Neetel Inside 文芸新都
表紙

どうしてこうなった。一体どうするんだ
第二話 彼女

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 日もすっかり暮れた街を五分ほど歩くと、僕は目的の場所にたどり着く。そこはコンビニエンスストアであった。
 この時間だというのに閑散としている店内で、適当に選んだコンビニ弁当を二つかごの中へ入れ、僕は雑誌に目をやった。無論食料品の他にも買いたい物もあるが、残念な事にそんな物を買う経済的な余裕はないのだ。いたしかたなく、少し立ち読みするだけで我慢する事にした。そして会計をするためにレジへと向かう。
 僕がここに立ち寄るには二つの理由がある。一つは毎日の生活するために必要不可欠な雑多な物をここで買うからである。二つ目の理由は、今僕の目の前にいる女性店員にある。

 彼女の名前は志田恵子といってなめらかな長髪で清楚な雰囲気を醸し出している。彼女は僕と幼稚園、小学校、中学校、高校が一緒という世に言うおさななじみである。全く、理想的な男女関係だ。
 彼女の家はコンビニのフランチャイズ店なのである。彼女は暇な時にはこうしてコンビニを手伝っている。どうやら、この店の経営は余り芳しくないらしいのだ。 そうこうしているうちに彼女は僕に声をかけてきた。
「中田君、今日もうちのコンビニによってくれたの? 」
 俺は笑いながら答えた。
「もちろん、決まってるじゃないか。いつも来てるよ」
 そう返答するのを聞いて彼女も白い歯を見せた。そして気恥ずかしそうにこう言った。
「ちょっと、待って。お父さんに休憩の許可を取ってくるから」

 そう言っておくに引っ込んだ彼女は、数分後にコンビニの制服を脱いで父親と一緒に出てきた。彼女は父親は苦笑いをして僕に会釈をしてくる。僕も会釈をした。そして彼は娘にこう言った。
「ちょっと、これでも持っていきな」
 僕たちは仲良くコンビニを出た。

 僕たちは二人で夜道を歩いた。数分ほど歩いて、ついた先は公園だった。ここは僕たちが幼い時によく遊んだ場所である。幸福な思い出がたくさんある場所だ。幸いな事に先客はおらず、二人だけでこの空間を独占する事が出来た。
 二人でベンチに座り、身を寄せ合った。夏に近づいてきているので、彼女の体温がとてもあつく感ぜられる。しばらく、二人でたわいない会話を交わした。僕はこの時間が非常に好きであり、同時にとても短く感じる時間でもある。
 そんなうちに彼女は思い出したようにビニール袋の中からよく冷えた炭酸飲料の缶を取り出し、僕に勧めた。僕はふたを開けつつ、冗談まじりに言った。
「おいおい、大丈夫なのか。店の物なんだろ」
 彼女は微笑を浮かべながら答えた。
「大丈夫だよ。少しぐらい平気なんだから。それにとっても美味しいんだから」
 僕は缶を傾け、炭酸飲料を口の中に押し込んだ。爽快感が感じられ、甘みが味覚に押し寄せる。
「確かに、とっても美味しいね」
 彼女は笑顔で頷いてこう言った。
「ねえ、誠君。一口ちょうだい」
 ビニール袋の中にはもう一本炭酸飲料が入ってたはずだが、彼女はわざわざそう言ったのだ。僕は彼女に缶を手渡した。二人で回し飲みしているうちに炭酸飲料は底をついた。
 二本目を飲もうかななどと思案していると、彼女が寄りかかってきた。僕は、至福のあまり思考が停止しかけたが黙って手を彼女の方に回した。
 やがて、見つめ合った僕たちは長く接吻した。そしてそれを何度も繰り返した。気がつくと、彼女はうずうずしだしていた。僕は彼女の頭をなで回しながら、提案した。
「そろそろ行こうか」
 彼女はうっとりした目で僕を見つめながら無言で頷いた。

 このあと、彼女は父親に電話して帰るのが遅くなると伝えた。そして僕たちは手をつないで夜の歓楽街へと向かった。
 この後に何を起こったのかを言うのは無粋だろう。また、言わなくても分かる事である。

 

       

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