Neetel Inside ニートノベル
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プラチナバード・ガール
プラチナバード・ガール(11.18.2012)

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まるで卵が割れるみたいにポッドの装甲がはじけ飛び
まるで破瓜のような溶液を撒き散らして
まるで子供みたいなあの子は私の前に姿を現した


「クレア~!」
 少女の小柄な身体がべたべたとまとわりついてくる。長い金髪の房が私の視界をひらひら遮る。
「あ~もうまとわりつくなアリス!あたしは母親じゃないんだぞ!」
「ふぇ・・・」
 まずい。思わず声を荒げてしまった。アリスの目に涙が浮かぶ。
「・・・わかったわかった。手をつないでいこう。それでいいだろ?」
「あ!鳥さん!」
「ふおおい!」
 ぱっと笑顔になったアリスが向かっていったのはしかし鳥ではない。20mはあるであろう巨大なガレージの開放されたシャッターの向こうに、巨大な翼をもつ戦宇宙戦闘機がある。アリスはこの巨大な戦争兵器のことを鳥と呼んでいる。まぁ確かに比喩的には鳥に見えるのだが。
 アリスはシャッターをくぐって中へ入って行ってしまう。
「おや、お嬢ちゃんまた来たのかい?」
 スパナ片手に作業服を着た白髪の初老がほほえむ。
「さわってもいい?」
「おう、工具に気をつけてな」
 アリスは戦闘機の方へ飛んでいった。わたしは男性の方へとろとろ歩いて行く。
「すいません・・・アレ、売り物でしょう?」
「いいんだよ博士さん。しかしいつの間に子供をこさえていたんだね?」
「私は産んでませんから!」
「そうなのかい?俺ァてっきり」
「うーん説明が難しいんですが、養子みたいなもんで」
「そうかい・・・最近は少なくなってきたと思ってたがねぇ・・・大佐閣下の隕石落としも市民にゃ被害はなかったし」

----------さかのぼること2ヶ月

 白鳥の飛ぶ湖畔の白昼夢は、チャイムの音でかき消された。
 私は陽光の差す机からのっそりと起き上がり、顔に垂れてくる髪を後ろで一つにまとめながら「うーい」と返事する。メガネはどこだ、あった。アナハイム・ジャーナル誌の上に。2,3日風呂に入っていない状態で人に会うのはどうだろうと思いつつ、手早く扉の3重ロックを解除。押し開けると筋肉質の若い男が居た。
「おう、博士の姉御!相変わらず汚ねえ白衣だな!俺も人のことはいえねえオイルまみれだがね!それで、ちょっくらお願いしたいんだが!」
「おお、久しいねリール君。入りたまえ」
 と部屋に招こうとしたのだが、
「いや、依頼のものっていうのはでっかくてさ」
「なんだ、それなら私の専門外じゃあないのか?」
 私はこのジャンクのゴミ山で用途不明なものの使い道を調べることで金を稼いでいる。しかしそれは主に小さな電子部品の解析で、家に入らないようなものは専門外なのだが・・・。
「ほかに頼るツテがなくてよー!とりあえず見てくれよ」
 やれやれ。まったくこの私を便利屋扱いとは・・・。
「どれだね」
 ドアから外に出ると一台のトラックが停まっていた。リールのものだろう。トラックの荷台のビニルシートは大きくふくれている。
 リールがよっと言ってシートを取り払う。すると大人一人ぶんくらいの大きさの金属製カプセルが横たわっていた。
「フムン・・・コールドスリープの容器に似ているが・・・」
「これがどうやっても開かなくてさー!電源が入ってるから下手に切断して開けると中に人が入ってると困るしさー!」
「バッテリーが?生命維持装置が生きてるのか・・・?これはいつどこで拾ったんだ!?」
「3時間前だよ。場所は企業秘密だけど、まぁジャンク屋がよく行くデブリ帯さ」
 生命維持装置に必要な電力がどの程度かは分からないが、こんな大きさの容器ではバッテリーもそう長くはもたないかもしれない。
「とりあえずラボに運ぼう。この程度の大きさならシャッターを開けば入る」
「もしかしたらXeonの攻撃から逃げてきた地球連邦政府のお偉いだったり!そうしたら報奨金でるかな!」
「フッ。口封じに殺されるかもしれんぞ」

----------ふたたび現在
 
「おーいアリスー!帰るぞー!」
 路地とビルディング群がオレンジ色に染まれば、もう夕方である。実際にはグリニッジの地球時間を元にして、この宇宙に浮かぶ巨大住居型宇宙ステーション・スペースコロニーの内部ライトによって演出された照明効果でしかないのだが。
 夕日に照らされたガレージはもうシャッターが閉まっている。
 私は勝手口をくぐって、
「結局あたし一人で買い物行ったんだからねー!持ちなさいよコレェ!って・・・」
「静かにしてると思ったら、寝ちまったみたいだな・・・」
 お姫様は大きな白い宇宙戦闘機のコックピットで長い金髪を細い身体に巻きつけるようにして、すやすやと眠りこけていた。
「まったく・・・どんな夢みてんだか・・・」

おぶって帰りました。

       

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