ラノベ習作
その7
宙木が粗茶どころか玄関の鍵ひとつ開けず、無理やり開けても部屋から出てこないことが三度続いた時にとうとう天堂帝梨の堪忍袋の緒が切れた。一度は撤退して宙木家の前まで引き返してきたのだが、そこで解散宣言をせずにトントン足踏みを始めた時、美鳥と晩の胸はもう嫌な予感で一杯だった。
「とうとうこの作戦を使う日が来たか。できればこれは最後まで日の目を見ることのないまま終わらせたかったのだが」
くっ、と天堂帝梨は目頭を押さえる。
「しかし背に腹は変えられん。すまんな、美鳥」
「…………。いったい何をやらせる気? あたしの内臓は何があっても渡さないよ」
晩は一歩美鳥から離れた。そういやこいつも馬鹿だった。
天堂帝梨はカカと笑って、
「心配するな。キャトルミューティレーションなんてロクな機材も持ってない不認可のス……まァいい、とにかくだ、美鳥、安心しろ。死にはしない」
「……。ほんとう?」
「当然だろう? 私は保険医だぞ。人命を尊ぶのが私の使命だ」
「じゃあ、何をするの……?」
天堂帝梨は粗大ゴミとして塀に立てかけられていたちゃぶ台を立ててその上に飛び乗った。
「無論、色仕掛けでいく!!」
くらっと倒れこんだ美鳥の肩を晩が慌てて押さえた。
「てんてー、保健室登校児にその無茶振りはひどいよ」
「なにをおろかなことを。いずれ通る道だろうに。おまえらな、学校に通ってるうちに異性のひとりふたり組み敷く気合がなくてどうする。子孫を残してナンボだろうが人生なんざ」
「セクハラもいいところだぜ……。とにかく美鳥先輩にそんなことさせちゃ駄目っすよ。てんてーがやりなよ」
「私に欲情したらロリコンだぞ」
「じ、自分で言うのか、それ……。あー。まァでもそうかも……?」
「何を納得してるんだ晩。それより美鳥をとっとと回復させろ。打ち合わせしなくてはならんからな」
晩がぷにぷにとほっぺを突きまくると、美鳥は十三発目で起きた。その直後のやりとりを晩はよく覚えていない。肘鉄を食らって悶絶していたからだ。
腹をこすりながら起き上がった時、すでに話はまとまりかけていた。
「私の尻尾を掴むと言って置きながら? ええ、美鳥よ、おまえは年下一匹篭絡することもできんで宇宙人をとっ捕まえると豪語しているのか? ほお? その程度の覚悟で? それで地球が守れるのかァ? お?」
「ぐ……」
「所詮口先だけのやつには一万光年経っても何もできはせんのだ」
「う……」
だいぶ逡巡していたが、美鳥は最後には両手を挙げた。
「わかった。これもあたしにしかできないことだと思うから」
その『あたしにしかできないこと』をどのレベルまでやってくれるのかな、と晩はのん気に考える。
「で、具体的に何すればいいわけ?」
「ふふふ、任せておけ。大船に乗ったつもりでな」
○
もしコスプレに興味があるだろう、あるに違いないと言われれば、晩は「幼稚園の頃、戦隊ものの変身グッズを欲しがってデパートで暴れ狂ったことならある」と答える。あの時はどういうわけか欲しくて欲しくてたまらなかった。そのためなら親兄弟を敵に回してもいいとさえ思った。
その気持ちが大人になっても無くならないというのは、これはすごいことだろうと晩は思う。
だから天堂帝梨が美鳥の袖を引っ張ってコスプレ専門店に入っていった時も、なるたけ冷静であろうと思った。発想を逆転させてみるとそもそも身長150に満たない天堂帝梨が白衣を着て闊歩していること自体がそもそもコスプレみたいなもんである。だから何も不思議がることなどない。コスプレ? 結構なことじゃないか。需要があるなら供給が応えるのは当たり前のことであって、その需要というやつを一介の高校生に過ぎない自分がどうこう言うのはその筋の人たちを軽蔑していることになる。晩は誰のことも軽蔑したくなかった。そういうことにしておいた。
店内に入ると服のにおいがした。言葉は悪いが少々におった。晩と美鳥は袖で鼻をおさえる。
「なにこのにおい……千代崎、わかる?」
天堂帝梨に聞けよと思いつつ、
「さあ……ま、服の繊維のにおいじゃないですかね。ほら、アニメと合致した印象を与えられる質感のために結構レアな素材とか使ってたりするんじゃないですか。こういう服って高いって聞くし」
「そもそも服自体が高いよ。ありえない。みんな無印になればいいのに」
「美鳥先輩、国民服作れとか愚痴るタイプでしょ」
「なんで知ってるの」
などと二人が青いワンピースや荒野でしか生きられなさそうなプロテクターつきのジャケットをいじっている間にどこをどう潜ったのか服の林の中から天堂帝梨が飛び出してきた。
「ほれ美鳥、おまえのためにいろいろ持ってきてやったぞ」
天堂帝梨は両手に衣装を抱えて言った。
「いいか、あの手のタイプの引っ込み思案なシャイボーイは強気な女の子に引っ張ってきてもらうのがいいって虹野が言ってた」
「虹野って誰だよ」
「あたしです」
「うぉっ!?」
「うひゃ!?」
いつの間に立っていたのか。
晩と美鳥の肩の間にぬっと首を出している女の人がいた。ふわふわした作り物みたいな茶髪が綺麗とかわいいの中間を彷徨っている。本当にカツラなのかもしれなかった。
「どーも。『めたもる』の店長の虹野です。虹野って呼び捨てにしてね」
「Mなんですか?」
と美鳥が果敢に聞き込んだ。コミュ力がない人間とはとても思えない。
虹野はにやにや笑って、晩に顔を向けた。
「どっちがいい? どっちにもなれるよ」
「それって答えたら俺の性癖がバレるっすよね」
「え~? そんなことないよぉ。ねえ? 天ちゃんはこのコどっちだと思う?」
「臆病者だからM……ってそんなことはどうでもいいのだ!」
天堂帝梨は話を聞いてくれない大人に愚図る子どものように美鳥の袖を引っ張った。
「みーどーりーこっち来いよー! 私と強気な女の子になろ?」
「なぜこんな時だけ女子口調……。わっ、やめ、わかったいくから! 引っ張らないで!」
壁際に設置された試着室の向こうに二人は入っていった。中でどんな宴が行なわれているのか気になる晩だったが、それ以上ににやにやと横顔を見られているのがこそばゆい。
「なんすか」
「ふーん」
虹野は含み笑いを浮かべたまま。
「君が千代崎晩くんかー。下の名前で呼んでいい?」
「いいっすけど……俺のこと知ってるんですか? ま、まさかてんてーから聞いてたり?」
「うん。なんて言ってたか知りたい?」
「ぜ、ぜひ!」
「じゃあ教えるね……」
虹野が口元を寄せてきて、晩は意味もなく生唾を飲み込んだ。視線がなんとなく首筋に向かう。
大人の女性の肌は狐色に見えた。
「天ちゃんは君のこと……」
「……」
「……がぶ」
「痛っ!!」
噛まれた。
この世にこんな理不尽で恐ろしいことがあるのかという気持ちで晩は飛びのいた。相変わらずにやにや笑っている虹野が悪魔に見える。涙目で叫んだ。
「な、何すんすかいきなり!?」
「いやーかわいいなーと思って」
「かわいいと食べちゃうってドSもいいところじゃないですか」
「えーだってー晩くんが悪いんだよ? お姉さんはーただーその歳から幼児体型に欲情しちゃい男子高校生を人の道に引きずり戻してあげようとしただけ」
「幼っ……!」
叫びかけ、試着室の中での戦争がさっきより沈静化していることに気づく。
「……。べつにロリコンじゃねっす。ていうかなんでわかったんすか? バレバレでした?」
「いやー上手く隠してる方じゃない? お姉さんには通じないけどねー。でも天ちゃんかー」
虹野は試着室に顔を向けた。
「やめといた方がいいと思うなー」
「二十代はまだ膨らむ可能性がありますよ」
「そうじゃなくってさー。ま、住む世界が違うっていうか」
「住む世界? てんてー、金持ちなんすか」
「あはは。世界の違いで金が出て来るあたりまだまだオコサマだねー」
むっとしたがなんとなく深そうなセリフだったので噛み付けなかった。
そうこうしているうちに試着室のカーテンが開いた。
「!? こ、これは……」
まず目に付くのは気狂いが結んだとしか思えないサイドのテールである。ポンポンで縛ったのだろうが相当の抵抗があったと思われほつれ毛が飛び出している。親御さんが見たら卒倒するか心中するかどっちかであろう。
服装はどっから持って来たのか謎なばりばりの特攻服であった。白い丈は血と泥の汚れが染み付いており歴戦の苛烈さを思わせる。特攻服の下にはホットパンツとタンクトップでいつ寝込みを襲われても対応できる寝巻きにもなる優れもの。問題はそんな自体には保健室登校児は巻き込まれないであろうということと、そもそも似合っていないという壊滅的な一点であった。
強気な女の子に引っ張ってもらうってこういうことだったのかなと晩は遠い目つきになった。最終的に腕を組んで警察に補導されていく道が見えるのは気のせいか。
「どうだ晩。おまえも根暗みたいなもんだろう」
「そんなことないよ」
天堂帝梨は取り合わない。腕を組んで精魂こめたプラモでも眺めるような顔つきで、
「おまえから見てこの美鳥はどうだ。そそってくるか? 組しかれたいか? 繁栄していけそうな感じか?」
「性格の不一致で絶滅しそうっすわ」
美鳥は顔を真っ赤にして俯いている。心なしか息が荒い。それもそうだろう、こんな他人の面前で特攻服なんて着せられてテンションが上がるのはノリのいいやつであって、美鳥はもちろんいつでも気分の心電図が死亡しているクチなのだ。無茶振りもいいところであった。
「許さない……ぜったい許さない……」
「てんてー、先輩がかわいそうっすよ。早く脱がしてあげてください」
「おまえなーそういうワガママ先生困るぞ。脱がすのは雲雀の役目」
「そういうことじゃねーよ! ていうか脱がさせる気か!」
ぎゃあぎゃあやってる二人を無視して虹野がぱちぱちと軽く手を叩いた。
「似合ってるよー美鳥ちゃん。いてこましたい」
「やめてください」
美鳥は頭を抱えて、ハッと気づいた。
「ていうか、あたしの名前……」
「ん? ああ、天ちゃん生徒の話よくするから」
「……。天堂先生と仲いいんですか?」
「ともだちよ、ともだち」
美鳥はまだ何か聞きたそうだったが、虹野はそれを遮って天堂帝梨に声をかけた。
「天ちゃん、時間あるんでしょ? もっと着せ替え人形にしてあげたら。在庫はいくらでもあるし」
「マジか。虹野、おまえいいやつだな」
「ちょ、ちょっと待ってあたしもうこんなの嫌、」
抵抗しかけた美鳥の鳩尾に天堂帝梨の踏み込みすぎなきらいの残った鉄拳が刺さった。
「ぎゃぶっ!!」
「口答えするな。これも授業の一環だ」
「ぜっ……たい……違……う……」
「がんばれ、先輩! 俺、他人事としてすっげぇ応援してるっす」
天堂帝梨による美鳥の自尊心を蹂躙する簡単な業務はそれからしばらく続いた。
仕切り直し一発目、隣校の制服。
これは一打目にしてはなかなかの選択ではあった。近くにいるのに手が届かない、そんな距離感がいいのよと虹野も嘯いていた。
が、「そもそも宙木は学校に来てないから自分の高校の制服もロクに知らないはず」で、距離感も糞もないと結論が出た。ちなみに髪型はカツラをかぶせて黒髪ロング。
二発目、ツナギにレンチ。
筋書きとしてはこうである。まず宙木雲雀の自宅の壁を二メートル四方で爆破する。爆薬は調整して、壁の塗装が剥がれるぐらいにとどめておく。そしてたまたま通りかかった茶髪ポニテの渦見美鳥が困っている宙木に颯爽と手伝いを申し出て、壁を修繕、ついでに手取り足取り宙木の心の傷まで直してあげちゃうのである。問題は爆薬の量を謝ると宙木とその家族が宿無しになってしまうことと、「働いてる女性ってこの就職難に生きる学生からすると結構メンタル面で重いんじゃないかナ」ということだった。二点目は虹野の意見だが、しきりに天堂帝梨は感心していた。そして晩はとうとうレンチの意味を聞き出せなかった。
三発目、宇宙兵器のパイロット。
働くもクソも徴兵されたなら仕方ないんじゃないかナとわけのわからない理論をぶつ虹野は二千パーセントの確率でまじめにやってなんかいなかった。そんなことは晩にも美鳥にも重々承知だったのだがそのあたりを理解できない高校教師が一名いたがために事態はどんどん悪化していった。美鳥は一手誤れば真っ黒なパイロットスーツで町内を闊歩させられる羽目になるかもしれないと考えただけで顔面を蒼白にしていた。まだ牛に内臓を抜かれる方が子どもの頃からたまに自治会館などで顔を合わせてきた近所の柳田おばさんに機動兵器のパイロットであることがバレるよりはマシだと思っていたのかもしれない。
パイロットスーツはある日突然始まる物語的な感じでもグッドなんじゃないかと天堂帝梨はやる気満々だったが、「いやでもそういうのはちゃんと機動兵器に乗ってないと駄目ですよ」という晩の助け舟でなんとかボツにこぎつけた。晩は涙目になって感謝の頷きを繰り返していた美鳥の哀れな表情を忘れることはないだろう。
その後もチャイナ服、ナース、メイドと果敢に天堂帝梨は攻め込んでいった。晩も途中から虹野にパイプ椅子と茶菓子まで出してもらってすっかりお客さん気分になって楽しんでいた。
「虹野さん、どう思いますあのメイド。あんな目つきをするメイドがいていいと思いますか? 契約不履行ですよあの眼光」
「ちょっと気が強すぎるよねぇ。ポン酒の一升瓶半分呑ますか、風邪でも引いて弱ってもらわないとちょっとねー」
「ふむ」天堂帝梨は凶悪犯のような顔つきになっている自慢のメイドを見上げて、
「まだだめか。よし次だ!」
「ちょっ、もうやめがっふぁ」
言葉の最後は足を崩してから顎を軽く揺らす掌底によってかき消され、美鳥はずるずると試着室の中へと再び連行されていった。
そうこうしているうちに八時を回り、『めたもる』の二階、虹野の居住区となっている部屋に案内されてみんなでホットケーキを焼いて食べてその日は解散となった。
結局、対宙木用コスプレは最初の特攻服に決まった。他のどれよりもまだ傷は浅くて済むという美鳥の言葉にはならない計算に晩は哀れみを覚える。
○
翌日。
放課後を待って晩が保健室に顔を出すとベッドの上で体育座りになって凹んでいる特攻服のポンポン頭がいた。
「……先輩」
美鳥はちらっと顔を上げるとまた顔を膝に埋めた。
「改めて見てもなんかひどいっすね……色々と」
「言わないでよ……」
「すんません。それよかてんてーは?」
「さあ……ちょっと待ってろって出てったけど。あんぱんと牛乳でも買ってるんじゃない」
「ああ、好きそうっすねそういうの」
どさっと晩は何気なく美鳥の隣に腰を下ろした。
「それで、段取りはできてんすか?」
「昨日メールで二時まで打ち合わせした」
いつの間にそんなに仲良しに。
そういう目つきをしていたのだろう、美鳥が不服そうに言う。
「宇宙人の実態を掴むためには多少の不快感は我慢する」
「不快って……かわいそうっしょそういう言い方は」
晩がそう言うと、美鳥は目をぱちぱちと瞬いた。そしてショーケースの中の欲しいモノでも見るように晩の顔を覗きこんできた。
「な、なんすか……?」
「結構はっきりモノを言うんだね」
「は、はあ……」
「あたしに逆らう気?」
「え、いやそんなつもりは全然」
「そう。べつに全然逆らってくれてもいいんだけど?」
この先輩はひょっとすると保健室など必要ない業の者なのかもしれない。あるいは特攻服と頭のぽんぽんが化学反応を起こしてアルコールとして摂取されているか。そうでなければこんな挑発的なことは言ってこないだろうと晩は思う。
「あたし思うんだけど」
「はい……」
「宇宙人を捕まえるには人手が必要だと思ってたの。いい? あなたが座ってるのはベッドじゃなくてベッド型の宇宙人。まずこの前提を弁えて」
「その前に分を弁えてください」
「言うね。このバットが目に入らないらしい」
「いつの間に!? てか釘めっちゃ刺さってる!! 駄目だよそんなの人として間違ってるよせんぱ」
「天堂帝梨は宇宙人」
「…………え?」
「復唱」
釘バットを喉元に突きつけられる。こいつ昨日まで恥ずかしがってたくせに。開き直ったか一周して気が狂ったかどっちかに違いない。
だがここで改めるべきは自分の態度だと晩は思う。そうしないと命はない。
「てっ、天堂……りは」
「誤魔化さない」
「イテテテテ! 天堂帝梨は宇宙人! 天堂帝梨は宇宙人です!! ほら言えた、ね、だから先輩それ下ろしましょう」
なんとか美鳥に釘バットの照準を外してもらい、晩はほっと息をついた。
「いやしかしですね、――わかってますよもう逆らいません。でもですね、実際問題、てんてーが宇宙人だったとして、なんだってんですか? あのチビに地球が侵略できたらカエルにだってできますよ」
「そのことについては考えがある」
胸倉を掴まれる。なぜそんな必要があるのか問い詰めたい。
嫌がる弟にキスしようとする姉のように美鳥が顔を寄せた。
「このベッドや椅子、宇宙船の外装内装を見たところ、これらは生物でできている」
よく考えるなあそういうこと、と言いたいところだが晩は口をつぐんだまま余計なことは言わない。
「生物がどうやって真空を直進できるのか? そんなことは一介の高校生のあたしがウィキペディアを駆使するだけじゃわからなかった。でもあたしはこう考えてる。人間が火や物を使って進化した生き物だというのなら、逆に、何にも頼らずに進化を遂げて文明を作り上げた生命だってあるんじゃないか、って」
「…………」
「元々微生物だって海から陸に上がった時に、戻ることではなく進むことを選んで進化した。人間が道具を頼ると決めた瞬間、まったく別の銀河では道具を頼らず自分から芽生える肉と骨と血だけで繁栄を掴もうとした種族、あるいは惑星そのもの、があったのかもしれない」
「…………」
「天堂帝梨の目的がなんなのか? それはわからない。でも天堂帝梨には感情がある」
「……。だったらその感情に訴えて仲良しこよしすればいいじゃないスか」
「逆」
「逆?」
「さっきの話を思い出してみて。道具を使わず己の身体を異種交配だけで突き進み、大気圏すら突破してしまった種族がモノや自然の法則に上手く乗りこなしているだけのヤワな生き物を見たらどう思う? そして月並みだけど見過ごせない世界の問題、環境とか自然の破壊、そういうのを己の肉体のみを信じてきた種族が見たらどう思うかな?」
「…………」
やばい、と晩は思った。
乗せられそう。
美鳥は少しもふざけてなどいないかのように喋った。
「いまは信じてくれなくてもいい」
「さっき釘バットで……あ、いやなんでもないです」
「……。いまは信じてくれなくてもいい。でも、忘れないで。あたしの言葉。いつかわかる時が来ると思うから」
「……まあ、覚えておくだけなら」
「よかった」
美鳥がふわっと笑った。それを見て晩の目が軽く見開かれるのと、あんぱんと牛乳を抱えた宇宙人が宇宙船に戻ってきたのが同時だった。
「なんだおまえら。何をベッドに並んで座ってる? デキたか」
「はあ!? 何言ってんすか!!」
いきなり大声を出した晩に、女子二人がぽかんとした。
「……晩?」
「千代崎くん、どうしたの?」
「……」晩は頬をかいて、
「なんでもないス。それよか、とっとと行きましょうよ宙木んち。暗くなる前に」
「日没まではまだ時間があるぞ」
「そこは突っ込まなくていいから! ほら、行きましょうや。パン腐るっすよ」
(解説)
手なりで書いててどうやったらページを稼げるのか? という俺なりの結論。コスプレ大会。
アドリブでキャラクタ出してみたりとか、とにかく、ページを稼ぐことしか考えてませんでした