10月28日更新作品から
「アサシーノス」http://sayakawaorenoyome.web.fc2.com/assassinos_index.html
バーボンハイム先生作品。
やはり去年感想を書いた(http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=18928&story=19)が、タグ付けして更新してくれたので今年も感想を書きたいと思う。
長期連載作でしかも最近コメントがパッとしない本作なので、未読の読者も多いだろうから、まずは粗筋を書きたいと思う。
現代ブラジル南部が舞台。
主人公(ディエゴ)は職業殺し屋という殺伐とした世界に生きていた。
ある日、幼い頃に生き別れとなり、売春をして生計を立てていた義理の妹(モニカ)と再会する。
二人は兄妹だが深く愛し合い、殺し屋と売春婦から足を洗い、結婚して平和に生きていくことを望む。
だが引退のための最後の暗殺依頼でドジを踏んだディエゴは、暗殺教会の怒りを買い、そのためにシャベスという悪党によってモニカがレイプされ死んでしまう。
長い死闘の末、ディエゴはシャベスを殺して復讐を果たす。
ごく簡単に書いたが、ここまでが第2章(第12話)までの話。
去年の感想企画ではここまでの感想を書いた。
正直、「これで終わっておいていいんじゃない?」と思っている…。
ここで終わっておけば、本作の評価は10点中8点ぐらいの高評価だった。
以降、最終章が始まっているが、余り良くない。
正直言って蛇足に感じている。
今はもう10点中5点ぐらいだ。
感想企画だから評論ではないので、個人的には余り点数をつけたりはしたくない。かなり厳しい評価と言わざるを得ない。
ただ、ツイッターで「覚悟してます」と言っていたので、遠慮しないことにした。
最終章の粗筋は以下のようなもの。
シャベスと決着をつけてから5年後。
葡萄農園で穏やかな日々を過ごしているディエゴ。
農園主の娘マリアから愛を告白されたりしているが、そのマリアが実はモニカの在処をシャベスに売った人物だった。(もっとも、マリアもシャベスに銃を突きつけられている状況だった)
略奪愛のために親友を売ったことを悔いるマリアの前に、暗殺教会の手先であるアダムが現れ…。
……と、ここまではまだ理解しやすかった。
それから民族紛争絡みの話が出てきたあたりから、2~3回読み直さないとストーリーが理解できなくなってきた。
ただ、読み直したいと思えるほどの魅力が無いので困ってしまう。
暗殺教会、ブラジル情報局(懐かしの白バイ警官もいる!)と、とても魅力的なキャラクターが出てきているので勿体ない。
サウスエルフ、ブラックラビット、ラディアータとミシュガルドで出てきたような単語が重要そうに出てきているが、そんな内輪受けするだけの言葉遊びのために、余計ストーリーが分かりづらくなっている。
字幕形式で統一されていたのが吹き出しになったり、ディエゴとその周囲の人々による漫符だらけのギャグシーンが挟まれたりと、作者の試行錯誤ぶりはうかがえる。
ただギャグシーンは字幕と相性が悪い。これこそ吹き出し形式でやって欲しいところだ。吹き出し形式もまだまだ固さがある。長文すぎて余り吹き出し形式にしている意味がないというか、読みにくい。1コマの吹き出しの内容は三行ぐらいにしてほしい。それが無理なら字幕でいい。直前に「迷走アニ研部」を読んだところだったので、読みやすさの落差に辟易した。
バーボンハイム先生の描くリアルなキャラクターは決して下手ではないし、私などからしたら大変な情熱をかけて描いているなぁと感心するのだが、台詞無しで動きを見せているシーンはくどいように感じ、台詞だらけでストーリーを見せているシーンは文字が頭に入ってこない。映画的演出を目指されているのだろうが、読者に与える情報の取捨選択をしてほしい。
小説を書いた経験が活かされていないように感じる。どちらもやった経験があれば、もう少し文章を読みやすくできるはずだ。
それができないなら、登場人物紹介のところとか、新しい登場人物も増えているし、できれば人物相関図など作ってもう少し分かりやすくしてほしい。19話に出てきたDシリーズやyoutube絡みの政治活動家など、名前あり登場人物が一気に多く出てきたのでとても覚えられない。ちゃんと顔の描き分けはしているようだが、それでも名前まで覚えたいと思わない。
あと、どうもモニカを復活させるつもりらしが余り関心しない。人造人間のようなものが出てきたから今更だけど、リアルな現代劇にはそぐわないのではないだろうか? 説得力があれば万事オーケーなのだが…。
バーボンハイム先生の情感たっぷりの絵は相変わらず良い。
最終章でもモニカを想って涙するディエゴと、モニカを売ってディエゴの愛を得ようとして懺悔するマリアと、二人が涙を流しているシーンは情感たっぷりだ。まぁ、二人とも結構な罪を犯しているので、そんなに同情できないんだけどね…。
バーボン節というか、演歌を見ているよう。
で、思ったのだが「やっぱり基本は少女漫画しようとしてるんだな」と。
難解なストーリーとか、油ギトギトこってり味の絵柄とかで、これはナウなヤング向けだろう。何でヤング連載じゃないの? とは前回の感想で言ったが、きぼん連載の意図が何となく分かった。レベルが違うけど、加賀ミチ先生の「海向こうの遠い島」に通じるものというか、少女漫画というよりレディコミ的なところがある。ガンアクション部分を抜きにすれば。
ただ、女性向けポルノを目指すには、油ギッシュで汗まみれ毛だらけの中年おやじの好みになってしまっている。レディコミの男臭さがまったくない薄味イケメンではなく、最終章のディエゴのようにむさ苦しい髭面おやじでは、女性読者の琴線には触れないだろう。バーボンハイム先生はちんぽを執拗にリアルに描いているが、ハッキリ言ってこれはセクハラだ。露出狂である。ちんぽをそんなに描きたいなら、薔薇族がいいだろう。
粗筋で書いたように、基本は主人公ディエゴ・モニカ・マリアといった主要人物たちの報われない愛と悲劇を描いている。そこに焦点をあてるだけで、他の大掛かりな教会や情報局といった情報を極力カットし、「読者に読まなくてもいい設定」というぐらいにあっさり目にすれば、随分読みやすさは違ってくると思う。
残念ながら、これだけてんこ盛り設定を「アサシーノス」で見せるには、力不足ではないか? ただもうここまで進んでしまった話を今さら分解したり描きなおしたりはできないだろうし、このまま進めるしかない。
終わりよければすべてよしというし、完結後に一気に通読すれば誰それが死ぬか分かるので、そのキャラは名前まで覚えなくていいなとなって情報の取捨選択ができ、読みやすくなりそう。なので、次は完結したら読みたいと思う。
2回読み直さないとストーリーが理解できなさそうだったが、その2回目は完結後に通読する形で取っておきたい。
その時には評点も変わるだろうから、楽しみにしている。
以上です。