Neetel Inside 文芸新都
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ポンチ短編集
女流武者 御剣桜華 第十八幕 いざ宿敵の待つ大和へ…

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 山城の町に着いた桜華たちは家臣たちの武器と鎧を買おうと思ったのだが、鍛冶屋が閉まっていたので、仕方なく宿で一晩を過ごした後、再びその鍛冶屋を訪れた。東雅が扉を押した瞬間、鍵が閉まっていないのか、扉は簡単に開いた。
「あれ…?扉が開いている様子だが、もしかすると鍛冶屋が開いているようですね。桜華殿、中に入ってみましょう。」
東雅がそう言った後、桜華は恐る恐る鍛冶屋の扉を開き、鍛冶屋の中に入る。しかし鍛冶屋の中には人がいる様子はなかった。
 「これは奇怪なっ!!鍛冶屋には客はおろか店の人もいない……。とりあえず店の内部を探るとしよう。何か秘密がありそうだからな…。」
桜華は鍛冶屋の中を何かないかなと探り始めた。その桜華の様子を見た東雅が、不安そうな表情で桜華を見つめていた。
「桜華殿……いくらなんでもこれはダメだと私は思いますが…。」
東雅は鍛冶屋の隅々を探し回る桜華を見て、ため息をつきながらそう言った後、桜華は何かを見つけた。なにやら刀や鎧を保存する倉庫のようなものであった。
 「東雅殿、なにやら奥に倉庫があった。早速開けてみるぞ…。」
桜華がそう言った後、倉庫の扉に手をかけ扉を開けた。するとまだ使われていない刀が数本あった。しかし防具のほうはひとつも無かった。
「あるのは刀だけだな…。とりあえず戻しておこう。泥棒と間違われたら大変だからな……。東雅殿、鍛冶屋を出るぞ。」
「桜華殿…その通りですよ。いま物を盗んで御用となれば、両親の仇が取れませんよ。」
東雅に諭された桜華は、別の鍛冶屋を探すために行動を開始した。

 しばらく山城の町を歩いていると、桜華の目に鍛冶屋の看板が飛び込んできた。桜華はその鍛冶屋の戸扉を開け、店の人にそう言う。
「すまぬ。とりあえずこの良質の刀をくれぬか…。できれば五本頼む。」
桜華は店員に刀を手渡すと、店員が答える。
「うむ…。この刀なら一本150両だ。5本なら750両だ。それでもよいか…。」
店員の言葉に、桜華は店員に値切りの交渉を始めた。
「出来れば…鎧つきで200両、五人分で1000両でどうだ。金なら私は1200両あまり持っているからな…。どうだ?」
桜華の交渉に、店員は了承のサインを送り、人数分の武器と防具を持ってきた。
 「ちょっと悔しいが、お前の交渉に了承するぜ。ほらよっ!こいつで1000両だ!」
桜華は千両を店員に渡し、五人分の装備を受け取った。東雅は鎧を装備した後、馬車にいる仲間たちのために装備を届けに行った。
「鍛冶屋の店主殿、どうもありがとうございます。では私はこれで……。」
桜華は買い物を済ませ、鍛冶屋を後にした。

 山城の町の出口まで来たとき、桜華は仲間たちにこう話した。
「装備も整ったし、今すぐにでも虎雅の支配する大国、大和へと進軍できる。皆のもの、鎧と刀はしっかり身に付けるのだぞ。ここから先虎雅の武士たちがいそうだからな…。」
家臣たちが武器と防具の確認をする中、桜華だけが不安な表情であった。これから先敵の本拠地である大和へと向かうのだから、心配するのも無理はない。
 「よし、皆のものよ行くぞ!我が敵である虎雅を討つためにっ!!たしか地図を見る限り大和はここから南にある。山城から南に進むと大和にたどり着くであろう。」
桜華は馬車を駆り、宿敵である虎雅のいる大和へと進み始めた。馬車の中では、家臣たちは常に刀を握り、虎雅の武士との戦いに備えていた。

 大和へと続く草原を、しばらく桜華たちが進んでいると、大きな田畑が目に飛び込んできた。
「おお…目の前に田畑が広がっているではないか。ここに人がいそうな気配がするな。そうと決まれば農民から情報を聞き出すとするか…。」
桜華はそう言った後、近くで農作業をしている農民に情報を聞きだすことにした。
 「すまぬ、ここから南に行くと大和があるというのだが、詳しいことを教えてくれ…。」
桜華の言葉を聞いた農家の男は、驚いた表情で桜華を見ていた。
「お前ほんとに大和に向かうのか!?おらたちは虎雅の家臣に作物を作れといわれているんでな。とりあえず大和は南に行けば大和街道があるんだ。お前たち死んでも知らないぜ…。」
農家の男の言葉を聞いた桜華は、真剣な眼差しで農家の男を見つめ、こう答えた。
 「私は両親を虎雅に殺された……。復讐をちかった私は旅をしながら家臣を集め、ここまでやってきたのだ。私たちが虎雅を倒せば、大和はきっといい国になるだろう。」
桜華の言葉に、農家の男が静かに口を開いた。
「お前がそう言うんなら、俺は止めやしない。大和へ行くなら気をつけな。先ほど奴の家臣から聞いたのだが、山城への道で事件が起きたせいなのか、家臣たちがこの辺をうろついていやがる。奴の武士に出会ったときには気をつけろ。強い武器でないと虎雅の武士と太刀打ちできないぜ……。」
農家の男が桜華たちを心配するようにそう言うと、桜華は笑顔で答える。
「大丈夫だ。私は絶対に復習を成し遂げて見せるさ!家臣たちがいるから大丈夫だ。農家の男よ、それでは私は大和へと向かうでござるよ…。」
桜華は農家の男に別れを告げると、大和街道を目指して南へと歩き始めた。

 田畑から一時間ほど歩き、大和街道に差し掛かった桜華たちの目に、大勢の平民たちが武士のような人に連れて行かれる様子が見えた。武士のような人はどう見ても虎雅の武士であった。どうやら脱走を計った平民を連れ戻すためであった。
「お前たち、よほどこの大和を抜け出したいか…。でもそうはさせない!お前たちは一生虎雅様の奴隷として働いてもらうぞっ!!」
「もう虎雅様の拷問のような労働には耐えられませんっ!!俺たちは北の山城の町へと行きたいんだっ!」
平民たちが抵抗するが、武士たちによって取り押さえられた。その様子をしばらく見ていた桜華は、苛立ちを感じていた。
 「許せないな…。皆のもの、平民どもを助けに参るぞっ!龍牙丸よ、急ぐぞっ!!」
桜華は龍牙丸に鞭を振るい、虐げられている平民の元へと向かっていった。

山城を離れ、大和へと進軍する桜華たち。
その道中の街道で虐げられている平民を助けるべく、桜華たちは急ぐ!

       

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