Neetel Inside ニートノベル
表紙

パンチラ同好会
十四話「胎動」

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「その……忘れ物しちゃって……で、先輩はなにしてたんですか?」
 素直に言うべきか、否か。
「……そう……じ……、そう、掃除してたんだよ……」
 ジトーッとオレの顔を見るミカちゃん。
「掃除ですか……へぇー。ここの掃除はわたしのクラス担当なんですけど……先輩、なんか嘘ついてませんか?」
「……あ! そうだ、みかちゃん! 今から一緒に帰ろうか!」
 話を誤魔化すためとは言っても、最悪のごまかし方をしてしまった……。
「まあいいですよ……」
 そのジト目辞めて! ビクンビクしちゃうから!
 駐輪場に行って、自転車を取り、オレは自転車を引きながらミカちゃんと駅まで行くことに。
「そういえばミカちゃん、スカート長くしたんだね」
「先輩……それ、休み時間に言ったんですけど……聞いてなかったんですか?」
「あれ、そうだったけ……? ごめん、なんかぼんやりしてたみたいでさ!」
「先輩、なんか元気ですね。でも、なんか落胆したようなカラ元気ですけど」
「うん? まぁ、いろいろあってね」
「そうですか……。あ、もうここまででイイですよ!」
 あらっと前を向くと駅があった。いつの間にかに駅まで来ていたらしい。
「うん……じゃぁ、また明日」
「はい、先輩」
 デフォルトスカートを履いたミカちゃんはカバンから定期を取り出し、改札の先へと消えていった。

「――てなわけで、見れなかったよ」
<やっぱりな>
『非常用階段戦法が効かないとなると……もう、どうしようもないですね』
 家に帰り、オレは今日の成果をスカイプの会議通話にて発表した。
「で……その、二人はどうだったんだ?」
<いつも通りバッチリ>
『今日は僕も中々なものが見れましたよ!』
 どうやら、ミニスカを狙ったカワサキくんと、ショウゴはそれなりの戦果だったらしい。嗚呼妬ましい、なんと妬ましいことやら!
「それはそれはおめでとうございます。おいしい話を効かせてくれるとオレはとてつもなく喜びますよ?」
<どうしたんだよ、タカシ。そんな棒になっちゃ……あ、もしかして、自分だけパンチラ見れなくて怒ってるの?>
 普段とは比べ用にもならないショウゴ。言葉だと自分の思っていることは言えないくせに、文字になった瞬間これだし、イケメンだし、パンチラ獲得率謎のナンバーワンだし。
「はぁ? 別に? 別になんとも思ってませんが、おみやげ話を少々訊かせてくれると、オレは喜ぶって言うか?」
 久々のパンチラ同好会の活動。久々にパンチラが見れると意気込み、そして何を思ったのか、オレはデフォルトスカートの女生徒をターゲットにしたはいいが、その壁に苛まれて肝心のパンツは見れないし? おみやげ話の一つや二つ聞いても罰は当たらないよね?
『まぁ、まぁ、そんなに怒らないでくださいよ。タカシ氏』
「カワサキくん。オレは別に怒ってるわけじゃないんだって」
『うーむ……あ、そうですよ、タカシ氏!』
「ん? どうしたの、どうしちゃったのカワサキくん」
『明日、スカート短めの生徒狙えばいいんじゃないでしょうか?』
 オレは少し考え、マイクに向かって声を吹き替えた。
「駄目だ。明日はパンチラ同好会の活動はしない」
『……え?』
<はぁ?>
 夏休み前とどうよう、毎日活動する――と、この二人は思っていたのだろう。でも、それじゃあダメだ。歴史は繰り返させません!
「夏休み前の一件もあるし、禁止令の一件もあり、生徒たちは少し――というか、かなりピリピリしてるのは分かるよな?」
<ああ、分かってるが……>
「こんな状況で前みたいに毎日のように活動してみろ。あっと言う間に生徒にバレるだろう。しかも、もしかしたら今度はオレじゃなく、お前たちが干されるかもしれないぞ?」
 二人からの返事が無かったのでオレは続けた。
「一ヶ月に最高三回までの活動とする。最高だ。生徒の状況なんかも考慮した後、活動することにする。活動する時はオレがお前たちにメールを出す。多分、昼休みまでには活動メールを出すと思うからよろしく」
 主将でありながら、パンチラ同好会から一時期身を引いていたオレの言うことなんて、この二人が訊いてくれるとは思わなかった。でも、助けられた恩もある。だからオレは二人を守りたい。
<……分かった。オレはお前に従うよ>
 珍しく? チャットショウゴが快く了承してくれた。いや、顔や声が聞こえないから文からの推測なんだが……。
『僕もタカシ氏にしたがいます! パンチラを見る機会が少なくなるのは……まあ仕方ないですが……』
「……すまない、二人共」



 あの“最後のパンチラ同好会の活動”から約一ヶ月が立った。
 あれからパンチラ同好会の活動をするなんて余裕は無かった。違うな、オレたちはあった。少なくとも、オレ達側はいつでも準備オッケーだった。
 だか、あれから一週間もしない内に校内の雰囲気は少しずつ、いや、劇的に変わってしまった。 
 制服をめぐる生徒の暴動。
 それを鎮圧するために、生徒を処罰しまくる先生と生徒会。
 そしていつの間にか、スカートを折って丈を短くする女生徒達は消え、腰パンをしする男子生徒も消えた。
 消えたんじゃない。皆、模範的な姿に変わっただけだった。本当に酷い生徒達は消えたけど。
 そう、あの時は、オレもショウゴもカワサキくんも他の生徒も考えてなかったであろう、禁止令による制服弾圧はものの一ヶ月で達成されてしまった。

『それでは次の特集です! 現在高校生の風紀が何かと問題になっていますが、そんなか、まずは身だしなみから整えていこう! ということになった高校のご紹介です』
 朝、ホームルームの始まる前の教室にて、オレは携帯でワンセグを見ながら、その朝のニュースの特集を見ていた。
 スタジオでうちの高校の大まかな説明がされた後、場面がうちの高校へと切り替わり、見慣れたアナウンサーが作り笑顔で「ここは……」と説明した。
 なんだか変な感じだなぁ。とワンセグを見続けていると、またシーンが変わった。
『こんにちは!』
 アナウンサーが生徒会長を横に笑顔で挨拶をしている。どうやら生徒会室みたいだ。
『こんにちは……』と、珍しくあの生徒会長が緊張し、アナウンサーに挨拶をした。
『えっと……生徒会長さんですか?』
『はい……!』
 アナウンサーは生徒会長を下から上まで見た後、『すごくかっこいいですね……』と、本心とも思えるような感じで言った。
 このアナウンサーのファンの人間がどれほど嫉妬しているのか。そんなことを思いつつ、僕は携帯の画面を見続ける。
『そんなことは無いですよ……』
 生徒会長もやっぱり男なのか、美人アナウンサーを前に照れていた。
『それで、今回、みなさんがやったことを教えて欲しいのですが、お願いします、生徒会長さん!』
 と、アナウンサーは生徒会長にマイクを向けた。
『……はい』生徒会長は軽く息を吸い。『全国初とも言えると思うんですが、生徒の意思によって制服の身だしなみを整え、そして風紀を向上させるっていうのが、今回の目標だったのですが、少し前までは制服を乱れてきた生徒が沢山いたのですが、生徒みんなの協力のおかげで、今では見ての通り、みんな規則どおり制服を来て学校に来ています!』
『そうなんですか! やっぱりいろいろな苦労とかありました?』
『それなりにありました。でも、生徒みなさんが僕達生徒会や先生達のサポートもあり、そこまで……ってことはありませんでした』
 嘘だ。みんな、処罰が怖くて仕方なく制服をちゃんと着ているだけだ。そんなのに屈しない! なんて言っていた生徒はいつの間にか消えていたし。
『そうですか! 生徒みなさんの団結が鍵となっていたんですね!』
『ええ。今後も、風紀を向上させるためにも、この制服を整え着る。ということを続けていこうと思っています』
『そうですかぁー。生徒会長さんお忙しい中ありがとうございました!』
 インタヴューが録画じゃなければ、不満を持っている生徒はすぐさまに生徒会室へと乗り込んでいっただろう。でも、残念ながらインタヴュー映像は録画だったらしく、今頃そんなことをしても意味が無い。
「ほらー、みんな席についてー! ホームルーム始めるよー」
 顔を上げると、担任が教壇の上に立っていた。
 どうやら、携帯でワンセグを見ていたのはオレだけではなかったらしく、携帯をしまう音があちらこらで聞こえてきた。

       

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G.E. 先生に励ましのお便りを送ろう!!

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