Neetel Inside 文芸新都
表紙

アサシーノス
殺し(仕事)

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「ほらほらぁ~ 鼻から思いっきり行け!行くんだ!」

酒場デウスデッチで開催されていたドラッグパーティーはかなり和気藹々としていた
机の上にばら撒かれたクラック・コカインの粉を鼻に突っ込んだストローで吸い上げる大学生やサラリーマンたち
その度に彼らは、力が抜けたように爆笑し、薄笑いを浮かべていた…

「あぁ~~~~~もぉ~~~最高ぉ~~~っ」

「ははははは なんか ラスベガスにいるみたぁ~い」

「あははは 宝石にかこまれひぇるみたいだぁ~あぁ~~あ~~~」

クラックがもたらす不自然な高揚感のせいか、参加者たちはかなり有頂天になっている様子だった
水パイプから生じるクラックの気化ガスを吸いながら、ニヤニヤと不気味な笑顔から覗く目は
もはやこの世を見据えているようなものではない
まるで別世界のものを見つめているような
恐ろしさを秘めていた…

「どんどん吸えよぉ~ 山ほど持ってきたからなぁあぁ~~あァ~~~~」


このパーティーの主催者と思われるパーマヘアーの男が
ヘラヘラと笑いながら床に置かれている無地の袋をつかみあげた…
この男こそ少年の標的ホベルト・サントスである…

ホベルトは掴み挙げた袋の口を開けると、机の上に中身をぶちまけるように逆様にした
机の上にぶちまけられた中身はコカイン、マリファナ、LSD、覚醒剤などのドラッグ袋であった
袋の中には破れて中の粉が噴出しているものも見えるが、
ジャンキーと化した参加者達にとってそんなことは
最早微塵も気に留めることではなくなっていたようだ
まるで、肉に群がるサメの群のようにドラッグ袋にジャンキー達は群がっていた

「おっと~ 押さない押さない~!
 あんまり吸いすぎると身体に毒だよぉ~」

ホベルトはそうやって金持ち達の気を遣うフリをしながらも、
内心、連中を馬鹿にしていた

(クックックッ…金づる共が~ どんどん廃人になりやがれ 
お前等をダシにじゃんじゃん儲けてやるぜ)

パーマヘアーの男は麻薬に溺れる金持ち共を完全に卑下していた
この金持ち共…普段はスラム在住の自分を見下しているくせに
麻薬を買う時だけは擦り寄ってくる…
彼にはそういう連中の都合の良さが気に入らなかった

(まあ、いい 俺は麻薬を捌いて金を稼ぎたい
そのためなら大嫌いなてめえらも利用する それだけのことだ)

ホベルトは心の奥底で納得するのだった
部屋にはべレッタや、タウラスなどの9mm拳銃や、
MAC、UZIなどのサブマシンガンを持った
ホベルトの部下達がパーティーを警備のために見守っていた
だが、彼らもパーティーの席ということもあってか
時々カウンターのバーテンにドリンクを頼み、
それなりにくつろいでいた


少年は、ホベルト達のいる部屋まで続く廊下を歩いていた
日頃の癖だろうか…少年は一歩一歩 音を殺して歩いていた
それは少年が日頃から暗殺業を生業とする人間であることを証明していた

少年の右手がホベルトの部屋の扉をコンコンと叩くまで
誰も少年の接近に気付かなかった

「誰だ?」

突然 部屋の扉を叩く人物が現れたことに少し驚きながらも
ホベルトは部下のマヘクに応対を命じた

「出てこい マヘク」

マヘクはべレッタ9mm拳銃を愛用しているが、ホルダーを持たず、
ズボンの中に銃口を突っ込んで収納する悪癖があった
いわば銃が腹とズボンに挟まれている形だ…
前々からホベルトは危険だからやめろと忠告したものの
一向にその悪癖を直そうとしないため、遂に根負けし、
そのままにさせていた…

もし、ホベルトが部下マヘクの悪癖を直そうと
懸命になっていたならばもう少し彼の寿命も延びたかもしれない
だが、もう後の祭りだ

マヘクは部屋の扉(引き戸になっているため、右にスライドさせる)を
ゆっくりと開けた……ドアの陰から見覚えの無い金髪の少年の顔が覗く

その瞬間……
「誰だ? てめえ」という台詞を吐こうとしたマヘクは凍りついた
少年はマヘクのズボンに挟んでいたべレッタ9mm拳銃に手を伸ばし、
それを奪い取ると、マヘクの腹部に向けて引き金を引いた

「ごうッ!!」

僅か1秒にも満たない瞬間の出来事だった
皮膚、腹膜、胃が血と共に弾け飛び、マヘクはその場に力なく崩れ落ちた

「きゃあぁぁぁあああぁぁああっっ!!」

「おわぁああああぁぁぁああああああっ!」

薬のもたらす高揚感で昇天していた筈の金持ち共も
突然の銃声に目を覚まし、パニックに陥ちながらその場にしゃがみこんだ

「野郎っっ!!」

とっさに部屋に居たホベルトの部下が4人
少年に応戦しようと銃口を向けてきた
発砲した銃弾をかわしつつも、
少年は銃を向けてきた順に9mm弾を叩き込んでいき、
4人を返り討ちにした

「んげあッ!!」

「ぅああッ!」

「んぐうッ!!」

うめき声をあげながらも倒れていくホベルトの部下達…
その内の2人が机の上に背中からダイブした 

「んぐぎゃ…!」

2人が倒れこんだ衝撃で、酒瓶やコップが粉々に割れる…
破片となったガラス、陶器や、中に入っていた液体が
飛沫を上げて飛び散った…

「ちきしょう!」

ホベルトが後ろのソファーの背へと飛び込むように隠れたと同時に
彼の隣にいた金持ちの女二人がは流れ弾にあたり、血を噴出し、絶命した
いや、流れ弾ではない…少年はその他の金持ち達にも発砲していた

「皆殺しにする気か! クソッ!」

粗方、ある程度の敵を一掃し終えたのを確認すると
少年は部屋へと足を踏み入れた

「死ね!!」

少年が踏み込んだと同時に、彼の左側からホベルトの部下一人が
グロック9mm拳銃の銃口を少年の頭部に突きつけながら飛び出してきた
当然の如く、拳銃はマズルフラッシュを噴き出した
だが、そこから発射された銃弾は、少年の頭部を貫くこと無く空を切った

「ぐあッ!!」

少年は銃弾が発射されると同時に左手の手刀を奴の右手の肘を壁に
叩きつけ、弾道を逸らした
そして、右手に持っていたべレッタ9mm拳銃を奴の胸のド真ん中に
密着させ、引き金を引いた

「ぐぉあッ!」

僅か2秒弱の出来事であった

だが、少年はまだ安心できなかった
ホベルトが隠れたソファーの壁から
UZIサブマシンガンを装備した敵がこちらに猛攻撃を仕掛けてきた
発射される何十発もの9mm弾の嵐が近くの酒瓶やコップを
粉々に砕き、壁を粉塵へと変えていく
普通の人間ならひるんでしまうほどの激しい攻撃である
だが、少年はひるむどころか反撃に転じた

まず、先ほど倒した敵の右手のグロック9mm拳銃を左手で拝借した後、
中腰になりながらも後ろを向いて回転し、その勢いで
敵の正面に立った そして、右手のべレッタ9mm拳銃と左手のグロック9mm拳銃で
9mm弾の集中砲火を浴びせた

「ぎアッ!!」

チョウ・ユンファを髣髴とさせるほどの
二丁拳銃による激しい猛射撃の嵐を全身に受け、敵は反撃をするどころではない
ただ苦痛に顔をゆがめ、全身の傷口から血飛沫を噴き出しながら踊り狂った
撃たれた衝撃でマシンガンの引き金に指がかかったままだったせいか、
天井が流れ弾で穴だらけになっていく
マシンガンの敵は
ゆっくりと巨人に前から床に押さえ込まれるかのように
背中をつけるように仰向けに倒れこんだ

スライドがカチンと音を立て、弾切れを知らせる
それと同時に少年は両手のグロック9mm拳銃、べレッタ9mm拳銃を
そのまま床に落として捨てた

「くッ……!!」

まるでそのタイミングを見計らったかのように
ソファーの陰に隠れていたホベルトが反撃のために飛び出してきた
落ちているUZIサブマシンガンを拾おうとしての行動だった

しかし、その行為は大変愚かと言わざるを得なかった
彼には運が無かったのだ…AKアサルトライフル並の強靭さを誇る
UZIサブマシンガンには縁が無い筈のジャミング!!

それが今、起こったのだ…

「ッ……くそッ!!」

これでは発射できるわけがない

ホベルトは直ぐに排莢口を引き、9mm弾の排莢を行った
その刹那、少年は足元に目をやった
先ほどテーブルの上にダイブした敵兵の一人の左手から滑り落ちた
銀色のタウルスPT92拳銃…・・・それが視界に入ると同時に
少年は銃口の先端に右足のつま先を引っ掛け、リフティングで宙へと蹴り上げた
蹴り上げたタウルスが右手の掌に
吸い込まれるように昇って行った銃は
彼の右手へと吸い込まれ、当然の如く握られた

少年の人差し指によってタウルスの引き金が引かれた時、
ホベルトは排莢を終えたばかりだった
となれば結果は見えている

「かぉッ!」

発射された1発の銃の9mm弾がホベルトの喉仏を貫いた
間髪入れず、少年はホベルトの首、胸、腹へと次々と弾丸を叩き込み、
致命傷を負わせていく
次第にホベルトの身体はそのまま天井を仰ぐように仰向けに倒れていった
だが、それでも少年は銃弾を叩き込み続けた
もはや 血塗れの肉人形と化したホベルトに、呻き声をあげる生命力など
残っていよう筈もなかった
もうホベルトの目は生者のものなどでは無く、
力なく視線の先を見つめるだけの死者のそれであった…

「……………………」

ホベルトを討ち取った後、彼は無表情のまま
歩を奥へと進め、ソファーの裏側を覗き込んだ

「ひぃっ……!!」

「たっ……たすけて!お願い!」

少年の目に映ったのは逃げ遅れた金持ちたちであった

「オレたちは……ギャングじゃない!ただの学生だ!助けてくれ!」

彼らは両手を合わせ、少年に向かって命乞いをした
その姿はあまりにも惨めだった 自分から犯罪に手を突っ込んでおきながら、
いざ自分の命が危うくなると命乞いをする

そんな彼らに無言のまま呆れるかのように、少年は彼らの額に銃口を突きつけた

「ひぃぃっ……!!」

「一人も逃がすなって言われてる」

少年は引き金を引いた


噴出す血の鈍い音と銃声が混じり合い、少年の顔が返り血で染まった


       

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Neetsha