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エリ・エリ・レマ・サバクタニ [24524] [63] みせろ! <2023-05-06 17:40:56> aVP12jz0S

【外伝小説】
『Funny Bunny』
Part1

 的間 トマという名前。
 名前、もとい仮名、更に引いて言うならば、的間 トマというかりそめの姿。
 彼女がその「かりそめ」に至った理由とは、一体、何なのか。

 平日の午後(アフタヌーン)。都内のカラオケボックスの、小汚い一室。
 ぞんざいに盛られたポテトの一つをつまみながら、ふと、なんの気はなしにクロエが訊いた。

「なぁ、レ……トマ」

「お前、次レコって言ったらぶっ飛ばすぞ」

 足を投げ出したままスマートフォンを弄りつつ、生返事気味に返すトマ。騒々しいコマーシャルの渦中でも、尚、存在感のある声だと感心するクロエ。成程。この友人には、改めて不思議なカリスマ性がある。それならば、尚更どうして「的間 トマ」を纏うのか?

「レコの方が自然やんか。本名は兎隠 玲子(トガクシ レイコ)やもん」

 返事の代わりに、脛を打つ蹴り足。
 相変わらず視線はスマートフォンのまま、素行の悪さも昔ながらか。クリームソーダの底を吸いながら、仰々しく縮こまってみるものの、やはり反応はない。

「お前さ」

「はいな」

「Vの本名を軽率に口走ると戦争だぞ」

 漸く能動的に口を開いた。怒られた。
 どうやら禁忌に触れてしまったらしい。素知らぬ顔で視線を逸らすクロエ。

「何で戦争なのん」

「うるせぇなあ、テメェシスターなら1ミリでもいいから淑やかにしとけよ」

「はいな」

「ンだ、そりゃ」

「淑やかのポーズ」

 手を猫の手の形にしてポーズを取るクロエへと飛ぶ、2度目の脛蹴り。足癖と素行とは比例するものである。足を洗う、という行為が難しいものなのだと実感させられる「小悪党」の一挙一投足だが、当のシスターはさほど気にした様子もなく、淑やかさとはかけ離れた大口で、臆面もなく不味いナポリタンを貪る。

「なーなー。トマさ、悪い事やめる約束したやんか。ウチと。アカンよ」

「テメェの説教はどうしていつもこう藪から棒に飛び出してきやがるんだ? あ? そしてどっからその説教をひり出してんだよ? 顔面に貼ッ付いた肛門か?」

「質問が多い。もぐもぐ」

 努めてわざとらしく、さも重苦しいため息を一つ。再びスマートフォンへと視線を移すトマ。午睡というには喧しく、ただの騒々と形容するには制御が難い。思えば厄介な拾い物をしたものだ、という後悔は既に遅く、悩みと苛立ちは募るばかりである。

「ポテト食べたら。ケチャップ付けて」

「アタシがトマト嫌いなの知ってて言うのか、それ」

 小悪党の受難は続く。

Neetsha