Neetel Inside 文芸新都
表紙

アルバイター
5.バイトの面接

見開き   最大化      

5.
 杉村は近所のファイブマートで面接の予約を取り、当日余裕のある時間に支度を済ませようとしていた。
 「クソ!ちいせえ!」杉村が昔来ていたスーツは小さくてなかなか入らない。
「ぐうたらな生活で、体が大きくなってるじゃん。」今日子が少し茶化すと、
「うるせえ。変かな?」と明らかに小さいスーツを着た姿を今日子に見せて判断を仰いだ。
「まあいいんじゃない別にバイトなんだし。」
「うん。ちょっと早めに行った方がいいよね?」
「うん。」
「じゃーもう行くわ。」
ファイブマートは歩いて5分もかからない距離だが、30分前には家を出ようとする杉村。
「忘れ物ない?」今日子にそう言われ、鞄の中身を確認する杉村。
「うん。・・・あっ!履歴書!」
「もう!」
「あやべ!証明写真撮ってない!」
「ちょっと!」
「確か近くに、撮る所あったよね?」
「うん。たしか…」
「じゃ、まだ時間あるし撮ってからそのまま行くわ。」
「いってらっしゃい。」
杉村は家を飛び出して、証明写真撮影機が設置されているとおぼろげに記憶している場所へ向かったが、そこにあったのは、アイスクリームの自販機だった。結局もう一箇所の少し離れているが確実に設置されているところまで走っていくことにした。
撮影機までたどりついて撮影を開始したが、髪の跳ね上がりや、ネクタイのねじれなど気になる箇所を微修正していると、訂正が出来ない最後の撮影になってしまった。撮影のカウントが始まり最後の秒数になって突然鼻がむず痒くなって、くしゃみをしてしまい撮り上がった撮影は半眼の状態であった。
「あーもう!」出来上がりに不満が爆発したが、時計を見るともう面接の予定時刻を過ぎていた。しょうがないので、その写真を使おうと履歴書に貼りつけようとしたのだが、スティックノリは事前に用意していたものの証明写真のフチを切るためのハサミを持ってくるのを忘れてしまっていた。
面接場所のファイブマート千川3丁目店に到着すると、杉村はハサミを399円で購入し、いったん外に出て証明写真のフチを切り取り、スティックノリで貼り付けると店内に戻ってレジで会計をしていた顔色の悪く体のどこかに異常のありそうな様子の男へ近づいた。
「お客様何か?」修司は先ほど会計をした男が戻って来たので、何かクレームでも入るのかと身構えた。
「あのー、面接に来たんですけど。」
「ええ…?ああ、はい。」修司は面接の時間を5分過ぎた辺りから、相手はもう来ないのだろうと半ば諦めていた。その面接相手が予想外の形でやって来たことに少し驚いた。
「吉村さーん。」修司はバイトのおばさんを呼ぶ。
「はい。」無表情で近づいてくる吉村。
「今から、ちょっと面接入るから、レジよろしくね。」
「わかりました。」
 レジの横にある、事務室に2人は移動して着席した。ざっと履歴書に目を通して、修司は質問をする。
「ええ~っと、この履歴書にある職歴の某商社勤務っていうのはなんていう会社なのかな?」
「一応、機密事項に関することになりますので、申し上げることは出来ません。」
「あ、そう。社名は聞かないから。どういう事やっていたの?ざっくりでいいんだけど、営業とか事務とか。」
「すみません。」
「あっそう…それで、週にどのくらい働けそう?」
「週五日は働けますね。」
「期間的にはどうですか?」
「実は、ビルメンテの仕事をしようと考えていまして。」
「うんうん。」
「資格試験の勉強に、最低一年間はかかります。なので、最低一年は続けられます。」
「そうですか。…趣味は映画観賞なんだ?どういうの見るの?」
「最近だと、マイティリーとかアベンジョーズとか観ました。」
「ああそう。洋画が好きなの?」
「そういうわけではないですがまんべんなく観ます。」
「そう。でいつから来れそうですか?」
「えっと、明日からでも大丈夫です。」
「そうですか。わかりました。」

       

表紙

シオミシンジ 先生に励ましのお便りを送ろう!!

〒みんなの感想を読む

Tweet

Neetsha