西沼ガチバトル
やったぜ西沼!!
ついにやってきた!
年に一度、あるかないかの伝説の祭日。
西沼商店街通り恒例、ストレスファックなカーニバル。
西沼☆バトル(フェスティバル形式)
「いやー、やっと! ですね」(49歳自営業の男性)
「今回は秘策があるんですよ……、ふふふ」(32歳自営業の女性)
「三年だよ!? ねぇ三年、三年!」(自称三年生の女性)
「……カツ! ……レツ!」(26歳自営業の男性)
ここで西沼町内会の方に話をお伺いしたいと思います。
久米会長。
「あー?」
久米会長は今年108歳という訳ですが。
まだまだ元気に町内の行事を執り行っている訳ですが。
今回のこのバトルロワイヤル、実に三年ぶりの開催となる訳ですが。
そこの所どうなんでしょう?
「あー? あぁ……」
なるほど。
では、九月四日仏滅の日に、また会いましょう!
さよーならー。
「はい、さようなら」
魚屋を営む41歳、内海ぎょ太郎は自分が映っていない事を確認すると、テレビデオの[録画/録画停止]を押してから、VHSを取り出した。
「三年……か」
西沼☆バトル(フェスティバル形式)は大正十六年から続く西沼町の伝統行事だ。
ルールは簡単、団子を集めること。
参加資格は単純明快、団子を保管する袋を用意出来ること。
「さて……今年は何人、最後まで立っていられるのか」
広瀬ぎょ太郎、無類の強さを誇る商店街最強の中年である。
一見卑怯にも思える戦略で、数々の修羅場を乗りこなしてきた。
しかし、悲しい事に未だに勝利した事がなかった。
「ふっふっふっふ……」
どうしたら勝ちなのか、そもそも判っていなかったからだ。
「また勝っちゃうよーん」
しかも勘違いしていた。
目っからブー! 目っからブー! めかぶのメッカだ! 目っからブー!
西沼商店街。
地元局がCMを流すと同時に、別の場所で放送を見ていた肉屋の店主が喉を鳴らして唾を飲み込んだ。
「奴が……」
息子の為に買ったオモチャ、『理科ちゃん人形 献体解剖ハウス』を提げて薄型液晶ディスプレイを物色していた中筋きんの助は、偶然とも必然ともつかない必然に導かれ、祭りが開かれる事を偶然知った。
「奴が……来ちゃうッ!」
あまりの衝撃に足は内股になり、両手を口元に当てて動けなくなってしまった。
提げていたオモチャを親指に引っ掛けたままだった所為かどうかは知らないが、勢い良く宙に浮いた重厚な化粧箱は、振り子となって腹をジャストミートした。角だ。丁度良い具合に角がジャストミートだった。それ以外の表現方法などありはしなかった。
蛍光灯の光が目に悪そうな電気屋の倉庫で人が飛んでいた。
彼女は女性だった。
「今度の私は一味違う筈!」
彼女の足元には様々な工具が広く分布していた。こんな目がチカチカする場所で、作業をしていたら、きっと目が悪くなってしまうに違いない。
だがしかし、彼女は生粋の2.0。視力が落ちた今でも1.0を保持していた。
「鳥の様に舞い、くらげの様に刺す!」
その瞬間! 彼女の髪が背中の装置に巻き込まれて凄い事に!
西沼☆バトル(フェスティバル形式)開催まで、後いくばく。