Neetel Inside 文芸新都
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LOWSOUND 十字路の虹
48 Witch Of The Tower

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 マリアが大学へ行こうと駅を出て歩いていると、見慣れない巨大な塔が見えた。周辺の高層ビルより遥かに大きい、白い石造りの建物で寺院のようにも見える。あんなものがなぜいきなり出現したのだろうか。大学の近くで、名前は覚えていないが、なんどか同じ講義で顔を見た男子生徒がいたので、あんな塔あったっけ、と聞くと、
「あれは塔の魔女様のいらっしゃる塔です。魔女さまが大陸中央部からこのたびあの位置に引っ越してきたので塔も一緒に動いてきたのです」
「しかしあんなものがいきなり街中に出現したら」マリアは言った。「邪魔というか、日照権とかでいろいろ揉めるんじゃないかな。許可も得ていないだろうし」
「一両日中にまたどこかへ移動するので心配はないと思いますよ。もちろん、市当局としては面白くないでしょうから……」
「攻撃をしかける?」
「その可能性はあるかもしれません。魔術あるいは物理的な攻撃、例えばクラスター爆弾やナパーム弾、中性子爆弾などを用いて塔を攻撃するかもしれません」
「それはまずいね」
「まずいですね。塔の魔女様がお怒りになられる。魔女様は〈銀太陽結社〉の主幹の一人、帝都における公認の魔女ですが西海岸のこの都市当局や〈正統魔女会〉は常に攻撃の理由を探していますからね」
「なら今日は学校にいかないで帰ったほうがいいかな」
「そうしたほうがいいと思います。もしかすると大学構内へ迫撃砲弾や手榴弾やぶどう弾が飛び込んでくる可能性もなきにしもあらず」
「じゃあそうしよう」
 そうしたところ、その日にレポート課題が出されていて、これを提出できない場合単位を取れないというのをマリアは翌週知った。教授に対して、しかし前週に塔の魔女の塔が設置され市当局がそこへ攻撃をしかける可能性があったので安全のため休みました、と説明したら、は? こいつは何言ってんの? みたいな顔をされ、やむなくその授業を放棄した。塔はもちろん跡形もなく消えていたし、誰に聞いてもそんな塔はなかったと言うし、〈銀太陽結社〉に電話して確かめてもそんな魔女は所属していないという。そしてマリアに休講を薦めた男子生徒も、いくら学内を探しても見つけ出すことができなかった。

       

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