早く早く、負け犬の裏庭で
2人のうちの1人分
ここは誰にも出来ない
話をひそひそ声でするところ
カーテン閉めて、
夜が逃げないように。
リコリスの入った飴をなめて
喉をなめらかにしたら
二人でちょっとずつ
砂をさらって探しものをする
私が爪先でつついて転がした
舌触りの良すぎる言葉が
そっと膨らんで戻ってくる
ねえ、
空から降りてくる
気球みたいに大きくて素敵なものを
私たちは自転車を漕ぐみたいに必死に
浮かび続けさせようとしてた
続く時間のことなんか知らないふりをして。
*
白いミルクみたいな夜が
注ぎ込まれてきたら
レコードが終わるのにあわせて
私たちはお互いに隠していた爪を研ぎ始める
一昨年できた君の背中の大きな傷の
裂け目から中に
入り込もうとして
拒まれて
ぎこちない夜、
まもなく世界がやわらかく
ハレーションを起こしてゆきます。
*
報われないほうが嬉しくて、
不埒なほうが正しくて、
愛される条件を百個並べては
テーブルからはたき落として、
傷とも呼べない半端なほころびを
さらしてみたり隠してみたりで、
ほんとうにほんとうにほんとうに
子どもだったの私、
さびしくてさびしくてさびしくて
千切れそうだっただけなのって、
囁く声の拭いきれない欺瞞を
受け止める覚悟ができたら、
オルゴールのねじを巻いて
その仕掛けがやわらかく夜を刻んでいくほんの手前の、
一瞬の空白で
全部が動き出すのを悟るのだ。