Neetel Inside ニートノベル
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プラチナバード・ガール
オープン・ファイア(11.19.2012)

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深夜にふと目を覚ます。のどが渇いたな、と思いベッドから降りようとして足を机の角に打ち付けた。
 「いったぁ・・・」
 ベッドを二つも置いたせいで部屋が狭くなってしまっているのだ。
 「ま、これはこれで、アリスは・・・」
 もう一つのベッドの上にアリスの姿はなかった。

――――――――――2ヶ月前

 「クレアといっしょのお布団で寝るー!」
 アリスはどたどたと足踏みして金髪を振り乱してだだをこねる。
 アリスを引き取ってから最初の問題が、どこに寝かせるかだった。女一人でロクなつきあいもなく10年も過ごしてきたので当然ベッドなど1つしかない。
 「一緒に寝るつってもな・・・」
 アリスの精神は記憶喪失の影響か幼稚園児並みのように思われたが、その体は12歳程度には育っているようだった。生理は始まっているのだろうか。たぶん精神年齢的に分かってないだろうなぁコイツ・・・まぁそれはさておき、ともかくシングルベッドに二人で寝ると相当せまいだろうと予想できた。
 「分かった、私は仕事があるから先に寝てな。あとで寝るから」
 「えー一緒に寝るのー!」
 「・・・・・・しょうがないなぁ」
 とりあえず一緒に布団をかぶってみる。案の定狭い。ていうかアリスにちゃんと布団をかぶせるようにすると、私の左半身は布団からハミ出る。
 「電気消すぞ。ほら、腕枕してやるからおやすみ」
 寝静まったら私は毛布で床で寝よう・・・明日ベッドを調達しないとなぁ・・・。
 あぁなんだか私も眠たく・・・。
 「ねぇ!おはなししてー!」
 あーそうくるかー。子供ってそういうノリだよなー。

――――――――――現在

 第一波、2000発のミサイル群が破裂してコロニーの外壁を破壊していく。と、その爆炎の向こうからビーム砲の応射が返ってくる。
 「コロニーの外壁を盾にして応射してきます。ビーム出力から見て戦艦級が数隻」
 「Z+“ヤタガラス”小隊発進!」
 「了解!“ヤタガラス”ローゼス、発進する!」
 3体の機動歩兵がバーニアの閃光を引いて戦艦La-Gstaのカタパルトデッキから宇宙に放たれる。周囲の僚艦からも次々と機動歩兵が発進していく。
 「つづいてミサイル第二波発射!機動歩兵の突入を援護しろ!」
 旗艦La-Gstaと8隻の宇宙戦闘艦からなる第3艦隊はグリニッジ標準時の深夜帯にスペースコロニー“シャングリラ”を出港し、現在Xeonの拠点に対して作戦行動中である。攻撃対象は“シャングリラ”からほど近い廃コロニーで、かなりの数のXeonの残党兵が逃げ込んでいるというリークだった。一年戦争で数多くのスペースコロニーが破壊され、その後コロニー再生計画も進んだが、連邦政府の財政にもかつてほどの余裕がなく、いまだ廃コロニーは多く存在するのが実情だ。その巨大な廃墟は地球への隕石落とし作戦に失敗したXeon残党が隠れるにはもってこいの場所というわけだ。
「Z+隊に続いて、ReZEL隊はスーパー装備で出撃します!」
 スーパー装備はディフェンサー装備とも呼ばれる火力支援装備である。
 「よし、Xeonのムシケラどもを地獄の業火であぶりだしてやれ!」

 「アリス!」
 家の中にいないので、外を探すとアリスは見つかった。探すまでもなく家のすぐ目の前にたたずんでいた。
 「あ、クレア。起きたの?」
 「あんたなにやってんのよ」
 昼間いつも通っていた宇宙戦闘機が連邦軍に接収されたのが相当ショックだったのだろうか。あのガレージのおやっさんも窃盗罪で収監されてしまったし。
 「なんかね。呼ぶ声がするの」
 え、ホラー?この時間帯はこの辺もかなり寝静まってるんだけれど
 「それ、怖い話?」
 「うん。幽霊が私に語りかけてくるの。おのれアントワーヌ、うらみはらさでおくべきかーって、違うから」
 ノリツッコミを覚えたか。成長したな娘よ。
 「いや、違くもないかも・・・」
 そう言ってアリスは空を仰いだ。巨大な円筒形コロニーに正確には空は存在しない。今は照明が落ちているので、対角線上の斜面の宇宙線をさえぎる厚い特殊ガラス越しに宇宙が見えている。
 「誰かが呼んでいるの」
 アリスは宇宙を見据える。
 「誰か、ひとりじゃなくて、もっとたくさんのひとたちが。その子たちは助けを求めてる。・・・誰かが・・・助けてあげなくちゃ」

 そのとき深夜の静寂を切り裂くようなアラートが鳴り響いた。緊急放送だ。
 TVが自動で起動し、キャスターの映像を流す。
『緊急放送です。コロニー市民のみなさまに避難のお知らせです。ただいま当コロニーは危険にさらされており、避難の必要性が重大であると判断されました・・・』
『映像をごらんください』
『私はNeoXeon軍のマラケス少佐である。連邦宇宙軍が我々に攻撃を加えた場合にこのビデオレターは公開される手はずになっている。これは連邦宇宙軍に手を貸したコロニーへの当然の因果である』
『すでに廃コロニー“ユートピア”に設置された核パルスエンジンは始動をはじめている。計算通りに推移すれば、12時間後に廃コロニー“ユートピア”はコロニー“シャングリラ”に激突する・・・!』

       

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