Neetel Inside 文芸新都
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第四章 窒息

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近づいてくるそれを見ながら俺は携帯を見た。携帯の時刻は俺が帰ってきた時刻だった。
   おかしいな、あれだけ走って疲れて眠ったのに、おかしい。
   俺は、とりあえず、この奇妙な現象からの脱出が何より先だと考えた。
   
    この廊下は、前と後ろにしか道がない。上を見ると、蛍光灯があるだけ。この階は、
   曲がり角なんてない、ただ白く、明るい、廊下だ。
   後ろからは、とどまることを知らず、うつ伏せで前進する赤ん坊。前には何もない廊下。
   幅にして、140cm、高さは2mぐらいだ。
   俺の身長は180だから、天井には手が届く。天井を触ってみると石膏ボードだった。
   
    壁を叩いてみることにした。「コンコン」と音がした。石膏のような音だった。
   家の天井とかに使われているアレに似てる。足踏みをしてみた。「パンパン」。
   いかにもコンクリートのようだが石膏だった。靴を履いてるからだな。
   この部屋の温度といい、湿度的な感覚といい、心地よい。
   
    長い石膏の筒の中に閉じ込められていることのようだ。
   そこで疑問が生じた。入口もない自分がいるここを中腹とすれば、
   これだけ密閉された空間では、空気が澱んでいるはずだ。でも、普通に呼吸ができる。
   あと、延々と続くこの廊下の意味だ。廊下の意義としては部屋を接続するために存在するもの
   なのだが、部屋という部屋がない。
   
    全くわからない。

   その時、自分の靴に何かが当たった。
   振り返ると、例の赤ん坊だった。さっきと同じで服を着ていない。
   歳は数ヶ月のように見えた。どこか、自分の子供のころに似ていた。
   さっきの子の爆発を思い出して吐き気を覚えた。
   

     




奇妙にも恐怖よりも現実的にその場を受け入れる方が先だった。
    なぜか、その赤ん坊が、部屋から出るヒントの気がしたからであろうか。
    それとも、赤ん坊も何らかの因果で巻き込まれたのだと感じたからなのだろうか。
    俺は赤ん坊を抱きかかえた。その瞬間、赤ん坊が引きつけをお越し始めた。
    血の気のあった、皮膚が青くなり始め、俺の腕の中で、悶絶していた。
    
     びっくりして、手を話してしまった。「ゴンッ」という、鈍い音が足元でしたのが聞こえた。
    すかさず、起こったことを理解した。虫の息のような鳴き声が響き渡り、目の位置を下に
    しなくても、赤い液体が、純白な石膏の上を絵の具で染めたかのように紅く流れていた。
    もう、起きたことに混乱している自分の気持ちを抑えることができなかった。
    しかし、その状況を覆せるような手立てはそこにはなかった。ただ、立ち尽くしていた。
    
     幾らか時間が過ぎた。地面に染まったその液体は墨汁がごとく黒くなっていた。
    ただ長く続く廊下に微かながら響いていた、あの声も消えていた。
    
     俺は、それの残骸を後にして、何も考えることなく、前に歩いていた。
    歩き続けていると、地面がぬかるみ始めた。石膏は水を吸うとやらかくなる。
    ところどころ、凸凹していた。案の定、俺は滑ってこけた。
    転んだ時、一瞬地面から足が離れた。直後、俺は窒息するかのような感覚に襲われた。
    そのまま、仰向けになるように倒れた。地面に体がつくと息ができるようになったが、
    まだ、息苦しくなった。体中打ち付けたらしく、体中痛かった。
    
     俺ははっと何かに気がついた。そうか、あの赤ん坊は、地面から体が離れたことで、
    窒息死かけていたのか。
    そのあと、仰向けのまま、体の痛みが引くのを待った。

       

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