Neetel Inside 文芸新都
表紙

黒兎物語
102 ワーカァ

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※ソフィアとクローブの年齢差について。
黒兎物語ではエンジェルエルフ族は見た目が若いほど老齢という設定を採用しております。さらにソフィアの作者の先生とも見た目がキャラシの年齢に見えるという解釈で良いとのご意見を受けましたため、この方法を取らせていただきました。とはいえ、ソフィアがクローブの乳母だったことは、私自身の解釈不足が発端であることに変わりありません。では、本編へどうぞ。






 ワーカァ蔓延るセントヴェリア城の地下道をくぐり抜け、
セキーネ・ディオゴ・ネロ・ヌメロの4名は城の水道施設へとたどり着く。
城という身体を背骨のように突き抜けて生える精霊樹が
その施設の部屋という部屋の根を張っている。

そこにもワーカァ達の監視の目は光っていた。

「うけけけけけけけ」

「へひゃひゃひゃひゃ」

ヨダレを垂らし、脳に障害を患っているようなのは明らかだ。
露になった頭には多くの手術痕がある。

(ひでぇことしやがる・・・・・・)

エンジェルエルフ族は、上等種と下等種に分けられる。
前者は純粋なエンジェルエルフの血統を持っている者、後者はドワーフや人間など
彼女達の部族が言う「いやしい部族の血を引いているモノ」たちである。
エンジェルエルフ族は至上主義者ばかりだと勘違いされがちだが、
その風潮はミハイルことアレクシアの父ミハイル3世の時に激化したものである。
ミハイル3世が就任するまでは、エンジェルエルフ族も多少は東西南北エルフ、ドワーフや人間といった
別のエルフ族あるいは比較的外見がエルフに似ている民族を受け入れていた。
これはエンジェルエルフ族が近親交配が進み、衰弱の一途をたどりつつあったことへの
対策である。ザーメンのように色濃くドロドロになった血液を薄める必要があったのだ。
そのため、多くの混血児が誕生した。だが、3世の就任後 混血児は排除されていった。
ただ、混血児は一応エンジェルエルフではあるのでそのまま殺すのは残虐だという意見もあったため、
ロボトミー手術を施して兵隊アリとして上等種を護るための駒として生かす処置がとられたのだ。
ただし、東西南北エルフの血を引くエルフは元を正せば同じエルフであるし、
エンジェルエルフ同士だけでは生まれなかった優れた品種を生み出すことにも成功したので
除外された。


ミハイル4世、ソフィア、クローブは前者に分類される。
ワーカァとフレイアは後者に分類される。
なお、諸説あるが実はニツェシーアも後者に分類されるらしい。

フレイアはサウスエルフ族の血を引くエルフであり、極度のあがり症で無口ではあるが、
暗殺者としては非常に優秀であったため、混血児ではあったが部下として登用された。
一説によるとニツェシーアは実のところ、祖父がドワーフの血を引いていたらしい。
そのために彼女を除いた一族は全てワーカァにされた。
生き残った彼女は名前や顔を変えて、ミハイル4世の側近として近づいた。
元々の彼女の変態性もあったが、ミハイル4世に心の底から信頼されてから
裏切る方法で復讐することにした。
(本人曰く【いつ潮噴きするのをグッと堪えて、潮を拭いながらこの日を待ちわびていましたわ】とのこと。)
そして、ちょうどいいところに黒騎士という敬愛すべき男が現れ、積年の恨みを果たしたとも言われている。
(なお、この説には如何せんご都合主義な要素が否めず、彼女のミイラとされる遺体を調査した結果からはドワーフのDNAは
検出されなかったともされている。)


話が脱線したが、戻そう。
そのワーカァ共は痛みを麻痺させてある。
胸や腹に風穴をぶち開けた程度では死にはしない。

(くそ・・・・・・厄介ですね。)
苦虫を噛み潰したようにセキーネが言う。
視覚魔法で4人は光学迷彩を施したローブを纏っているが、
効果は2~3時間程度しかない。あと、数十分で効果が切れそうだった。
ミハイルとの戦いに備えて沢山の魔力を消耗する視覚魔法だけを使うわけにもいかない。

(ああ、まずいな。肝心の場所にワーカァがいやがる。
沈黙殺(サイレントキル)で殺せるほどヤワな奴らじゃァあねぇ・・・・・・)

ディオゴも策を練るが、一向に良い案は浮かばない。

素早さを生かすが故に、兎人族は紙切れ一枚ほどの耐久力しかない。
脂肪を排除し、筋肉という筋肉、それも瞬発性を備えた圧縮された筋肉は
弾丸以上の素早さを誇る。だが、それ故に持久力はない。
筋肉を維持するために燃費が悪くなってしまうのだ。
兎人族に大食らいが多いのに筋肉が多いのは、このためである。
兵役義務を終えた程度で後は音楽家として過ごしているだけのダニィ・ファルコーネですら
見た目、筋肉隆々なのはこのためである。
(本人曰く「退役してからデブになった」「かなり太っちゃった」とのこと。)
それゆえに、兎人族は暗殺術を得意とする。相手に悟られる前に決着をつける短期決戦。
故に同サイズ、並の耐久力を持つ相手に対しては無双と言える戦闘力を持つ。
とどのつまり、長期決戦は大の苦手である。そんな戦いを
女の子の顔にチンポを押し付けるかのように押し付けてくる相手・・・・・・
とどのつまり、自らよりも巨大で 不死に近いほどの耐久力を持つ相手に対しては圧倒的不利に立たされる。

ワーカァはまさに彼らが不得意とする相手だ。
それゆえに彼らは戦闘を避け、彼らの監視の目を掻い潜ってようやく施設まで忍び込んだが
肝心なところで足止めを食らってしまったのだ。

       

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