Neetel Inside 文芸新都
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アルミニウム
翌昼

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夜がもうすぐなくなる。明日、夜を買いに行かねば、と私は思う。明日、あの店に夜を買いに行かねば。
普通、昼と夜は2つで1セットである。だから、1日に両方1つずつ消費すれば、片方が先に無くなるというのは、普通ない。ならばいくつかの夜は一体どこにいってしまったというのか。それはきっとソファの裏にでも無くしてしまったのだ。私はすぐにものを無くす性分であるからそれは別に不思議なことじゃない。ともかく、明日忘れずに夜を買いに行こう。

目を覚ました。もう昼だ。覚えている。今日は夜を買いにいく日だ。

並んだ商品が目に入る。昼や夜がずらりと並べられている。ふと見上げるとあそこには昼が1週間単位でまとめられている。あんな風に昼ばかり7日も続いたら嫌だな、と思う。明けない夜はないと言うが、暮れない昼はありうる。
商品を見渡し、視線を横に滑らせていくと、朝が入るべき空っぽの篭が目に写る。朝はもう、ずっと前から売り切れている。実際私が生まれたときにはもう朝は無かった。私が知っている朝の知識とは、本当は夜の次に(昼の代わりに) 来るものらしいということだけである。
「すみません、夜がほしいのですが。えっと、1ヶ月分」
ずしりと腕に、腰に負担がかかる。夜は昼よりもいくらか重いのだ。あの店では昼や夜を若干高級感のある紙袋に入れてくれる。たしかにそれらは安いものではないが、だからといって見た目のよい袋に入れたところで、所有欲を満たす以上の意味はない。持つぶんには手に食い込んで持ちにくい。ともかくこれでしばらくは夜には困らないだろう。一瞬、夜のない生活を思い出して身震いした。あんな生活は考えたくもない。私は一度不注意で夜が尽きたまま夜を迎えたことがある。するとどうなるのか?そこには夜がなかった。昼の次にはなんと昼が来たのだ。私は世界が崩れていくのを感じた。そのとき、私には世界が狂ってしまったのかそれとも私が狂ってしまったのか分からなかった。しかし、いま思えば狂っていたのはどう考えても私である。そうして、歩いているうちに手にさげた紙袋が少し軽くなるのに気づいた。思考をやめ前を向けば辺りは既に暗くなりかけていた。ここが昼と夜の間だ。

       

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