この星は崩壊していた。
見渡す限り瓦礫に包まれ、完全に不毛の地と化していた。ゴロゴロと転がるそれらは完全に地面を覆い隠しており、そこから生えてくる木々や草を完全に押しつぶしていた。そのため、この星ではもう二度と草木は生えないだろうと思われていた。
だが、その瓦礫の多さこそかつて繁栄していた証でもある。なぜならそれだけの数の巨大な建物が立ち並んでいたということを暗に占めているのだから。
確かに十年前までは何十億という人が地に足をつけ、発展した科学技術の恩恵にあずかり平和に暮らしていのだ。
だが過去のことを思い返していても何にもならない。
今、この星は崩壊している、その事実こそ重要なのだ。
輝く日光を背に二つの影がゆっくりと瓦礫の上を歩んでいた。彼らはゴツゴツの戦闘服を身にまとい、顔はガスマスクに似た何かに覆われて、手には強力なレールガンを握っていた。それは小型のバッテリーが無くては動かないので、それは背中に背負われ銃に接続されていた。他にも背中には弾薬や食料の詰まったバックもあった。
彼らはマスクの下に内蔵されている通信機を通じて会話を楽しんでいた。
「おい、今日の見回りはどこまでだっけ?」
「B-5地区までだろう? あと20kmも歩けば終わりだな」
「くそっ……めんどくさいな。 早く帰って酒を飲みたいぜ」
「そう言うな、奴らはいつまた攻撃を仕掛けてくるか分からないからな」
「お前な、奴らが本当に秘密基地を持っていると思っているのか? 瓦礫だらけだぞ、それに海も地上も放射線に汚染されて生命体はまともに生きられない。 いったいどこに基地があるんだよ」
「……まぁ、それもそうだな」
そんなくだらない会話を続けている。
すると、彼らの持つ探知機が生命反応をキャッチした。マスクの裏側に映像が投影されると、ここから10mも離れていないところに何か生命体が存在することが分かった。
彼らは銃を構えるとそちらの方に銃口を向ける。瓦礫の影にいるらしい、ここからは見えないが、確かに何かがいるはずだった。
彼らの探知機は正確なのだ。
「……奴らか?」
「そうだな、その可能性が高い」
とりあえず瓦礫を吹き飛ばすことにすると引き金を引く。
ガインッという音が響き、鉄の弾が発射される、それは見事に命中するとバゴンッという心地よい音をたてて瓦礫を吹き飛ばした。土埃が舞い、周囲にかけらが舞い散る。それまであっという間だった。
それに驚いたのか、瓦礫の影に隠れていた奴らがそこから飛び出した。
奴らは非常に醜い姿をしていた。
全身をブカブカの戦闘服を身にまとい、手には奴らの持つ旧式の銃が握られていた。
奴らは銃口を彼らに向けると引き金を引こうとする。
しかし、遅かった。
「死ね!!」
先に引き金を引くともう一度銃弾を放つ。
それは見事命中するとバチャンッという音をたてて体がはじけ飛ぶ、真っ赤な血液と内臓が吹き飛び、跡形も無くなる。おそらく痛みも感じる暇もなく死んだだろう、奴らに与えるにはあまりにも高等な死に方だった。
彼らは銃をしまうと相談を始める。
「どうする? 本部に連絡しておくか?」
「そうだな。 今通信を繋ぐ」
そう言って相方は周波数を始める。
その姿を見て、もう一人はある疑問が思い浮かんだので尋ねてみる。
「そういえばさ」
「なんだよ」
「この星って名前何だっけ?」
「太陽系第三惑星、地球じゃない?」
「あー、そうだったそうだった」