「ごめーん、待ったー?」
「いや、いま来たところ」
古典的というか王道というか、決まり文句というか定番というか。疲れた身体で改札を抜けて早々、そんな感じのカップルがいちゃついているのが視界に入って「リア充爆発しろ」とか思った瞬間、後ろで爆発が起きた。
いや、正確にはその時俺はそれが爆発だとはわからなかった。まず轟音が聞こえて、次にたくさんの人の叫び声が聞こえた。男性も叫んでいたはずだけど、女性の叫び声だけが不思議と耳に残っていた。もしかしたらさっきのカップルの女が叫んでいたのかもしれない。しかし、すでに俺は轟音の聞こえた方向を見ていたし、なんだか色々なことが起きすぎていたのでよく覚えていない。
それが爆発だと正確にわかったのは周りの人々の髪や服がまるで台風の街中のように飛ばされそうになっているのを見てからである。気づいたら自分もその景色の一部になっていた。
爆発か?
「爆破だー!」
誰が叫んだ。今度はたしかに男の声だった。やっぱり爆発か。まあ、爆破も爆発だよな。
どうやら爆発は改札の向こう側で起きたらしい。いわゆる爆破テロってやつか。ついさっきまで俺もあそこに居たのだから恐ろしい。あと、本当にあのカップルが爆発しなくてよかった。あのカップルが爆発してたら間違いなく俺は死んでたよ。
それにしてもなんだか変な感じだ。友達と喧嘩して、ついカッとなって「死ね!」って言ったらその晩本当にその友達が交通事故で死んだみたいな変な感じだ。一瞬静まり返った非日常の中、どうしてかそんなことを思い出していた。