「コロニーの残骸に核パルスエンジンを組み付けて偽装していた模様」
「移動中のコロニーは一部が崩落しているもののまだ20km近い大きさがあります」
オペレーターから状況報告が入ってくる。
「司令部と連絡をつけろ。作戦は若干の修正をまじえつつこのまま続行だ」
宇宙戦艦La-Gsta艦長ゼーラム少佐が、コロニー移動の報を受けてから最初に指示したことが司令部との通信だった。艦隊司令官の身分でも独断で行動することは越権行為だと判断したのだ。
ゼーラムはその白髪と同じく豊かな白いヒゲを神経質になでながら通信を待つ。
「通信入ります」
モニターに会議室に緊急招集された将軍たちの映像が映し出される。
ゼーラムはヘッドセットを装着する。
「やつらは廃コロニーを移動させて住居コロニーにぶつけるつもりです。我々に残された時間は12時間です」
「報告は聞いている」
一番奥に座るマロニー卿が応えた。
会議室からたくさんの声が飛ぶ。
「この混乱に乗じて我々の包囲から脱出するつもりだろうな」
「それだけじゃない。今回の残党討伐作戦が居住コロニーに危険を呼び込んだことでコロニーには反地球連邦の機運が高まるだろう」
「脱出もできるし反地球連邦の危険分子を増やすきっかけにもなる。やつらにとっては一石二鳥だ」
「長年続いてきた残党狩りも大詰めだというのに、ようやく完成しつつある地球連邦の支配体制を揺るがすことになれば大問題だ」
「絶対にコロニーの激突は阻止せねばならん」
最後にマロニー卿がもう一度口を開く。
「核ミサイルの使用を許可する。コロニーの移動を全力で阻止しろ」
コロニー“シャングリラ”では住民の避難が進んでいた。
シェルターに集まった群衆に渦巻くのは不安とそれを紛らわすための憎悪の言葉である。
「チッ、連邦軍が来なければこんなことにはならなかったんだ!」
「しかし直接的に悪いのはXeonだ」
「得をするのは地球でのうのうと暮らしている連邦の特権階級だけじゃないか」
「コロニー軍が出るらしいぞ?」
「おお、本当か!?俺たちの軍隊!」
そしてそのうわさは本当だった。
そのオペレーターからの報告はゼーラム少佐にとって不意打ちだった。
「なんだと?」
「はい。コロニー軍です。すでに出港してこちらに進軍中です。」
「巡洋艦6隻か・・・。コロニー軍がこんな戦力を保有していたとはな・・・」
初老の副官が口を挟む。
「コロニー軍の介入はまずいですぞ。連邦宇宙軍が持ち込んだやっかいごとをコロニー軍が解決したとなれば、それも反地球連邦の機運につながります」
「コロニー軍から協力の申し出がきました」
ゼーラムは即答した。
「協力に感謝すると送れ」
「協力を受けるのですか?」
「しかし条約によってこちらの指揮下に入ってもらう。コロニー軍はSフィールドの攻撃が担当だ」
「Sフィールドですか?なるほど、戦略的には無意味な場所で奮闘してもらうことで、その活躍を無意味にしようというのですな」
「巡洋艦6隻の戦力もXeonとのつぶし合いで多少なりとも削げるだろう・・・コロニー軍に強大な戦力を保有されても地球連邦の統治には不都合になる・・・」
ゼーラムは息をつく。
「まったく、戦争屋の仕事は敵を殺すことだけにしてほしいものだな」