あぁ自分疲れてると思った瞬間アンソロジー
ワンルームの日常
「ただいまー、あー今日も疲れた」
夜九時ごろ、誰もいないワンルームに抑揚のない声が響く。
俺はコンビニ袋を座椅子の隣に放り投げて、冷蔵庫から酒を取りだし、そそくさと炬燵に入る。
パソコンの電源は袋を投げた時についでに点けていた。
「んじゃ今日もニコニコしますかー」
プシュッ、と音を立ててプルタブを開ける。
コンビニの袋からおにぎりやつまみを取り出して、むさぼる。
「おっ、あの動画ランキング上がってるじゃん」
自分の声とマウスのスクロール、クリック音がこだまする。
最近、独り言が多くなった気がする。
コンビニのおにぎり、開けるのがうまくなった気がする。
安い酒でも、そこそこ満足できるようになってきた自分がいる。
「○○Pの新曲PVも上がってるじゃん、聴こ聴こ」
次から次に増えていくブラウザのタブ。
マナーモードでもないのに、やけに静かな携帯。
テレビもつけずに、パソコンの画面にばかり夢中になる自分。
「作業用BGMでも流しながらまとめサイト巡るかー、あ、あとツイッターも」
文字での会話は日に日に増えていって、
言葉での会話は日に日に減っていった。
「なんだこの野郎、掘っちまうぞwwwww(♂^ω^)♂、と……」
テンションの高いツイートを、ほぼ無表情で書きこむ。
タイピングの技術ばかり上がっていく。
「あ、もうこんな時間か」
気が付くと、時間はいつも丑の刻。
ちゃっちゃと風呂歯磨きを終えて、今度は布団の中で携帯弄り。
もちろんメールではなく、ツイッター。
「それではみなさんおやすみなさい!と」
おやすみと言っても、しばらくタイムラインを眺める。
明日が来てほしくないから。
明日が来てほしくないから。
「はあーあ、明日も仕事か。疲れるなあ……」
溜息を吐きながら、今日もまぶたの裏の世界へ。
そんな、土曜日の夜。