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白の部屋
その言葉はサロメピンク

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わたしたちは一心同体
だからわたしはきみの幸せをねがって協力しよう、
しんでいるかれらのしあわせをうばって。




白の部屋  第八話
「その言葉はサロメピンク」



リコは何かが頭の中で絡みつくように言葉がぐるぐる回ります。
それが何を言っているかはわかりませんが、
このまま聞きいってはいけないことはわかりました。
頭を振って言葉を遠ざけると、
ロゼの楽しそうな声が耳に入ってきました。


「公園だあ!」


そこは、リコがとても記憶にある、
滑り台とブランコ、砂場とジャングルジムのある公園です。
小さいけれど、自然のある公園。
不思議と周りに人はいません。


「滑り台!滑り台すべろうよー」
「いやいやっブランコだろ!」


ばっちーはまっすぐブランコに向かいます。
まってよー!、とロゼがそれを追いかけます。
リコはなんだか一緒に楽しくなって、
二人のもとに駆け寄ろうとしました。

・・・ぼくも一緒に、遊びたいなあ・・・

頭の中で絡みついてくる言葉が、
ふと文章になって呼びかけてきます。
また、あたまをふって言葉を遠ざけます。
嫌な予感がします。
だって、何だかその声は、カンセルの声にそっくりなのですから。


「リコー!こっちおいでよー!」


赤い色の、まあるい花を持ったロゼとバッチーが、
リコを公園の一角の原っぱに呼びます。
二人のもとに走っていくと、
二人は手に持った花の花びらを一つぷちりとむしって、
先端を吸っています。


「リコ知ってる?アカツメクサ!」
「ここのミツ、甘くておいしいんだぜ。」
「はい!どうぞ!」
「・・・ほんとだ、あまい!」


差し出された花びらを、
二人を真似して吸ってみます。
ほんのり、本当に少しだけですが、
口の中に甘みが広がります。
しばし三人はバラバラになって、
今度は四つ葉のクローバーを探すことになりました。
するとすぐに、ばっちーが公園の滑り台の向こうから
声を掛けてきました。


「おーい!こっちに扉があるぜ!」


ぴょんぴょんと跳ねながら、手招きをしています。
リコとロゼは、それを見て嬉しそうに駆け寄ります。
リコが走りだしたとき、
はっきりと耳元で聞こえてきた言葉がありました。
ぞわりと背中に嫌な感じが走ります。


「ねえ、リコ。ぼくが何故、ばっちーやロゼを連れて行かないかわかるかい?」


それは確実にカンセルの声です。
思わず走る足が止まります。
後ろを振り返っても、周りを見渡しても彼の姿は見えません。
少し怖くなってきます。


「彼らをぼくが連れて行かないのは、
それはね、二人が「生きていない」からだよ・・・」
「生きていない?」


リコは思わずちいさく言葉を返しました。
それでも、彼の言葉を聞くまいと、
耳をふさいで妖精たちのもとに駆け寄ります。
寒気がずっとありましたが、
二人のもとにたどり着くと、不思議と寒気はなくなりました。
扉は、木製で、ユリの花の絵が描いてありました。
まるで、結婚式場の様なとても立派な扉です。


「・・・大丈夫?リコ。なんだか顔いろ、悪いみたい。」


ロゼが手を握ってくれます。
いつだって、ロゼが手を握ってくれると安心します。
それを見たばっちーは、額に手を当てて熱を計ります。


「・・・熱は・・・ないみたいだなあ。」


リコは二人の不安そうな姿に、
なんだか少し笑ってしまいます。
それを見て、二人も顔を見合わせて、
なんだか恥ずかしそうに笑います。


「大丈夫、具合悪くなんてないよ。」
「そう?無理しないでね。」
「よっしゃ!じゃあ次に行きますか!」


三人はまた元気に扉を開きます。
また光が飛び込んできます。
でも、リコの心の中に、あの言葉が引っかかったように残ります。


ロゼとばっちーが、生きていないって、どういう事なんだろう?



リコの心でぐるぐる回るその言葉に
答えてやろうと笑う姿が一つありました。




     


       

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