「そういえばさ、聞いたことあるか? マックってミミズの肉でハンバーグ作ってるらしいよー」
きょうこが突然おどろおどろしい口調でいう。この手の都市伝説はいつだって刺激的だ。
「ミ、ミミズ! ば、ばかだなあ……そんなモンでハンバーグ作れるわけ無いじゃん……いやだなあ……」
鈴はそんなふうに平静を装って否定するが、よくみるとその手に握られているハンバーガーが少しひしゃげている。
「……でも実際のところミミズの肉は食用に優れているらしい……。栄養価も高いし飼育も簡単……未来の食用肉ってなんかの本でよんだことある……かも」
「なんの本だよー。でもまあ実際このやすさはミミズでも使ってないとできないような気もするよなー。100円で牛肉とパンと、ケチャップとピクルスは買えんだろー」
たどたどしくはあるが化学的、経済的な後押しを受けてハンバーグミミズの肉説はさらに信ぴょう性を増して行く。
「あんまりハンバーガー食べてる時に聞きたい話じゃあないわねぇ……」
サヤのまっとうな意見に、もっともだ、と鈴も頷く。
「……昔読んだ漫画の話なんだが……、その話では少年院で受刑者がミミズの飼育をさせられているんだ……。そしてなにか問題を起こすと受刑者はミミズの風呂に突っ込まれて罰を受けるって言うひどいストーリーだったよ……」
発言した真奈以外の三人の表情が曇る。あまり想像したくない光景を想像させられ、しかもくだんのハンバーガーを食べている鈴にとっては尚更気分の悪い話だろう。
「……何がすごいってその話が少女漫画に掲載されたってことだよ……。他の恋愛漫画との温度差や絵柄の差がひどかったね……すごく面白いんだけどさ」
「ま、まじでかー。そんなシーンがある少女漫画とか想像もつかないな。編集部もよく載せようと思ったもんだ」
「……ほんとにね。花とゆめの編集部は英断を下したもんだよ。……他にも宙ぶらりんにされて、野鳥につつき殺される刑とか、24時間ライトをガンガンに照らした部屋で、一切の睡眠を取らせずに働かせるとか……とんでもない話の連続なんだ」
「ち、ちなみにその漫画のタイトルは?」
いい調子で話し続ける真奈に鈴が質問をぶつける。
「……スケバン刑事」
「古っ!」
三人の声がハモった。