■ラノベチックに
眼前にシルエットが落ちる。
背後から射す閃光に、俺は気付けるわけもなかった。
一瞬のことだった。
光が覆った。
音が消えた。
直後、重油タンカーを爆撃したとしか思えない轟音が瞬間的に鳴り響き――――次いで高温の熱風と体を引き裂くような痛みが俺を跳ね飛ばした。直に見ていたわけでもないのに、更に目を瞑っていたにも拘らず、狂気的に襲い掛かる光で網膜が真っ白に焼かれた。
「ぐああああああああああっ!!」
全身に釘を刺されたような激痛が広がり、叫び声をあげる。爆発音にかき消され、その自分の声ですら鮮明に聞き取ることは出来ない。聴覚が機能停止して、麻酔をかけられたような感覚に襲われる。瞼を開けば視界が焼けつくされてしまいそうで、俺は頭を押さえて蹲るのが精一杯だった。大小様々な瓦礫が降り注ぎ、痛覚を失った身体にに降り注ぐ。
(……何だ!? 一体、何が起こったって言うんだ!?)
精神錯乱しかねないほど朦朧とした頭で、俺は何とか正しい判断を下す。がくがく震える体を叱咤激励して、膝をつきながらも立ち上がって、爆発の起こった方向に振り返る。
――――そこには、信じがたい光景が広がっていた。
■一般風に
突如、背後から到達した大音声を爆発音だと認識するには、少し時間が必要だった。
そしてその爆発の衝撃に耐えうる身体には、それ以上に強靭な肉体が必要だった。
震える大気に押し潰されて倒れ込む僕の上を、凶暴な熱風が過る。吹き飛ばされた衝撃で口の中を切ってしまったようで、血の味が滲む。これは余談だが、日本に初めて兵器としての火薬がもたらされたのは元寇の頃である。その頃に比べればなんとも凄まじい爆発へと進化したものだなあと感心する僕は、昭和生まれで当時を知らない。
よろめきながらふらふらと立ち上がって、踵を返す。
喚く町民が走る中で、僕はただ一人逃げずに立ち上る黒煙を眺める。
想像を絶する甚大なそれに、僕はひっそりと笑みを浮かべた。
■変態風に
――――ドゴオオオンッ!!
十二月二十四日、クリスマスイブの東京に大空襲を思わせる凄まじい爆発音が響き渡る。ひゃっほう! これでカップルが撲滅される! マジ爆発しろ! これがお前たちに捧ぐ初日の出だ! そんな風に喜びを込めながら、俺すなわち絶滅しても生態系が崩れることはなくいなくなっても誰も困らない本当にどうしようもない存在すなわち俺はちょっぴりビビってちびりながら振り返る。
■自分風に
「風、強いね。あったかい」
ふと彼女が僕の顔を見上げる。盲目でさらに難聴の彼女がこの状況を理解できるはずもない。これ以上彼女を絶望の淵に落とすわけにもいかない。背後では鴻大な爆発が我が物顔で怒鳴り散らしている。幸いそれほど距離は近くなかったようで焼けただれるほどではないが、それなりにあたたかい風が僕らの周りで渦を巻いた。
笑顔で応えたあと僕は肩越しに振り向いて、その光景を一瞥する。
■変態風に ver2.0
「随分と欲しかったようだな……女のソレみたいだぜ」
そう言って先輩は更に奥へと、堅く極大のイチモツをインプットする。恍惚。間もなく全身に広がる快感に体を震わせてこれが俗に言うオーガズム、アクメみたいなものだなと頭の中で推しながら僕は先輩に乗馬される。
「せっ……先輩の気持ちいいッ! おひッ! ヒヒィーン!」
「全く、馬みたいな声あげやがって……そんなことされたらますます興奮しちまうだろうがッ」
先輩は根元までコンプリートした息子で僕のヴァージンアナルを舐め繰り回すようにかき混ぜる。先輩のギンギンの先輩自身は僕の大腸襞で蹂躙されてよりいっそう膨張して、さらにその影響で僕のアナルは雄たけびをあげ――――そんなことが数秒繰り返されているうちに先輩が艶めかしい吐息を漏らす。
「うっ……そろそろイクお……」
途端、ええ声で逆に鳴き始めた先輩を迎え入れるように、僕は激しく腰を振り続ける。
カクカクと先輩が全身を快楽で震わせる。
その直後に、最大の悦楽が訪れる。それはまるで爆発音のようだった。背後で原子爆弾でも投下されたような衝撃が広がり、僕は驚いて振り返った。
下腹部に熱いものが注ぎ込まれる。
先輩は僕の中で果てたのだ。
「……ふう、済まなかったな。変な声あげちまって」
先輩はずっぽりと息子を引き抜くと、自分が身に着けていた衣類を僕にかぶせる。先輩の行動すべてから優しさが滲み出ていた。
「先輩……」
「じゃあな。風邪引くなよ」
そう言って先輩は男子便所の個室を開け、悠然と去って行った。
それはまるで、朝日に対面するイエスのようだった。