文芸新都で短歌よもうぜ企画会場
なかったはずの物語/朝田ニコル
手を重ね 初めて歩く 並木道 鼓動が二つ 想いは一つ
君よりも 恐らく僕が 幸せです 景色がとても 綺麗ですから
白昼夢 僕がその時 見てたのは 昨日の幸福 明日の贖罪
夜半過ぎ 痛みを知った 君は言う アダムとイブに 幸せは来ない
オルガンを 揺らして泣いた 丑の刻 百五十日 ナイフを構え
道徳を 社会のゴミと 言い張った 笑うことなく 泣くこともなく
ルビー色 スケープゴートが 鳴いている 「メカクシヲシテ ココマデキタヨ」
大丈夫 私にはまだ 声がない 名前もなければ 眼も開かない
君は泣く こんなはずでは なかったと 聞き流す僕は ベランダの猫
手を重ね 初めて堕ちる 並木道 鼓動は二つ 呼吸をやめた