誰の声も無の向こう
機体の日
「うう」
目を覚ますと俺はコックピットの中にいた。ちょっと気絶していたらしい。頭を振って気を確かに持って、頑張ることにした。
モニタには敵影。ウジャウジャいる。俺はレバーを駆使して機体を立て直し、ビームライフルをぶっ放した。
どおおおおおおん!!!!!!!!!!!
俺の一撃で視界がはれた。
俺たちの戦場は森だった。一面燃えていた。
「なんてひどいことを」
憤りが身体を焼く。レバーを駆使して俺は味方のところへいった。
「なんとかしなければ。応答してくれ、誰か」
「ビガル少尉か」
「その声はキクラゲ少尉」
俺は仲間の機体に駆け寄って声をかけた。
「大丈夫か」
「ああ、なんとかな」
「敵は?」
「たくさん残ってる」
「そうか」
「なあ」
「どうした?」
「敵をやっつけないか」
「そうだな」
俺と少尉は敵を撃ち始めた。
数が減らない。
「やっぱりいったん撤退しよう」
「そうだな」
「どこかで強化アイテムが手に入ればいいのだが」
俺たちは撤退した。
途中で村があったので徴収した、いろんなものを。
「ありがとう、小市民たち」
「人でなしめ」
「聞こえないな」
俺たちはその村を去った。
「武器の貯蔵は充分か」
「どうだろう、見てくれないか」
俺はキクラゲのリュックサックの中を見てやった。
「装備は薄いな」
「そうか」
「機体を捨てて敵の改良型に乗り換えた方がいいな」
「うむ。ああ、あそこにあるから乗り換えてくるよ」
キクラゲはすぐに戻ってきた。
「古いほうはどうする」
「放っておけば村人が自衛用として奪っていくだろう。それでいいさ」
「そうだな」
どどん!
敵が現れた。
「最新型の腕を見せてやるぜ」
「やってやれキクラゲ」
キクラゲのライフルが火を噴いた。
ことごとく倒されていく敵兵。
だが倒されずに突っ込んでくるやつがいた。左手にはビームサーベル。
「あぶない」
「わあ」
キクラゲは一刀両断されてしまった。
「キクラゲ」
「あとはたのむ」
爆発が起こり、俺はその場にもんどりうった。
「くそ、キクラゲのかたき」
俺はキクラゲを倒したその機体とやりあった。
が、地面が抜けてしまったのでそこまでだった。
「うわー」
俺は落ちていった。
どんん
起き上がるとそこは地下ダンジョンだった。
急に無線が繋がる。
「ビガル? こちらマーティ」
「ここはなんだ」
「軍の秘密地下よ。出口まで案内するわ」
「頼む」
だが無線はそこで途絶えた。
「くそっ。んん?」
あたりには、ジャミング用の電波を出していると思しきカブトムシの化け物ども。
俺はサーベルを抜いた。
「こんなところでやられるわけにはいかん」
ばっしばっしと化け物どもを両断していく。
そして余ったジャンクパーツから装備を組み立てた。
即席のシールドである。
「よし、これさえあれば」
俺は頭上から降り注いでくる酸性雨をシールドで防ぎながら先へ進んだ。
町へ出た。
機械兵たちがにぎやかに踊っている。
「ここは」
「機械の町です、少尉」
「きみは」
「私は機械」
「そうか」
「少尉は人間?」
「いまはな」
俺は町に入った。
酒場に入ってオイルを頼む。
そして飲んでいると声をかけられた。
「出口へ出たいのですか」
「そうだ」
「案内しましょう」
「ありがとう」
俺たちは町を出た。
が、機械虫たちが多く、とても進行は困難だった。
やはり諦めるべきか。
そう思っていたとき、また床が抜けた。ガラガラと零れ落ちる瓦礫。案内役はどこかへいってしまった。
俺はぼんやりと鋼鉄に埋もれながらその場に漂っていた。
メカニカルマヌーバを出して周囲のジャンクから使えそうなパーツを検索して回収、機体に取り込んだ。そうしているうちにどんどんジャンクが増えていった。俺は機体の中に住むようになった。機体はもはや星であった。
俺が風呂に入っている時、がちゃりとドアが開いた。
「誰だ」
「マーティよ」
「なんだって。どこからここへ」
「外の世界は滅んでしまったわ。いまではもうあなたと私がアダムとイブ」
マーティはしなだれかかってきた。俺はそれを受け入れた。
「しあわせとはなんだろう」
「さあ……」
俺たちは何も考えずにバスタブの中へと沈んでいった。
「完」