ディオゴはコートの胸ポケットから一枚の写真を取り出した。写真に映っていたのはディオゴと、その従姉ツィツィ・キィキィ・・・そして、2人の特徴を受け継いだ風貌をした男の子と女の子であった。
(・・・ディアス・・・モニーカ・・・)
男の子ディアス、女の子モニーカ・・・御察しの通り、彼等はディオゴとツィツィ・キィキィの子供である。
ディアスは父親ディオゴの茶髪と尖った犬歯、母親ツィツィ・キィキィの白い肌を受け継ぎ、黒兎人族特有の4つの兎耳と、2つの人耳を持ち、背中からは黒いコウモリの翼が生えている。
モニーカは、弟のディアスと違ってコウモリの翼も生えておらず、兎耳も2つしか生えていない。故に、一見してあまり2人の特徴を受け継いでいないようだ。だが、亡き祖父ヴィトーを彷彿とさせる真っ黒な髪の毛と、亡き叔母モニークに瓜二つの顔立ちをしている。まるで、父ディオゴと母ツィツィの血の奥深くに眠っていた大切な者達の忘れ形見をこの世に甦らせようとしたかのようだった。
(・・・たとえ何処に居たって 父さんも・・・母さんも・・・お前たちを愛してる)
ディオゴは写真に映る3人の愛しき者達を 暖かい優しく見つめるのだった。
~10年前~
亜骨国大戦戦時中
アルフヘイム北方軍
ブロフェルド駐屯地 外来宿舎 1F
月明かりに照らされる外来宿舎1Fの
娯楽室・・・就寝時間中には誰も来ないこの部屋で2人の亜人の男女が裸で抱き合っていた。。
「はぁっ・・・はぁっ・・・」
「ぁう・・・あっ」
男は人間タイプの黒兎人族・・・ディオゴ・J・コルレオーネ。
女はコウモリ人族のツィツィ・キィキィ。2人は夜の営みをしていた。
ツィツィは仰向けに寝そべるディオゴに跨がり、妖艶な甘い声と吐息を挙げていた。まるで、ディオゴの雄を味わうかのように優しくその美しい腰を前後に振らし、実った2つの果実を揺らす・・・
「んぁっ あっ ぁっ ぁうっ」
ツィツィは普段の姉御らしい性格からは想像出来ない程の甘くて可愛らしい喘ぎ声を挙げ、途切れ途切れに鳴いた。
「はぁっはあっはあっ」
彼女の鳴き声と腰づかいと、彼女の膣の温もりで、ディオゴの男根は
巨人の指の様に怒張していく。それと同時に、ディオゴの呼吸もだんだんと激しく乱れていく。
ディオゴはたまらず、起きあがり
ツィツィの唇を貪るように食らいついた。
「・・・んふっ んっ!」
大蛇のように強烈にディオゴは、彼女の舌を締め上げるかのように絡めた。思わずディオゴの唇を振り解こうとするツィツィ、ディオゴは少しばかり微笑みつつ舌を離していく。
だが、彼女の唇への執着は抑え切れないのか獣のような吐息を漏らしながらディオゴはツィツィの唇を舐め回す。ツィツィはあまりのしつこさに彼の頬を両手に狭みながら、唇を離し、額をこすりあわせながら、途切れ途切れに吐息を漏らした。
「ゴメンよ・・・姉御」
「・・・ホントだよ・・・ったく 昔より強引になりやがって・・・」
かつてディオゴの初夜の相手を勤めたことのあるツィツィは、彼のあまりの変貌振りにフフと優しく微笑んだ。
「姉御・・・・・・このまま イッちまってもいいか・・・?」
「・・・あ あたしもそろそろ限界だは・・・早いとこ・・・・・・止め刺して・・・」
ディオゴはそう言ってツィツィを抱き締めると、彼女の中に突き刺さっている自分の肉剣を、更に奥へと突き刺していく・・・
「ぁうッ! あ!」
自身の中を抉られ、襲い掛かる快楽にツィツィはディオゴの首筋に噛みつく・・・そして、最早それだけでは耐え切れず、背中に回した両手は自分を抱いている男の背中を握りしめ、肉を掴み取ろうとせんばかりであった。
「は・・・ あッ・・・ぅうっ!!」
ディオゴが身震いを始めた途端、
ツィツィは自分を抱く男の精子が自身の中に大量に流れ込んでくるのを感じた。
「あッ・・・あ!!」
ツィツィはこのままディオゴの精子を一滴もこぼさぬようにと、彼の肉剣をコブラの如く強烈に締め上げる。たまらず、ディオゴは自身の種を彼女の中にバラまいた。
暫しの静寂が流れ、ディオゴはそのままツィツィを強く抱きしめていた。
「はぁ・・・っ! はぁ・・・っ!」
自身の体内で蠢く精子を感じながら、ツィツィは何も言わず、ディオゴを温かく抱きしめた。女の味すら知らず、ただ自分に身を委ねるだけだったあのディオゴが、こうして女一人満足させられる程、成長したことが誇らしかった。
「・・・モニーク・・・モニークっ」
ツィツィに抱きしめられ、ディオゴの胸に秘めていた悲しみが零れ落ちた。最愛の妺を目の前で失い、救うことが出来なかった悲しみがこみ上げてきたのだ・・・
「・・・ディオゴ」
ツィツィはそんな彼が愛おしくてたまらなかった。従妹のモニークを失って悲しみに打ちひしがれていた自分の背中を撫でてくれた従弟ディオゴ。悲しむ顔など一切見せることなく、陽気に笑いながら
「久々にセックスしようぜ、なァ姉御?」
と笑いながら涙で目を腫らす自分を元気付けようとした彼ディオゴが今こうして縋るように抱き付いている意味・・・彼はただ強がっていただけなのだと。妹を失った絶望と悲しみをもはや隠しきれず、自分に救いを求めているのだと悟り、思わずその姿にツィツィは心打たれてしまった。
「・・・あなたを癒やしてあげたい」
月明かりに照らされる2人の身体が、まるで広大な宇宙に孤独に輝く
美しい月の様に光り輝いていた・・・
これより11カ月後に生まれる2人の娘モニーカが、
亡き叔母のモニークの影響を強く受けているのは
ディオゴのモニークを失なった悲しみの種が原因なのかもしれない。