【雑誌名】コミックニート
【作品名】皇国坂クライマーズ
【作者名】かとー
【作品URL】http://comickato.web.fc2.com/kokokuhills.html
【坂の上は遠い】
司馬遼太郎先生の名作小説「坂の上の雲」をベースに登場人物全員を萌え女性キャラに置き換え、随所に出てくる豆知識とで「日本一分かりやすい日露戦争」を目指した作品。
今時風に言ってみれば「ガールズ&ロシアウォーズ」である。
ただ、やはり作画カロリーが大変そうである。
あの江川達也先生も「日露戦争物語」を描いていたが、22巻も単行本を出していたにもかかわらず、まさかの日清戦争編で男坂するという壮大なギャグをかましたのは記憶に新しい。
ゆえに、一番の懸念は本作もそうなるのではないかというところ。
果たして「どこまでやるのか?」
Sルーズベルトも出ていたが戦後処理のポーツマス会議までやるのか?
2009年連載開始の本作ははや7年目を迎えようとしている。
更新履歴をサイト下部に示しているので、更新ペースが徐々に遅くなっているのが一目瞭然だ。
2012年はかろうじて月刊ペースだったが、2013~2015年は隔月ペース。本年度もそうなりそう。
2011年からの旅順攻略戦だけで実に5年だ!
これからのスケジュールを書いておくと…。
・黒溝台会戦
・奉天会戦
・日本海海戦
・樺太作戦
・ポーツマス講和会議
という流れである。
───イヂチィ!
この遅れ、どう取り返すというのだ…!?
大本営からトモエ元帥の早期攻略を急かす怒声が聞こえるようだ。
【人物の再評価】
日露戦争を分かりやすく描いてくれている本作では、日露戦争に参加した人々を再評価する機会を与えてくれる。
例えばノギ・イヂチ。ノギは優れた司令官だとは思うが、嫌な面もある。
それが良く表れているのが「前哨戦3」で、5000人の死傷者を出した時の事。
コダマやイヂチの見立てではそれは戦果に見合った犠牲だった。
しかし大本営や第三軍モブ幕僚らはまったく理解せず、イヂチを無能と罵る。
これに対し、ノギはイヂチをかばいはするが、それは「イヂチも頑張ったんだから、こんな結果だけどミンナ責めないで」というもの。
ここでの同調圧力の気持ち悪さは実際に読んでみた方が味わえると思う。
結局、ノギは「ミンナ」に良く思われたいだけの偽善者じゃないのかなと。
でも後に、それを貫き通して自決することになるのだから、一貫してはいる。
ノギが英雄と祭り上げられた結果、後の第二次世界大戦で作戦上は無意味な玉砕を良しとする大日本帝国ができたのではないかと。
イヂチは主に司馬遼太郎のせいで無能と蔑まれることになるが、本作では挽回してくれるのだろうか?
と、こういう考察ができるのも、かとー先生が丁寧に日露戦争を描写してくれているおかげだ。
目指せ! 脱・司馬史観である。
私も高校生の時には「坂の上の雲」を呼んで、「伊地知ってなんて無能なんだろう」と思ってしまったクチだしね。
小説でさえそうなのだから、漫画の影響力は計り知れない。
イヂチのためにも、完結まで本当に頑張って欲しい。
【流血表現とか…?】
若干下品だが実にシコリティの高い絵を描かれる。
戦争物でおっさんだらけの漫画だったらこうはいかない。
かとー先生の絵はどのキャラも非常に魅力的な線で描かれている。
ソフトエロの描写が多いのも嬉しい。
おかげで歴史漫画だから堅そうとか難しそうとかいう敷居の高さをぐっと下げてくれる。
あの流血表現には正直笑ったし。
でもロシア兵にレイプされそうになるコダマちゃんのシーンとか迫力あったなぁと。
これから203高地で血みどろの表現が増えそうなんだが、どうあの強引なエロシーンを挟んでくれるのかも楽しみである。