Neetel Inside 文芸新都
表紙

スメグマコミュニケーション
ハムスターのスメグマ

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 父は嘆き悲しんでるんだけど、母は俺のチンカスが売れるのを喜んで、毎日金金金金っつって俺のチンコをいじくりまわすような生活がしばらく続いた。正直うぜえ。うぜえ。あー、マジうぜえ。こいつら死ねばいいのに。

 そんなこんなで両親を殺したくなったんだけど、いきなり人間を殺すのは抵抗があると思ったので、最初は小動物から手をつけてみることにした。そうして徐々にステップアップしようと思ったのだ。

 ペットショップに行き、一匹三百円のハムスターを五匹購入。そのあとスーパーで、ハサミとカッターナイフ、ピンセットも購入。
 まずは血に慣れよう。

 俺はハムスターを解剖する。麻酔なんてないから、ハムスターは手の中で暴れる。どうやって大人しくさせようかと考えたけれど、どうせ死んだら動かなくなるので、俺は暴れるハムスター頭部を一気に切断。絶命。南無。
 そして腹部を開く。気持ち悪い。生々しい感触、臭いに吐きそうだった。慣れない手つきで、俺は一匹のハムスターをバラバラにしていく。押し寄せる罪悪感に負けず、俺は二匹目、三匹目と解体していく。四匹目になると、躊躇することもなく、あっさりと仕事は終わる。

 血に慣れるという目的は達したので、もういいか。
 俺は五匹目を逃してやることにし、裏山に放してやった。こんなちっこい小動物が野生で生きていけるのか心配だったが、まあ、うまくやってくことを祈ろう。せっかくだから名前をつけてやろうと、俺はそのハムスターをスメグマと命名する。

 スメグマは小さな身体を揺らし、山に登っていく。俺は手を振った。元気でなスメグマ――と思ったところで、そいつはいきなり飛び出してきた猫に咥えられ、あっという間に消えていった。もうすぐ猫の胃の中だろう。あーあ。
 スメグマご愁傷様。

 ハムスター→人間、というのも大分飛ばしてるので、次はもうちょい大きい生物でいこうと思った。何にしようかと悩んでいると、目の前にスズメが飛んでいた。スズメは小さいなあ……と、そのスズメのすぐ後ろをカラスが飛んでいた。スズメにあわせ、カラスが飛んでいる。なんだろ、仲良いのかな。

 瞬間、カラスはスズメに攻撃を仕掛けた。なんだケンカか、と思ったけれど、そんな生やさしいものでもない。多分、カラスはスズメを喰おうとしてるんだろう。いやースズメ逃げてー、なんてスズメを応援していると、スズメは家と家の細い隙間に逃げ込んだ。カラスも後を追ったんだけど、いかんせん、その図体では通り抜けることが出来ず、すっぽりと挟まってしまった。ラッキー。地上二メートル付近で壁と格闘するカラスを、俺は網を使って捕獲、その首根っこを掴み、思い切り握りしめる。ギャーギャーと鳴きわめき、バッサバッサと翼を羽ばたかせるが、俺はお構いなしに、というよりそれ以上騒ぐなと言わんばかりに、全力で握り潰す。ギュ、という音がカラスの喉から漏れ、それっきり、カラスは動かなくなった。絶命。南無。

 俺はハムスターの死体の横にカラスを並べる。実験材料は一気に十倍以上の大きさだ。バラバラは体験済み。カラスはどうやって殺そうか。いや、すでに死んでいるのだけれど。しまった、殺さなければよかった――と、面白い使い道を思いついた。カラスの真っ黒な羽を使って、恐怖感を演出しよう。郵便受にカラスの死体、家の中は羽まみれ。想像しただけでなんて恐ろしい。俺ならションベンを漏らしてしまいそうだ。最高だ。逝ってしまう射精してしまう。

 カラスの死体は冷蔵庫で保存しておくとして。さて、次なる俺の行動は、どうすればいいものか。ハムスター、カラスと殺しておいて、次に人間は、果たして殺せるのだろうか。まだ不安だ。となると、更に大型の動物を殺しておこう。そして思いつくのが犬だ。犬。大型犬。ちょうどいい。俺の家で飼っているゴールデンレトリバーのムク助を殺そう。両親の愛犬、見るも無惨に惨殺。精神的ダメージは計り知れない。じゃあ早速、一階で寝ているであろうムク助を俺の部屋に連れてこよう。

 そうして階段を下りる。すると、奇妙な感覚。なんだ、変な臭いがする。死の臭いだ。チンカスの臭いだ。ごめんそれは嘘だ。まさか、親がカラスを冷蔵庫から出してしまったんじゃ。ファック、ガッデム。カラス計画おじゃん。

 どうやって言い訳しようかと考えながら俺は台所に向かう。臭いはいっそうキツくなる。
 予想外の事態が起こっていた。俺が殺したいと望んでいた母親が、台所で死んでいる。はあ? なんで?
 目の前には包丁を握った見知らぬ女。結構若くて美人。紺色のスーツだからか、返り血が目立ってないけれど、顔とか腕とか血まみれ。

「あーあ、見つかっちゃった。息子さん? ごめんね」
「別に謝らんでもいいよ。俺も殺そうと思ってたから」
「何それ」
「別に。あんたが今殺した母親、もうすぐ俺が殺す予定だっただけ」
「そっか」
「そう」
「…………」
「…………」

 会話が続かない。そりゃそうか。

「えっと……あのさ、よくわかんないけど、風呂でも入れば? 血まみれだし」
「そんなこと言って、風呂入ってる間に警察に連絡するんでしょ」
「しないよ。別に」
「風呂はいいや。それより、気にならないの? どうして私があなたのお母さんを殺したのか」
「どうでもいい。俺には何も興味がないから」
「教えてあげる。私、あなたのお父さんの浮気相手なの」

 興味ねーっつったのに、そいつは事細かに説明し始めた。浮気は二年前から。俺の父親の性格が好きだとか。最近別れるとか言われたとか。別れるならあんたの妻を殺すって脅したんだけど、父親は聞く耳持たなかったとか。それが昨日のこととか。そんで今、実際に俺の母親は絶命してる。なんとも行動力のある女の人で。

 そこで俺は、父が浮気相手と別れる理由が、チンコがなくなったからだと推測する。そりゃそうだ。浮気相手なんてもんは単純に言えばセックスフレンドだ。セックスできないならどうしようもない。パソコン買ったけどキーボードが無い、みたいなものだ。何もできない。

「あなたはどうして親を殺したいと思ったの?」

 自分が言うだけ言ったからって、俺に話を振りやがる。すげえめんどくせえ女。

「まあ、色々あって。めんどくさくなったっつーか」
「ふうん、子供も大変なんだね」
「大人ほどじゃないよ」
「まったくね」

 さて、こんな状況でほのぼの会話してられねー。俺は血まみれの母親を背負う。あー重てえ、このデブが。そのままずるずると洋服ダンスのある部屋まで行き、無理矢理タンスに押し込んだ。あー、これからどうしよう。死体の隠し方なんてまだ考えてねえっつーの。

「ねえ。手伝ってくれる?」
「何をさ」
「死体遺棄」
「当てあんの?」
「車で来てるから。山とかに捨てにいこうよ。私一人じゃキツいからさ、手伝って」
「あー……まあ、いいよ」

 そんな流れになって、俺は車のトランクに母親を詰め込んだ。それで今、俺は女と一緒に山道を走っている。

「ねえ、名前は?」
「俺? 裕太」
「裕太は高校生?」
「いんや。大学生。二十二歳」
「もう卒業だ。卒論とか大変だね」
「まあね。教授の機嫌取りがだるいよ。つっても、もう大学行く気ないけど。殺人犯だし。どっか逃げないと」
「そりゃそうか」

 車が止まる。ここらへんに埋めようってことかな。
 スコップで穴を掘りながら、女は言う。

「……あのさ。キミ、まだお父さんを殺す気ある?」
「ん。あるけど。そういやあんた、父の浮気相手だもんな。まだ好きだろうし、そりゃ死んで欲しくないよな」
「ううん。そうじゃなくて。私も殺したいと思ってるから」
「じゃあ譲るよ」
「あの人を殺して、私も死ぬ」

 よく聞くフレーズだけど、本当に実行する奴を見るのは初めてだ。まだ実行してないけれど、こいつなら確実に遂行すると思う。

「じゃあ、頑張って」

 と俺はうわべだけの応援をする。

「次も手伝ってくれない? 手伝ってくれたら私の持ってるお金、全部あげるよ。三千万くらいあるから、すべてが終わったらキミは海外に逃げればいいよ」
「俺、英語喋れねーよ。それに金なら不自由してない。俺、生きる金塊だから」
「何それ。ふふふ」

 冗談じゃないんだけどな。まあいいか。
 そんなこんなで母親を埋め終わった俺たちは、車で俺の家にまで戻った。そして家の中をひたすら掃除。犬のムク輔がキューンキューンワウワウとか鳴いていやがったから、うるせえとケツを叩いて庭に放り出しておいた。庭でもキューンキューンと悲しそうに鳴いてやがる。母が死んだことがわかっているのだろうか。
 しかしどうしよう。警察がこの家を調べたら一発でバレるし。科学捜査は常に進歩してるだろうから、俺が犯人ってバレバレかもしれん。ルミノール反応とかそういうので。困ったなあ。

「じゃあ私、これからお父さん殺してくるから」
「いってらっしゃい」

 俺は手を振る。あの人が殺してくれるってんなら、俺が手を汚す必要もない。
 あの女の人、父を殺した後に死ぬっつってたから、全部の罪をなすりつけても構わないよな。
 ということで、俺は全部あの女のせいにすることにして、オナニーでもしていようかな。オナニーのまえにチンカス掃除だな。

 そうして俺は今日もスメグマコミュニケーション。

       

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