ホルマリンで満たされた巨大な水槽に大小様々な生物が漂っている。
奇形の鮫。甲羅の割れた海亀。
得体の知れない深海魚。グロテスクな魚の群れ。
その中に混じって小さな赤いものが頼りなさげにたゆたっている。
目蓋のない瞳でガラス越しにこちらを見つめながら。
両生類の様な顔に 半分透き通った体。
それは堕胎された胎児。腹違いの我が兄弟。
母の愛を知ることができなかった私の分身。
永遠に時を止められた琥珀色の羊水の中で
彼は懐かしくも温かい母の子宮を夢みてる。