【雑誌名】週刊ヤングVIP
【作品名】ヒトミちゃんの受難
【作者名】たけまだお
【作品URL】http://sjm.namidaame.com/hitomi01jpg/index.html
【ギャグにしては上品、もっとゲスくいってほしい】
これまでの感想で何となく察せられたかもしれないが、漫画素人による個人の主観なので偏った感想だし、厳しいことを言っていてもあんまり深刻に受け止めないで欲しい。何様だお前とか思われるようなこともあるかもしれないがご容赦頂きたい。
さて、本作はあの名作「失せモノ探し」たけまだお先生の新作だ。
相変わらず絵も綺麗だし、本作の特徴としては漫画的にコミカルで動きが分かりやすく、読みやすい。
ギャグ短編としては完成されていると思う。
ただ読後感が…何かこう物足らない。
「え? これで終わり?」という感じだ。
漫画としてはクオリティも高いし、「失せモノ探し」より読みやすくなった。
ダークでシリアスな「失せモノ探し」と比べれば、まぁギャグだから軽い読み口なのは当然だけど。
安心して読めるが、新都社にギャグ受けを期して投稿するならば、もう少し毒やツッコミどころが欲しい。
極端だが、「ダップラー晴男」のような「ツッコミどころしかねぇ」というようなクソ加減。
もしくはたけまだお先生の「恋のしじま」「溺目金」のようなゲス加減。
つまり、ギャグにしてはお上品すぎる。
・ベビーシッターのヒトミちゃんが依頼者から「禁煙よ」と言われていたのに、依頼者が見えなくなった途端に速攻タバコを吸いだす。
・ベイビーをさらった子供が身の上話をして、それにヒトミちゃんが同情してるすきにまたベイビーをさらって逃げ出す。
・ヒトミちゃんが投げた缶コーヒーが巡りめぐって、ヒトミちゃんをすっころばし、それでも子供にカカト落としをする。
主なツッコミどころというか笑いどころはその3つぐらい。
なかんずく無理にコメントを書くなら「ベビーシッターのくせにタバコ吸うな」というつまらないツッコミぐらいしか出てこない。
それをもう少し過剰というか、ブラックさやゲスさを味足ししてもらえると、ちょうど私好みにはなる。
「溺目金」「恋のしじま」では、どちらもキャラクターのゲスさは本作に比べ突き抜けて高くて面白かった。
だから余計、ヒトミちゃんのゲス度に物足らなさを覚える…。これからかもしれないけど。
他に違和感としては、結局、ヒトミちゃんはマダムにバレずにベイビーを無事に渡すことができて報酬を受け取っていること。
タバコは吸うわ、ベイビーを拉致されるわ、そういう失態がマダムにバレそうになるドキドキさを付け足してほしかった。
そしてヒトミちゃんが叱られて報酬貰えないといった酷い目に遭わせてほしかった。
この程度で済んで、どこが「受難」だというのか。
でもこの持ち味のままでいいという読者もいるだろうから、完全に私の主観と好みで言ってるだけだが。
これだけ高い画力なのに、「おいしい」ポイントが少なく強烈に感じないのはもったいないと思うのだ。
画力の無駄遣いとまでは言わないが、作画エネルギーの燃費が悪いとは思う。
ただこれも、何度も言うが、あくまで私好みの新都社向けのギャグではないからという感想になる。
商業志向であれば、少々物足らなさはあるが、別にこのままでも良いだろう。
【商業誌に載せる「こち亀」路線なら別に良し】
やはり、たけまだお先生は商業向きな作家さんだと思うのだ。
本作が「ヒトミちゃんの受難」となっているように、基本的にヒトミちゃんが酷い目に遭うのを笑う内容であれば。
ジャンプの「こち亀」みたいな路線であれば全然アリだと思う。
ちょっとゲスいが憎めないというか人情も見せているヒトミちゃんなので、キャラクター的にはちょうど両津と被る。
イケメンだけど間抜けでゲスなヒトミちゃんというキャラクターも母性をくすぐり女性読者にばっちり受けそうだ。
「こち亀」の絵柄は完成されているが、ちょっとくどいところがある。
たけだまだお先生のスタイリッシュな絵柄なら女性読者もついてくるだろうし、安心して商業誌に載せられるだろう。
いずれにしろ、1話だけではまだ判断がつかない。
2話、3話と続いてきて、新しいキャラクターも投入されればまた違った見方も出てくると思う。「こち亀」でいう麗子や中川や部長みたいなキャラを投入して掛け合いをした方がより面白くなりそう。
漫画としてのクオリティ自体は間違いなく商業レベルなので、今後に期待したい。
「恋のしじま」がギャグとしても非常に面白かっただけに、本作もそれぐらいの切れ味が欲しいところだ。