Neetel Inside 文芸新都
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どうしてこうなった。一体どうするんだ
第三話 勘違い

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 というような事を思案しながら、僕はコンビニから出て帰路に就く。本当に現実がそのようなものであれば、どれほど良いかと僕は想像し終わったあとにつくづく感じた。
 一体全体、どこまでが真実かというと彼女が僕に話しかけてきたところまでは真実だった。そして、彼女が僕の幼なじみであった。というのも真実である。そう、過去形なのである。だからといって、彼女と僕は恋仲になったというわけでは決してない。つまり、幼なじみの仲睦まじい関係から、何をどう間違ってしまったのか、ただの知り合いの関係に退行してしまったのだ。
 どうしてなのか、その理由を僕は何万遍も自分自身に問うた。様々な理由が出てきたが、結局僕の脳内会議は、侃々諤々の論争の末こう結論づけた。僕、中田誠には勇気が決定的に不足していたのだと。

 もし、僕が体中からなけなしの勇気をかき集め、彼女に告白したのならきっと成功しただろう。客観的に考えてそうだ。何故なら、彼女と僕は小学校まではよく二人で遊ぶ事があったし、中学校のころにも二人っきりで遊んだ事が数回はある。また、多人数で遊んだことといったらキリがない。
 その時に、告白してしまっていたら僕は、きっとこのような苦境に陥っていなかっただろう。精神は安定し、学業でも成功したはずだ。そして、見事一橋に合格したはずだ。

 彼女に恋人がいるという事実を知ったのは高校二年生の頃だった。よくよく考えてみれば当たり前の話だ。彼女は僕の贔屓を抜きにしても十二分に美しい。修学旅行の夜に、女子の評価を皆で下したものだが、彼女の評価は高かった。まあ、仲には地味などと、的外れな論評をした愚物もいたが……。僕はその男に滔々と彼女の崇高さを教えてやろうかと思ったが、無駄だと思ってしなかった。説得にはある程度近いレベルの知能が必要なのではないかと僕は思う。例え彼を説得しようとしても理解できなかっただろう。それにもし喧嘩になれば僕には一分の勝ち目はなかった。昔から腕力にはてんで地震がないのだ。話がずれたが、要は彼女によからぬ男がよるのはごくごく当然のことだったのだ。

 しかし、僕はそれでも別段気にしてはいなかった。何故ならば、彼女と一番親しいのは僕に違いない。という自負があったからだ。確かに、それはそうだっただろう。
 だが、その地位に僕は甘んじてしまった。それに、高校に入るとだんだんと親しくなくなっていってしまったのである。環境が変わり、それまでは普通に彼女に接していたのだが、それが出来なくなったのだ。これまでは、彼女が学友と話していても、気兼ねなく割り込めたが、そうはいかなくなった。何しろ彼女の周りに陣取っていたのは僕とはあまり面識のない女性達である。元来、気弱な性格の僕は飛び込む事ができなかった。
 そして、僕と彼女はだんだんと疎遠になっていった。遊ぶ事もなくなった。恥ずかしくて声をかけられなかったのだ。この傾向は中学に入ってから続いていたが、高校に入ると結局一度も遊ばなかった。
 
 だが高校二年になり、僕はさすがにこのままではいけないと感じるようになった。そして、彼女の誕生日の少し前に彼女に連絡を取った。携帯の電話番号と、メールアドレスはお互いに知っていたのだ。僕は彼女を誕生日祝いの食事に誘ったのだ。首尾よく言ったら僕は告白する気でいた。
 だが、しかしそこで僕は思わぬ事を告げられた。彼女はその日はもう用事があると言ったのだ。僕が
「友達と誕生日パーティーでもするの」
 とのんきに尋ねると、彼女は気まずそうにこう言った。
「ううん、違うの。今、付き合っている人がいて……。その人と」
 僕は衝撃を受け、思わず携帯電話を落としそうになった。が、なんとか気を確かにして彼女と話を続けた。
 そこで得た情報を情報をまとめるとこういう事だ。彼女がその男と付き合いだしたのは高校二年の春頃。彼女の誕生日は冬だからその時点で付き合って一年近くになる。とても優しくて明るい人だと彼女は言っていた。さすがに誰と付き合っているかまでは言わなかった。だが、結局僕は付き合っている男を知る事になるのだが……。
 やはり、何といってもこのようなことは男性である僕がエスコートすべきだったのだ。僕はひどい勘違いをしていたのだ。自然とそのような関係が成立する事など、冷静に考えればあり得ない事だった。思えば、さっきもそうだった。彼女がせっかく僕に声をかけてきたのにも関わらず、僕はたどたどしく返事をしただけだった。これではどうしようもない。

 そんな事を思索しつつ、肩をすぼめて歩いていると僕は自分が大分歩いた事に気づいた。さきほどの妄想、いや想像の中で出てきた公園が目前に迫ってきた。位置関係を説明すると、この公園は僕と彼女の家の中間地点ほどに位置する。ちなみに僕と彼女の家との距離は五、六百メートルほどある。

 このまま直接帰っても別に構わないのだが、僕はなんとなく公園に踏み入った。過去の記憶に浸りたかったのかもしれない。まあ、長時間滞在しない限り大丈夫だ。別にあの人は死にはしないだろう。いつものように文句をたれるかもしれないが……。

       

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