GUNSLINGER GIRL
メディアワークス刊。作者:相田裕
舞台となるのはイタリア。社会福祉公社という政府系機関に引き取られ、対テロ諜報機関の一員として働く少女らの物語。社会福祉公社とは、表向きは重病・重傷患者を引き取り彼らを治療をしながら福祉活動に従事させつつ社会復帰をさせるため政府の福祉機関であるが、その実態はテロや大掛かりな犯罪の情報を事前にキャッチし犯罪を未然に防ぐことを目的とした機関で、時には政府関係者の依頼によって暗殺を行ったりもしている。
引き取った少女らには義体化、すなわち筋肉や骨格の補強・交換による強化手術を行い、薬品による「条件付け」と呼ばれる洗脳を施し機関の一員として仕事に従事させている。重傷・重病患者を義体化するのは単なる肉体強化だけでなく、義体化技術の医療分野への転用を見越した実験目的もある。少女に限定しているのは敵を油断させやすいからである。
洗脳だの義体化などと聞くと相当アレな雰囲気が出るが洗脳はあくまで記憶の消去とある程度の仕事・教官への忠誠を植えつけるためのもので、普段の少女らは「ごく普通の少女」である。
登場人物
- ヘンリエッタ 担当教官:ジョゼ
- 一家惨殺事件の被害者であり唯一の生き残り。比較的無口だがジョゼをかなり慕っている。
- トリエラ 担当教官:ヒルシャー
- スナッフムービー(殺害映画)の撮影に使われ瀕死だったところを救助される。理性的で優秀。銃器の扱いだけでなく格闘にも慣れている。
- リコ 担当官:ジャン
- 生まれつき全身麻痺だったが公社に引き取られた。自由な身体を手に入れられたので公社の生活をとても気に入ってる。唯一過去の記憶を持っている義体らしい。
他にも主要キャラはいる。
内容
絵を一見すると萌え漫画に見えるかもしれないが話は結構シリアスで非常に落ち着いている。 この作品において主眼となるのは登場人物達、特に義体と教官らの互いの関わりにおける葛藤や成長といったもので、話が流れる中での義体らの変化、その過程を描いている。ヘンリエッタ・ジョゼを中心にそれぞれのペアの話が描かれ、そのそれぞれの話がうまく流れとしてつながるような工夫がされている。ストーリーは結構先まで考えているようだ。
また絵が非常に丁寧で、建物の描写が精巧で臨場感があふれる。描かれる場面が元々美しい場所が多いのでずいぶんきれいに見える。人物絵については微妙なところだが。
基本的には仕事をしつつ話が進むのでガンアクション描写もあり、いろんな銃が出てくる。 一方で美しい風景を描き上品な雰囲気を出しながらも、他方では暴力と犯罪にあふれたイタリアの姿を描くこの対比もまた面白い。
設定やその内容から「少女に銃もたせたいだけだろ」とか「美しけりゃ何でもいいのかよ」といった批判があり、嫌う人は多い。しかし同時にそのストーリーにおけるドラマ性や繊細な空気を評価する人もおり、評価が二分される。似たようなことは漫画家「高橋しん」にもいえる。彼もまた作品の設定とテーマ、その描き方から評価が真っ二つに分かれる。まぁまだあっちのほうが評価できる点は多いだろうが…
とりあえず批判はされやすい作品である。
新都社においては猫田イスキーが大のファン。また秋刀魚も購入しているらしい。