趣味の領域
世界の終り
女は日記をつけるのが趣味だった
日記といってもだらだらと文字列を並べるのではなく、一日一文で構成されていた
例えば、公園で子供が遊んでるのを見て(微笑ましい風景)
買い物に行き欲しかった物がたまたま安くなっていると(小さな幸せ)
初めての性行為をした日には(大人の階段)など誰でもそう感じる様なことを書き連ねていた
ある日、警察に女が自殺していると通報が入った
部屋へ行くと首を吊った女の死体
その足元には日記帳
調査の結果自殺なのはまず間違いないが二人の警官は日記帳が気になって仕方がなかった
初めのほうは一日一言どうでもいいことが書かれているのだが死亡推定時刻の五日後の日付に(世界の終わり)と書かれている
その五日後は今の明日であり、二人は不安な気持ちになった
二人は改めて周りの住民や職場、友人などに聞き込みをしたが特に変わったことはないという
親には連絡がつかないので仕方なく田舎の実家まで行くことにした
新幹線で片道何時間もかけ実家まで辿り着いたが誰も居ない
周りの住民に聞き込みをしたがどこへ行ったかわからない
二人が途方にくれていると北にある大きな国に隕石が落ち、死傷者千人を超えるというニュースが入った
二人はそれが世界の終わりの前兆であると確信を持った
そしてそれは避けられないことだと悟った
二人は残り少ない人生を楽しんだ
全財産を使い美味しい物を食べ、女を買った
世界の終わりの日
二人に警察署から親が来ていると連絡があったがそんなことどうでもいいと二人は適当にあしらった
遊び疲れ寝てしまった二人が目を覚ましたのは次の日だった
終ったはずの世界にいる二人
現状を理解できない二人はテレビでニュースを見るが昨日の隕石の話ばかり
そのまま動けないでいると信じられないニュースが入った
「五日前自殺した女性の真実が解明しました。死亡推定時刻の五日後に(世界の終わり)と書かれた日記帳があったと以前放送したニュースですが、今入手した話によりますと、女性はネットで自分の裸などを投稿しておりそれがご両親に見つかり五日後にご両親が一人暮らしの女性宅に行く予定だったそうです」
スタジオでは「たしかにその女性からしたら世界の終わりですね(笑)」「ネットに裸を投稿って馬鹿すぎでしょ」などと話し合っていたが二人の耳には入らなかった
――その後二人の世界が終ったのはいうまでもない