の間は、多くの人達がその結果に注目する。場所は城の前、街を見下ろす事の出来る丘の上の広場。城のテラスからはこの広場がよく見えるらしく、街の人だけじゃなく王様までもが儀式の様子を見ている。生徒達は順番が来たら、一人でこの広場の中央に歩いていき、多くの人達の目がある中で儀式に挑まなければならない。僕にとっては地獄にも等しい時間だ。

 僕は、同じ学校に通う人達皆に嫌われている。理由なんて分からない。暗いだとか気持ち悪いだとか不潔だとか色々言われて、何とかしようって思っても、どうすればいいのか分からなかった。何をやっても裏目に出て、否定される。つまり皆は僕という存在そのものが嫌なのだろう……
 ただひたすら時間が過ぎるのを待っている日々。毎日が辛くて、だけど学校に行くしかなくて、無視されて、そのくせ聞こえるように陰口を言われて……ああ、僕はきっとそういう役目の人間なのだと、そう諦めていた。
 そんな僕にとっては、人前に出て何かをさせられるなんて拷問みたいなものなのだ。だからこの祭りも出たくない。でもこの儀式は飽くまで王家の主催だ、とてもじゃないが逃げ切れるものじゃない。人々は祭りで浮かれているけど、僕は……ひたすら憂鬱だった。

 そして、祭りの当日……僕はどんよりした気持ちで儀式の順番を待つしかなかった。

 順番が来る間、当然僕以外にも同級生が沢山並んでいるわけだけど、僕の周りには不自然なほどスペースが空いていた。皆僕を避けているのだ。背後からは何か匂いを嗅ぐような、クンクンという鼻息が聞こえ、続けざまに小声で「くせぇ」と呟き、笑いあう声が。かと思えば、どこか横の方から小さなゴミのようなものを投げつけられ、顔にピシピシと当てられる。しかしそれらに反応して顔を向けても、どうせ知らん顔するに決まっている。これが僕の日常なのだ。出口などどこにもない地獄のような日々……一体どうすれば彼らは満足するというのだろう。それが分かったら、どんなに楽な事か。

 生徒達が次々と儀式に挑み、順番は進む。しかし当然の如く、誰も剣を抜く事ができない。如何にも腕力がありそうな生徒が、顔を真っ赤にしながら力を込めても抜けない剣……いやそもそも、大人達だって色々な技術を用いて剣を抜こうとしたはずなのだ。それでも抜けないのだから、最早茶番以外の何者でもないだろう。如何なる力、如何なる魔法をもってしても解けない封印……噂ではそんなものは元からなくて、剣と鞘は元々一体になっているとも言われている。そんなものの為に、僕は一人であの場に立たされるのか……

 そして、僕の順番が来た。周囲の生徒達が小声で茶化してくる。僕はおどおどしながら広場の中央に向かい、剣を手に取る。すると女子生徒の小さな悲鳴が聞こえてくる……
「やだぁ、もう触りたくな~い」
「あいつ最後にすればいいのにぃ」
 つまり、僕が触ったからもう、その上から触りたくないって事だ。僕は……心が暗く沈むのを感じていた。だけどまあ、さっさとやる事やってここを離れよう。これ以上、耐えられない。
 剣の柄を握り、軽く力を込める。どうせ抜けるわけがないし、あまり力を入れたりしたらその事をからかわれるので、軽く……だが、僕の予想に反して、剣の鍔の部分が少し、鞘から離れてしまった。
 僕は慌てて、そのズレを直す。な、なんだ今のは。他の皆には気付かれなかったようだが、確かに剣が少し、抜けた。も、もしかして僕、この剣を抜けるのか? それとも、皆もここまではできるのか?
「早く降りろよー」
「勇者気取りかー?」
 男子生徒が、わざと顔を伏せたままで棒読みみたいな野次を飛ばす。でも、もしかしたら……本当に僕が勇者なのか? このまま、剣が抜けたら……僕はどうなるんだ? 僕を馬鹿にしてきたあいつらは……
 台座の前で固まっている僕を見て、生徒達がクスクスと笑いながら、陰口を言う。そう、そうだ……僕が勇者になれば、もう誰も僕を悪く言えないはずだ……もうこんな思いをしなくてもいいんだ!
 僕は意を決し、柄を持つ手に力を込める。そして……剣は鞘から解き放たれた!
「っ!? は、はははははは! や、やっぱりそうだった! 僕が、僕が勇者なんだ!!」
 その時、天高くかざした勇者の剣から眩い光が溢れ出した。光源の一番近くにいた僕はとてもじゃないが目を開けていられる状況ではなく、目を閉じながら剣を遠ざけようとする。一体、何が起きてるんだ? この光はなんだ? この光こそが勇者の剣の所以なのかもしれないけど、それにしたって強すぎるだろう……

 と、そこである事に気付く。僕以外の人間の声が一切聞こえないのだ。さっきまで広場には沢山の人がいた。生徒達もいたはず。なのになんで誰も声をあげないんだ? いきなりこんな状況になったら、騒ぎになってもおかしくないはずだ。なぜ皆して黙ってるんだ?
 想像力豊かな僕なりに、考えられるパターンは二つ。この光と共に僕がどこかに転送されてしまった、とか……もしくは場所はそのままだが、光の効果で時が止まってる、とか。なにせ僕が手にしているのは勇者の剣だ、何があっても不思議じゃない。

 どのくらいそうして目を閉じていたのか、僕は突然足元が水溜りに突っ込んだような感覚を受け、慌てて目を開いた。僕がさっきまで居た場所は丘の上にある広場だったはず……なのに、今僕がいるのは……浅瀬? やっぱりどこかに転送されて……
 いや、違う。ここはあの広場だ、どことなく面影がある。城は廃墟と化して蔦と苔にまみれているし、城下町があった場所は完全に水没して湖と化しているが……間違いない。どうやら足元の水溜りは、そのまま城下町を飲み込んでいる湖に通じているようだ。
 一体どうなって……まさか、僕だけ時間を飛び越えたとか? それ以外には思いつかない。だとしたら僕はこれからどうすれば……
「ねえ」
「!? え、え?」
 途方に暮れていた僕の背後から、突然誰かが声を掛けてきた。振り返ると、そこに居たのは白いワンピースを着た、裸足の少女だった。透き通るような白い肌と、長いお下げ髪……歳は僕とそう変わらないか、もう少し幼いくらいか。
「何してるん? 私の庭で」
「な、何って……え、庭?」
「そう、ここは私の庭。私の庭の中の、水没都市がある湖」
「……ぼ、僕は、僕はこの街に住んでいたんだ」
「へえ……でも、今は見ての通り、湖の底だよ」
「そう、だよね……僕は、この勇者の剣を抜いた事で、時間を越えてしまったみたいだ。僕はこれからどうしたらいいんだろう」
 こんな少女にそれを聞いてどうなるとも思えない。でも、つい口に出してしまった。
「どうするはずだったん?」
「どうするって、えっと……この剣を抜く事ができる人は勇者なんだ。つまり僕は勇者で、僕は魔王を倒さなきゃいけなかった。なのに僕が未来に飛ばされてしまったから……勇者のいない世界は魔王に滅ぼされてしまったのかも」
 もしここが本当に未来なら、そういう事になるだろう。勇者が現れるという事は、魔王が現れるということでもあるわけだから。
「魔王? 少なくとも、私の庭にはそんなものいない」
「……そう、だね……街は水没しちゃってるけど、凄く、綺麗だ」
 少女の言うとおり、魔王の気配は感じない。魔王ってのが実際どんな存在なのか知らないけど、本当に魔王がいたらもっとこう、危険な感じになってると思う。
「それで、どうしたい?」
「どうって……」
「元の世界に帰りたい? 私にはそれができる」
「本当に?」
「まあね。ここは私の庭、私の世界。全ては私の思うがまま」
 そう言いながら、少女はひらひらと指先を宙に舞わせる。するとそれに応えるようにして、白い椅子と白い机が現れた。少女はその椅子に腰掛けて、足先で水面を軽く蹴りながら、微笑みかけてくる。これは、魔法か何かか?
「どうする?」
「……」
 僕は悩んだ。確かに少女の力で、元の世界に帰れるかもしれない。僕は勇者だから、元の世界に戻って魔王を倒さなきゃいけない。だけど……僕は……
「僕は……帰りたくない」
「そう? それならそれでいいんよ」
「咎めないの? 僕は勇者なのに、魔王を倒す事を放棄するんだよ?」
「だって私には関係ないもの。ここに魔王はいないし、貴方の使命も意味を成さない」
「……そう、そうか」
「ただし、この世界に残るからには私の言う事は守って欲しい。できる?」
「え、ああ。例えば何を?」
「そうやねぇ、今のところはとりあえず……無闇にゴミとか捨てないように、とか。あと、何か必要なものがあれば私が用意してあげるから」
「なんでも?」
「やろうと思えばなんでも。だけど、私が見たくないものは出さない」
 ここまで話を聞いていて、なんとなくだけどこの少女は、神様みたいなものなのだろうと想像がついた。彼女は創造主だから、この庭の中では何でも自由にできる……って所だろう。

 それから僕は暫くの間、彼女の庭で過ごすことになった。彼女の庭は美しい光景に溢れていた。七色の花畑、煌く河、オーロラと星雲……どれも見たことがないようなものばかり。彼女はここを庭と呼んでいたが、とても一日二日で見て回れるような広さではない。それなのに、僕がどこに居たとしても彼女は一瞬にして僕の目の前に現れる事ができるようだ。
 彼女は彼女自身が言うように、何でもできた。お腹が空いたら豪華な食事を用意してくれるし、眠くなったら家を出してくれる。全てが満たされていた。

 ここは、楽園だった。ここには僕を悪く言う奴はいない。何も不自由しないし、どこに行っても幻想的で美しくて、飽きない。
 正直言えば、もし本当に僕が勇者であったとしても、僕なんかに魔王が倒せるわけがないのだ。運動だって得意って程ではないし、そもそもそんな度胸がない。元の世界に戻っても、僕にとっていい事なんて何一つない。この楽園でずっと暮らしていく方がいいんだ。

「あ、ねえ……」
「なに?」
 ある日の昼食時、僕は少し気になったことを聞いてみる事にした。普段だったら僕の方から女の子に声を掛けるなんて事はないんだけど、ここには僕と彼女しかいないし、なんとなくそれが許されるような気になったのだ。
「君は、名前はないの?」
「名前……あったかもしれないけど、忘れた」
「忘れた……? 自分の名前を?」
「ここには私しかいないから、名前なんてあっても意味がないんよ」
「……そういうものなの?」
「ま、そんな事はどうでもいいじゃない。それより、この庭はどうかしら。気に入ってくれた?」
「うん。凄くいいところだね。見た事のないものばかりだし、全てが満ち足りている」
「そう。それはよかった」
「……だけど、なんだろう……全部揃ってるからこそかな、時々凄く不安になる」
「不安?」
「いつしか……全部なくなってしまうような、そんな感じ……」
「……私には分からない。私の庭はなくならないもの。だけど、貴方は違うのかも」
「違うって、何が?」
「ここは私の庭。貴方の世界じゃない。貴方はいつか、貴方の世界に戻ってしまうのかもしれへんね」
「僕が望まなくても?」
「そう。だって……私と貴方は違うから」
 少女の、違うという言葉の意味が……僕が思うよりも深いものに感じた。だけど、それが本当はどういう意味なのか聞く事はできなかった。

 僕は、ずっとこの楽園での日々が続いてくれたらと願っていた。だけど彼女の言うとおり、いつかは元の世界に戻らなければならないのだろう。そうなったら僕は、この素晴らしい世界での暮らしを失うだけじゃなく、あの下らない世界で勇者として、魔王と戦わなければならない。

 ……嫌だ。嫌だけど、でもそれが僕の世界なのだ。

 その日の夜、僕はあの広場に戻り、勇者の剣があった台座に腰掛けて、水没した都市を眺めていた。まるで霧のような燐光が湖面から溢れ、幻想的なその光景はどうにも僕の心を締め付けてくる。この世界は美しすぎる……
 僕は、彼女の庭を歩き回るのをやめた。怖くなったからだ。これ以上美しいものを見続けていても、いつか全て失ってしまう。その喪失感を少しでも軽減しようと思ったのだ。だと言うのに……どうしてこの世界は、こんなにも美しいのだろう。ただその時をじっと待っているつもりだったのに……どうして……
「どうしたん? どうして泣いているん?」
「あ……」
 少女がいつの間にやら、隣に立っていた。
「なんでだろう、凄く切ないんだ……」
「ふうん……」
「僕はこんなにも美しい世界を知ってしまった。それなのに、いつかは帰らなければならないなんて……」
「……」
「だから、本当は今すぐ帰ったほうがいいのかもしれない。これ以上辛くならないうちに。だけど……ギリギリまで見ていたいとも思うんだ」
「……複雑やね」
「ああ……複雑だ」

 それから暫くの間、僕達は二人で水没都市の湖を見詰めていた。少女は何も語らずに、ただ傍にいてくれた。それが凄く優しく感じられて、でもだからこそ涙は止まらなかった。

「……決めたよ」
「ん?」
「君は、僕を元の世界に送れるんだよね?」
「戻りたい?」
「ああ……やっぱり、これ以上ここにいたら辛くなるばかりだから」
「そう……分かった。じゃあ、これをあげる」
 そう言って少女は、いつものように指を宙に躍らせる。するとその手の中に、小さな水晶の塊が現れた。そして少女はその鉱石を、僕に差し出してきた。
「水晶の森で採れる鉱石。お土産にして」
「……ありがとう」
「ほな……覚悟はいい?」
「……お願いするよ」
 少女はゆっくりと、水没都市の方へと歩いていく。よく見ると少女の足は水の中に浸かってはおらず、その水面を歩いているようだ。そしてそのまま、水没都市の真上の湖面まで歩いていき、振り返った。
 湖面の燐光が、少女を中心に強まっていくのが分かる。そして台座の周りにある浅瀬からも、燐光が立ち上り始める。霧状の燐光はどんどん濃くなっていき、少女の姿はもう、そのシルエットしか分からない。
「貴方は私が羨ましいと思った事がある?」
「え? ああ……だって、君は何でも出来るんだろう?」
 少女の声が聞こえてくる。しかし、その声はかなり遠い。
「そう、何でも出来る。この世界では私は自由……だけど、私は貴方が羨ましい」
「なんで?」
「だって貴方は……」
 そこから先は、殆ど聞き取れなかった。

 燐光が視界を完全に埋め尽くし、他に何も見えなくなった。少女の声も、もう何も聞こえない。きっとこの光が止んだ時、僕は……

 ――――

 気がつけばそこは、僕のよく知る世界。城と城下町と祭り会場の広場。だけど……
「グゲゲゲゲ」
「ギヒャヒャヒャ」
 広場を取り囲んでいた街の人達や、儀式の順番待ちをしていた生徒達は皆、魔物へと変わり果てていた。奇妙な色の肌と、大きく裂けた口、血を流し続ける瞳……不気味な声をあげながら、僕を見詰めている。
 これは一体、どうなってるんだ? 祭りの会場がそのままになっているところを見ると、僕は剣を抜いた直後の時間に戻ってきたのだと思う。その後魔王が現れたのだとして、こんな一瞬で世界を変えてしまうことができるのか? それとも……
「ギギギギギ! それを、よこせぇ!」
 近くにいた魔物が一体、僕に向かって突進してきた。僕は思わず剣を構えて切り払う。勇者の剣は魔物の顔を真一文字に切り裂き、鮮血を散らした。
「ギヒャーーー!? い、いってぇええぇぇぇ!」
 魔物……魔物だ。もしかして、最初からみんな魔物だったのではないか?
「て、てめぇー! やりやがったなあああ!」
「調子に乗りやがってぇぇぇぇ!」
 そうだ。だから僕だけが皆に憎まれていたのだ。僕が勇者であるとまでは確信していなくとも、皆はそれを薄々感じていて、そのせいで僕の全てが気に入らなかったのだ。魔物達は、自分達の中に紛れている勇者を炙り出すためにこの儀式を続けていたのだ。そうだったのか……そうだったんだ!
「ギャアアーー!」
「ヒィィィー!」
 僕は勇者の剣を振るい、襲い掛かってくる魔物達を次々と切り捨てていく。なんだ、余裕じゃないか! やっぱり僕は勇者なんだ!
「ケイサツヲオオオオ!」
「イテェエエェェェ!」
 魔物め……魔物め! 死ね、死ね、死ね、死ね、死ね! 死ね! 死……

 ――ガン!

 突然後頭部に激痛が走って……全てが真っ暗になった。

「ひどい有様だ……本当にこいつが一人で?」
「同級生14人を殺傷、か……とにかく、連行だ」
 誰かの声が聞こえる。僕は、一体どうなって……どう、なって……ここは、どこ?

 広場……なんかじゃない。ここは体育館だ。ああ、そうだった。全部夢だったんだなぁ……そうかそうか、よかった夢で……でも、どこから夢だったんだろうな。いや、どこから夢じゃなかったんだろうな。っていうか、夢終わったのか? だって、僕の手にはほら、あの子から貰った水晶があるじゃないか。
「おい、まだ何か持ってるぞ」
「小石? これで殴ったのか?」
「いや、凶器は包丁らしいぞ。でもまあ一応取り上げとくか」
 や、やめ……
「アアアアアアアアアアアアアア」
「お、おい、何かやばいぞ……持たせといた方がいいんじゃないか?」
「あ、ああ……」

 夢だ……夢だった。綺麗な……夢だったなぁ……だからもう、この現実から、覚めたいよ……ずっとあの夢を、見ていたいんだ。


21, 20

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