Neetel Inside ニートノベル
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凛としてアナルファックピストルズ
練習後スモークタイム

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「最近見つけたSilver Applesってバンドの"You and I"という曲にはまってる」

「60年代のアメリカの2ピースね。サイケデリックエレクトリックの祖と言われてるわね」

 シンセ&ヴォーカルとドラムという変わった編成なのも面白い。


 †


「編成といえば、ツインギターの上手ギターと下手ギターは、上手い方が上手を担当するものだと思ってた時期が僕にもありました」

「あるある」

「あれは上手と書いて『かみて』と読み、舞台の右側という意味なんだね」

「下手は『しもて』、日本の演劇や舞台用語ね」

「バンドなんかだとリードギターがカミテを担当することが多いからそう勘違いすることも無理もないんだけど、シャムシェイドなんかはDAITAがシモテを担当してたり必ずしも技術は関係ないみたいね」

「DAITAさんってやたら評価高いけどそんなに上手いの?」

「日本人で初めてG3に参加したギタリストだよ」

「G3?」

「ロックギタリストの饗宴という体のイベントさ。まぁDAITAの出演は日本公演のしかもゲスト扱いだから公なメインという訳ではなかったみたいだが。ちなみにその時のメインアクターはジョー・サトリアーニ、スティーブ・ヴァイ、そしてDREAM THEATERのジョン・ぺトルーシ。超がつく程の大物ギタリストたちだよ」

「ゆとりJKの私にはイマイチ分かり辛いラインね」

「分かりやすく例えるならサルーインとオメガウエポンとデスタムーアが共闘する感じと思えばいい」

「ああ、なるほど」


 分かるのか。


 †


「カミテとシモテの話といえば、ちょっと気になったことがあって」

「どうしたの」

「ロックバンドのステージってさ、ギターとベースの位置が「右にギター、左にベース」って構成されてるじゃん」

「そう言われれば9割方以上はそうね」

「なんでなのかなって」

「というと?」

「クラシックのオーケストラを見てみなよ。オーケストラではシモテから順に高音楽器、つまり左側からバイオリン、ビオラが並び、右にチェロ、一番右に低音楽器のコントラバスがくるだろ」

「高音担当と低音担当の位置がバンド形式とは逆なのね」

「そうそう。一時期すっごい気になってさ」

「ふむ」

「結構調べた結果、『指揮者から見て、オーケストラの楽譜の並び順通りに把握しやすいように配置』していたということが分かったのよ」

「ほうほう、なるほど」

「それはまあ納得いったんだ。目から鱗というやつさ」

「良かったじゃん」

「じゃあなんでバンド形式はいつもベースはシモテにあるの?」

「むふぅ」

「ってなるわけよ。ちなみにこれはどれだけ調べても分からなかった」

「なんでやろなぁ…」

「3ピースバンドでは稀に上手にベース、シモテにギターボーカルという形式は見ることはあるが…一般的な法則らしい法則は無さそうなんだよな、これが」


「なぁ、ひとつ聞いてええか」

「なんや」

「前回までの話はどないしたん」

「あ、ただジャズセッションなんかではアコースティックベースがカミテに立ったりするよね。これは実は『ドラムからベースを見やすい位置だから』なんだ。セッションに於いてドラムとベースはリズム隊として息を合わせる必要性があるから、お互いが見える位置同士にしてるんだって」

「君、相変わらず人の話聞かないよね」

「所詮僕らにシリアスなんて無理だったんだ。…尻ASSの方がお似合いさ」

「なんというアナル感漂う言葉」

「アナル感てなんだ」


 だって僕らはアナルファックピストルズ。
 学生の時、凛として時雨のコピーバンドのバンド名を
 「凛としてアナルにしよう」と推したら人格ごと否定された甘い思い出。
 僕らはアナルファックピストルズ。
 薀蓄だけで暮らす日々。

 凛と咲いて。



 豆知識だが欧米だと観客から見て舞台左をライト、右をレフトと呼び、舞台上の演者視点になっている。つまり観客席視点から見る日本の感覚とは逆。
 上手下手の呼称については古来の日本文化では「身分の高いものは右に、低いものは左に」という風習があり上座、下座という言葉もあり観客視点からこれに則したものと思われるが未確認。

       

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