Neetel Inside 文芸新都
表紙

パーフェクト・イレイザー
プロローグ

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 これは現実のことなのだろうか。
 私は今、息を切らして走っている。苦しさのあまり、胸が押し潰されてしまいそうだ。息が上がっているせいなんかじゃない。自らの犯した罪の重さに耐えられないからだ。
 両手を見ると、血で赤く染まっている。非現実感が私を襲うが、これは夢の出来事ではない。
 右手で握り締めているのはごく小さな「消しゴム」の欠片。こんなものさえなければ、こんな苦しみを味わなくても済んだのかもしれない……。
 しかし、起きたことを悔やんでも仕方がない。頭を数回叩いて気を取り直す。今は急がないと。誰かに見られてしまう前に、完遂しなければならない。頭がフル回転しているせいなのか、どうにも頭が熱い。考えが次々に切り替わっていく。

 ようやく、自転車の置いてある場所に辿り着いた。ハンドルを握ろうとした手が動きを止めた。血で赤くなった手に目が留まったからだ。証拠になりそうなものは消しておかなければならない。
 残り少ない消しゴムを握り締め、血で汚れた部位に押し当てた。それをゆっくりと滑らせていく。
 ああ、立っているだけで眩暈と吐き気が止まらない。
 どうしてこんなことになってしまったんだろう……。

       

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