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★新都社作品感想2018★
2017年11月18日「高野 望は高望む!」

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2017年11月15日更新作品から



「高野 望は高望む!」http://www.geocities.jp/niihama_k/index.html



 新浜けいすけ先生作品。
 これまた新都社では絵も話もネタとしてもトップレベルにクオリティの高い作品である。
 新浜先生は既に商業でご活躍されてる作家さんだし、そんな方の作品が無料で読めちゃうのはありがたいところだ。
 まず感じたのが題材が面白いなというところ。
 引き合いに出して申し訳ないが、じゆ先生の「高飛車ですわ~!!」を思い出した。あちらは高飛車で、こちらは高望みである。どちらも価値観としては傲慢とか貪欲といったネガティブなイメージのあるものなのに、漫画を通して感じるのはひたすらポジティブさと好感度の高いキャラクターであった。
 高美しゃんがそうであったように、のぞみはひたすらおバカで明るく、高望みを通じて他者を不快にさせたり迷惑をかけたりすることはない。むしろ友達のみゃーちゃんを呆れさせ、愛すべきバカとして可愛がられるような存在だ。
 対比されるように登場する友達のみゃーちゃんだが、学業もスポーツも優秀でスタイルも良い。ホラー好きだったりソシャゲにどっぷりハマってたりと、多少の闇を感じるのだが、これがまたのぞみとまったく正反対で、好対照だ。おかげで二人とも抜群にキャラ立ちしている。のぞみの高望みを語るにあたり、会話相手としては申し分ないパートナーと言える。
 画面上にはほぼこの二人ばかり出てくるが、これも良いと思っている。どちらも読者からは好感の持てる二人だが、スクールカースト的にどういった立ち位置なのかとか、クラスメイトとの関係性などを気にせずにいられる。個人的には互いにしか友達がいないのではないかと邪推している。もしくはどちらかが友達が多くてどちらかが少ないとかでも、物語への暗い影を落としてしまう気がする。
 また、のぞみがサッカー部のイケメンの写真を1000円で購入したりしているシーンなどあったが、まったく恋の匂いはない。というか男の影が二人ともまったくないのが良い。ひたすら二人だけの幸せな世界で完結しているというのが、とてもリラックスして安心して読める。
 これが、上に書いたことと反して、例えばどちらかに彼氏ができたりすると容易く二人の関係性は壊れてしまう気がするし、読者的にもストレスでしかない。
 第一話で既に語られているが、のぞみが何も得られずにそれでもバカバカしい高望みを語っているうちは、読者もみゃーちゃんも優越感を感じながら「愛すべきおバカ」という視線で見ていられる。
 他人の不幸は蜜の味というが、本作の楽しみ方は実はそういうちょっと薄暗い感情からの面白さによるところではないかと思う。新都社の特徴として「ダメでおバカな主人公」は愛される傾向もある。
 最新話ものぞみと同じようにダメな後輩ちゃんが出てきたが、のぞみのおバカぶりを見て「自分よりダメな人がいる」という安心感から気が楽になってしまうという話だった。
 ダメで鬱になっている人に「頑張れ」と言っても逆効果だ。のぞみのような明るいキャラクターのおかげで、後輩ちゃんと同じく多くの読者が救われた気分になり、癒やされ、笑っていられるのだ。
 また、のぞみの寸胴体型、怖がりでおバカな性格は、読者に「飼いたい」と思わせるほど嗜虐心を煽るものがある。別に脱いだりもしないしエロ要素などまったくないにも関わらず、だ。高画力だからこそ、直接的なエロに頼らずとも、キャラクターの表情や仕草から読者のエロセンサーが働いてしまう。
 絵といえばそう、本当に癖が無くて上手いなぁと思う。新都社漫画を見慣れているせいか、みなどこか癖の強い尖った個性がある。そういうのが全然なくて、強いて言えば「丸っこいな」ぐらい。どこの雑誌に放り込んでも通用しそうな絵柄だ。洗練されていて、やはり商業作家は違うなと思う。
 以上の事柄は、新浜先生はどこまで意識してやっているのか知らないけれど、とても計算されつくして描かれているように思う。本作をそのまま持ち込んでも、竹書房なり芳文社なりの商業誌で普通にヒットしそうである。
 つくづく、新都社で描いてくれてありがたい。
 これからも楽しませて頂きたいところだ。




以上です。

       

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