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恋愛上等小悪魔理論!
【コンマ00で】今期アニメ何見てる?【悪魔召喚】

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第一章【コンマ00で】今期アニメ何見てる?【悪魔召喚】

要するに、と悪魔は吐息のように毒を吐いた。
「あんたが適当にでっち上げた呪文で、このあたしが召喚されたって訳?」
適当とは何だ、徹夜で作ったんだぜ――弁解は蒸発する。俺はひたすら震える。
「悪いけど、呼び出されたからにはその代償――戴くわよ」
閉め切ったカーテンの隙間から一瞬差し込んだ光が、悪魔のその名のごとき微笑を照らし出す。



さて、暫し顛末を話そうか。
突然だが、中学校生活は悲惨だった。
しかし一年の頃はまだ良かったと思う。確かにスペックの汚点は枚挙に暇がなかったが、決定打となる要因がなかったことがおそらく虐めの歯止めとなっていた。
その微妙な立ち位置が脆くも崩れ去り、ただの空気が生ゴミへと格下げになったのは何時そして何故だったろうか。
身を削って中学を耐え抜き、無事に卒業。そこで気が抜けて、高校生活は一日目でダウンした。それ以降、世の中的には所謂「引き籠り」としてカテゴライズされている。ありがちな話だ。その四文字で俺の三カ月と現在は全て集約されてしまう。
パソコンとアニメに更にのめり込み、睡眠時間は四時間を切った。態々扉の前まで食事を運んでくる母とは暫く会っていない。
ガリガリに痩せた骸骨さながらの体つきは、「糞豚」なる陳腐な渾名を冠していた頃よりはまだ肯定的に取れるかもしれない。
そして俺は深夜アニメに触発されて、ほんの遊び心で悪魔を召喚する。


「思い出に耽ってる途中悪いんだけど」
苛々したように悪魔が口を挟んだ。
「悪気は無かったんだッ、帰れよ」
呆けていた手前決まりが悪かったのも手伝って、ついつい乱暴な口調になってしまった。
「はぁ?突然何?あと『あたしにお帰りいただく』って唯それだけのために一生捧げんの?馬鹿じゃないの?あたしはそれでも全ッ然構わないけどね」
案の上矢のように応酬されて弱気になる。不甲斐ないが腰が抜けて立てないのでどうしても見下ろされてしまうのが少し悔しい。
「まぁちょっとは状況を斟酌してあげるから、日没までに答え出しなさいよ」
何のだよ、と怒鳴った興奮冷めやらぬまま問うと、
「悪魔と言えば契約に決まってるでしょ?!あんたが望むことを一つだけ叶えるのよ!」
精々いい望み、考えなさいよ――と悪魔は肩を竦めて言うのだ。成程、どっちみち俺は死ぬのか。理不尽。
「それまでに答え出なかったら、あんたの魂――無条件で戴いて帰るわよ?」



「俺の望みねぇ……」
じっくりと考えを巡らせるが。
学生復帰したくはない。かといって働きたくもない。
幸いにして父が少しばかり名の知れた考古学教授なので金にはきっと困らない。
有名になりたくない。賢くなりたくない。強くなりたくない。
ゲームソフトは要らない。漫画だっていらない。
何も要らない。
――結構現状に満足とまではいかないものの、安定している自分に苦笑した。
「何笑ってんの?気持ち悪い」
正面から睨まれた。
可愛い、とは思う。ここ最近二次元のキャラクターしか見てこなかった俺でも言える。
少し後ろで跳ねた艶のある黒髪、かなり短めのゴシックロリータからすらりと伸びた手足、ほっそりとした指。憂いを含んだかたちのいい唇と色素の薄い陶器のような肌に長い睫毛。
そして、赤と黒に輝く宝石のようなオッドアイ。
素敵な女性だ。但し見るだけなら、ね。
「ジロジロ眺めないでくれない?減る」
唯一――ここ一時間で見つけた限りだが――の欠点はそう、口の悪さ。
現に今だって、俺の部屋の窓枠に腰かけ、少し上から俺を見下ろして悪態をついている。
まぁ四年間ぐらい女と話すことは無かった訳だから、実際の異性との会話なんてこんなものかもしれない。
小学生のころは、まだ異性に興味はあったし、付き合いたいなんて思う女の子もいた。
中学生になったらそういう感情が無くなった、という訳じゃない。ただ、現実が見えた。
所詮俺は社会のゴミ。ゴミと積極的に関わりたい人間なんている筈もなく。
でも、あと一度だけ、死ぬ間際に夢を見てもいいだろうか――。
そう思いついた俺が情けない。
しかし一時の恥は忍ぶべし。
俺は少しためらってから口を開く。

「彼女欲しいです」

       

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