Neetel Inside ニートノベル
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パンチラ同好会
十三話「D」

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 例えばの話しだ。
 下着売り場で値引きセールをするとする。
 二千円する下着が、あら不思議、な、な、なんと、五百円に値下げするとする。
 では、その下着には五百円の価値しかないのか? 違うね、それは違う。
 あくまで、その下着を買って履く人によって価値は変わる、とオレは考えている。
 オレに言わせると、美人が五百円の下着を履いていようが、その下着に値札がついていない限り、そのパンチラには価格を付けられないほどの価値がある。
 オレに言わせると、ブサイクが三万の下着を履いていようが、その下着に値札がついていない限り、そのパンチラには価値を付けられないほどの価値になる。
 だが、それはパンツが見れて初めて言える話しだ。
 オレはそのパンツを守るスカートと戦わなければ行けない。
 時はまだ満ちていない。まだスカートを折っている女生徒はまだまだ沢山いるが、が、オレはあえて、デフォルトに伸ばしたスカートを履いている女生徒を狙うことにした。
『タカシ氏、本気ですか?』
「本気だよ、カワサキどの! オレはあえて、デフォルトスカートを装備した女生徒を狙うことにするよ」
<やるな、タカシ! だがデフォルトスカートを履いている女生徒を見つけるほうが大変なんじゃないか?>
 スカイプの会議通話にて、パンチラ同好会として、久々にオレ達は会議をすることになった。
 小洒落た喫茶店では話しづらかったので、オレが「ちょっと話があるから、スカイプにログインしておいてくれ」と言い残し、喫茶店を後にして早四十分。
『だけど、タカシ氏、なぜ、デフォルトスカートを狙うのですか? スカート上げ、スボン下げ禁止令が発令された今、ミニスカパンチラを狙って、脳内に焼き付けた方がいいのでは……』
「スカート上げ、ズボン下げ禁止令が発令さたと言っても、正直、それが生徒たちに浸透するとは思えない」
<確かにそうだが……>
 一人だけチャットで参加するショウゴ。なんだか、この光景も久々で口元が緩む。
「考えるんだ、この時期にしか、この時期にしかチャレンジ出来無いパンチラだぞ」
『ですが、タカシ氏。生徒会長が言っていたとおりに処罰が適用されるのなら、だんだんとデフォルトスカートを履く女生徒が増えていくと思うのですが……その、今しかできないことは、寧ろミニスカの中を見ることだと思うのですが……」
 と、カワサキくんは歯切れ悪そうに言った。
「確かにそうかもしれない。しれないけど、なら、こう考えるって言うのはどうだろう。未来への投資」
 やべえ、すげーカッコイイこと言ってるよ、オレ。
<未来への投資?>
「そう、未来への投資」僕はゴホンとわざとらしく咳をつき。「スカートと言うものは、どうあがいても下からパンツが見える構造になっている。そりゃ、長さにもよるけど、でも、真下から覗けば大抵のパンツはオレ達の目に入ってくるわけだ。確かに、スカートが長ければ、長いほど見づらいだろう。でも、でもな、もしも、スカートの長さがデフォルトになった時、その覗き方を知らないオレたちはどなる?」
『……それは、その……簡単にはパンツを覗けなくと言うか……』
「そうだよ、カワサキくん! オレたちはミニスカの中の覗き方は熟知しているが、ロンスカの覗き方は知らない。いい勉強になると思わないか、二人共!」
 一度消えかけていた炎が、オレの中で再び燃え上がっていくのが分かる。
<……確かにそうだが……ロンスカは……技術だけでは見れない。相当な運が無いと見れない……。だから、明日の活動は……悪いが俺はミニスカを狙う>
「そうか。無理強いはしない。二人見たいパンチラを見てくれ。だが、オレは、デフォルトスカートに戦いを挑むよ」
『タカシ氏、あの……その僕も……ミニスカを狙おうと思うのですが……」
 


 スカイプで会議した翌日。
 オレはパンチラのことで頭がいっぱいになり過ぎていたせいで、今日の授業や休み時間の記憶がほとんどない。
 なんどかミカちゃんがオレに会いに着ていたようだったが、オレの眼中には入らなかった。
「先輩、一緒に帰りましょ?」
 ミカちゃんがオレの教室にやってきた。そういえば、なんで昨日は会いに来なかったんだろうか? でも、そんなのは関係ない。
「ごめん、先に帰ってて」
「どうしたんですか、先輩?」
「……今日は用事があるんだ。だから先に帰っていてくれ、頼むから、早く」
 放課後の生徒移動ラッシュ時、既にオレとまだ見ぬデフォルトスカートとの戦いは始まっている。
「……わかりました、先輩。先に帰りますね……それじゃあ……」
 寂しそうな声だな。でも、今のオレはそんなことを考えている余裕はない。そう、久々に完全開放されたオレのリビドーが、パンチラを求め、アドレナリンを分泌しまくっている。
 行くか……。ミカちゃんが教室から出て行って、二分後、オレは行動を開始した。
 まず第一にデフォルトスカートを履いている女生徒を探さなくてはならない。
 もう、この際、顔やスタイルにこだわることはしない! デフォルトスカートを履いている女生徒なら、誰でもいい!
 自分でも最低なヤツだと思う。でも、久々に解放されたオレのリビドーは止まることを知らない。
 あの子は……駄目だ。ミニスカだ。ではあれは? 駄目だ、ミニスカだ。では、あの子は?
 視線が捉えた女生徒のスカートを見まくるが、目に入る女生徒全てが見事にスカートを折、丈をあげていた。
 大抵の女生徒の情報は入っているが、スカートの長さまでは調べ混んでいなかった。自分の調べ方の甘さを憎みながら、校舎をふらつくオレ。
 あくまで普通に。気付かれないように。でも、頭の中では混沌渦巻く宇宙のように、パンチラを求める狩人のように。
 どうしても目が血走ってしまう。どうしても早歩きになってしまう。落ち着け、オレ。
 だが、どれだけ探してもデフォルトスカートの女生徒は居なかった。
 帰りのホームルーム後のザワつきが少しずつ収まり始め、帰宅部生徒は家に帰り、部活のある生徒は部活へと、校舎に用のない生徒が、だんだんと校舎から消え失せていく。
 無難にミニスカパンチラを狙えばよかったか……。そんなあきらめムード漂うオレに、その女性とはいきなり現れた。
 角を曲がっていく一瞬だったが、アレは確かにデフォルトスカートだった。
 ついに見つけた。見つけたぞ! オレは気持ちを抑えきれずに、小走りでその角に向かう。
 角を曲がり、女生徒が曲がっていった先を見る。居た! 確かにデフォルトスカートだ!
 膝下まで伸びるスカートは幻想的で儚く見えた。
 今日のターゲットは君だ! とスカートを見つめながら、心のなかで叫ぶ。
 しかしどうする? パンチラを見るには、どうやっても段差が必要だ。しかもスカートの長さが長ければ長いほど、段差差もかなりなものが必要になる。
 ん? いや、待てよ……この先って……確か外の非常用階段だったはず。女生徒の動きからしても、非常用階段に向かっているようだし……。
 オレは一か八かのかけに出るため、急いで階段を駆け下り、下駄箱で外履きに履き替え、非常用階段の前へとダッシュした。
 非常用階段は、周りに障害物がない。下から見れば、階段と階段の間からスカートが見えてしまうと言われているので、女生徒は一切使わない階段だ。
 ここしか無い。オレの本能がオレにそう言った。
 上から誰かが降りてくる。多分、さっきの女生徒だろう。オレは素早く、そして気付かれないように階段の下へ移動し上を見上げるが、外階段は思ったよりも複雑になっており、上がほとんど見えない。
 勝負は一度っきり。ターゲットがオレの真上に来たその一瞬。その一瞬だけだ!
 軽快にステップを決める足音。もう少しだ。後一階分下がれば俺の真上に来る。さあ来い。くるんだ!
 一段、一段、女生徒は大地を踏みしめるように階段を降り、そしてついに……。

 俺の真上には暗黒の世界が広がった。

 見えなかった。スカートの丈が長く、そして丁度日陰となっている外階段。そう、暗すぎたのだ。
 確かに、オレはスカートの中を見た。階段と階段の間をまたぐあの一瞬、オレは確かに見た。見たが……オレの肉眼が見たものはただの影で、ああああああああああああああチクショオオオオオオ……。
 階段を降りてきた女生徒が、呆然と上をむいて立ち尽くしているオレを見て言った。
「先輩……なにしてるんですか……?」
「ミカちゃん……」

       

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